「流れ星」4 


完全パラレルです!本誌にも沿ってません。あしからず!


外国の大学に編入していた時の仲間が集まった。そこに爽子を連れて行った風早。

元カノと話す爽子を気にしながらも全部見て欲しいと思っていた。


この話は「流れ星」  の続きです。
本編は目次にある「瞳は知っている」を見て下さい。

一話一話、視点を変えてみます。四回目は風早目線でどうぞ!


























(二人で何を話しているんだろう・・・)


風早は仲間達とワイワイやりながらも先ほどからバーの中の二人を気にしていた。

そのつもりで連れて来た。本当は誰にも見せたくない。自分だけが知っていたいと

いうものすごく欲深いエゴ。俺は爽子を知ってから自分の計り知れない独占欲に驚く。

でも今回は来てもらいたかった。

それは・・・


”『え?マイも帰ってくる?』”


幹事の奴に電話でそのことを聞いたのは1週間前。マイとは3年ぶりになる。ただの

友達じゃなかった。だからちゃんと爽子に見て欲しかった。


”全部、見て欲しんだ”


そんなの俺の勝手でしかないことを知ってる。別に会う必要はない。彼女を嫌な気持

ちにさせるだけかもしれない。でもやっぱ・・全部知って欲しかったんだ。誠実であ

りたかった。そんな俺を彼女は受け止めてくれるだろうか?

俺は爽子と違って自分のことしか考えていない。彼女しか見えない。彼女以外大切な

ものはないんだ。今、隣にいる奇跡を大切にしたいんだ。


”『ショウタ・・本当に私のこと好きだったの?』”


別れる時にマイに聞かれた。好きだった。でも俺は最上の”好き”を知っている。その

感情を忘れることができなかっただけ。マイは泣くこともなく笑顔で ”分かった”と

頷いた。彼女の俺に対しての感情が最上の”好き”だったのかどうなのか分からない。

ただこんな気持ちのまま付き合った俺は”恋愛する資格のない人間”だ。それも親友の

彼女を好きになると言うルール違反を犯した男。身勝手かもしれないけどマイには幸

せになって欲しいと心から思った。こんな俺なんて忘れて幸せに・・・。

そのまま何も深く語り合うこともなく別れて3年・・・。風の便りにマイはすぐに外

国人の彼氏が出来て幸せそうだと聞いた。ホッとしたのは俺のエゴだろう。

そして3年ぶりに会った彼女は明るくて以前と全く変わらない輝きを放っていた。

あの頃より大人になった今だからこそ伝えられる気持ちがある。


「しっかし意外だったよな〜〜!」

「え?何が」


かなり酒の量が多くなってきた仲間の一人が浮かれ気分で風早に言った。


「マイのことだよ。ずっと付き合っていくものだと皆思ってたからさ〜〜!すっごく

 似合いだったじゃん。ショウタとマイ」

「・・・・」

「だよな。〜んで今はちゃっかり全然タイプの違う感じの彼女が出来てるし」


また違う友人が口を挟んできた。この友人もほろ酔い気分で楽しそうだ。そして酒の

威力とは恐ろしい。それぞれが本音を漏らす。


「いいよな〜〜お前は向こうでも日本でもモテて。女に困らないもんなぁ。でも女の

 幅広いよな〜〜俺は断然マイの方がタイプだけど」

「マイはきれいだけどちょっと彼女としてはど〜〜かなぁ。俺は爽子ちゃんだっけ?

 あ〜いう大和撫子タイプの方が好きだなぁ」


ばっっー


風早は勢いよく立ち上がった。怒った様子の風早を見て仲間達はさ〜っとアルコール

が身体から抜けたような感覚になり焦った口調で弁解する。


「いや、別に冗談だから。ははっ」

「そーそー、そんなことで怒るなよ」

「別に怒ってないよ。ちょっとトイレ」


(−っせよ。簡単に爽子をタイプとか言うなっつーの!)


風早は仲間達をひと睨みすると、はーっと脱力した。

こんなことに反応する自分自身に自己嫌悪。知らないんだから当然だろう。普段なら

聞き流せることも今日はピクピク反応してしまう。それは俺の心の中の不安から来て

いるのだろう。”全部知って欲しい”・・・そう言いながらも不安で仕方ないんだ。

俺は彼女に軽蔑されるのが怖いんだ。向こうでの生活は決して誇れるものではなかっ

たから。


「風早くん・・・」

「!」


トイレから出てきた風早は背後からの声に勢いよく振り向いた。それは愛しい人の声。

彼女の顔は少し曇っているように見えた。



* *



爽子はバーに俺を連れて行った。そこにはマイが座っている。俺は思わずごくっと唾

を飲みこんだ。マイはゆっくりと振り返った。


「・・・久しぶり、ショウタ」

「・・ん、久しぶり」


そして爽子を見ると俯き加減でぎゅっとスカートを握りしめている。


「爽子・・っ」

「あ、あの・・・風早くん。私は向こうに行くね」

「え?」


マイと付き合っていたことを早く言いたかったがタイミングが上手く掴めなかった。

俺はかなり焦ってたのかな?爽子はぶんぶんと手を振り必死で言ってくれる。


「違うのっ・・・その、私は部外者なので」

「えっ!?」

「ぷっ何焦ってんの?ショウタ」

「・・・」


俺が茫然としているとマイがニヤッと笑い、口を挟んだ。


「ごめん、もー言っちゃった。私達がただならない関係だったってコト」

「た、ただならないってっ・・!」


マイはまた大声で笑い飛ばすと、”でしょ?”と上目づかいで言った。風早は一呼吸

置くと真っ直ぐ爽子を見て言った。


「そう。向こうにいた時彼女と付き合ってた」

「う、うん・・舞さんに聞いた」

「・・・ちゃんと見て欲しかったから」

「え?」

「俺がどう向こうで過ごしていたか」

「!」


恋愛も含めて全部知って欲しかった。絶対彼女を失いたくないから。大切な想いの上

に今があるのだから。

見つめ合う二人を見ていた舞がふーっとため息をついて風早に言った。


「爽子さんが言ったのよ。”二人で話すべきだ”って」

「!」


風早は驚いた顔で爽子を見つめた。爽子の瞳は温かく優しい眼差しをしていた。

二人の間にどんな話し合いがあったのか分からない。でも俺はマイのことも信じてい

たのだろう。マイもまた人として誠実なことを知っているから


「座って・・・ショウタ」


だけど俺は何も知らなかったんだ。本当のマイを。

マイの心の奥底に秘めていた熱くてせつない想いを・・・。



<「流れ星」  へつづく>

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あとがき↓

今月号別マ感想ちょこっと書きたい。以下、ネタバレありますので知りた
くない方は見ないでくださいね〜〜!








今月号やばかった・・・かなりやばかった。風早の成長もすごく感じます
よね。ある意味潔癖というか白か黒タイプの風早を崩すのは爽子なんだな
ぁとつくづく。これからどんな風に変わっていくんだろうって思いました。
そしてすぐキスする風早に萌ゆる〜〜!二人の距離感にドキドキ。
恋愛の良いところを描きたいとカルピンせんせが以前語ってましたが、そ
の通りいいとこ丁寧に描いてくれる〜〜期待以上でいつもびっくり!
爽子が部屋にいると知った時の風早がかわいかったなぁぁ。とたもたまら
ん!!かわぃぃ。悪ガキなのね。お母さんは優しい人だけど芯はしっかり
していて、子供を所有物とは思わないで本人の意思を大切にするような母
に見えました。お父さんはホントは優しいのを知ってる。”佐和子”には笑
ったけど。とにかく今月も「君に届け」がテーマでした。