「流れ星」3 


完全パラレルです!本誌にも沿ってません。あしからず!


海外の大学に編入していた時の仲間が集まった。そこに爽子を連れて行った風早。

そこには風早の元カノがいたが・・・?


この話は「流れ星」  の続きです。
本編は目次にある「瞳は知っている」を見て下さい。

一話一話、視点を変えてみます。三回目は爽子目線でどうぞ!
























彼に突然言われた。


”全部・・・見て欲しんだ”


何のことを言っているのかすぐには分からなかった。でもその目はとても寂しそうで

見覚えのある瞳だった。

風早くんは今もあの時のことを後悔していると言った。それはハルくんからも私から

も逃げたことだと。”どちらも選べなかった”・・・と。

そんな彼は自分のことを”ズルい”と言う。でも選べなかったのは私も同じ。最後まで

私は自分に偽ってハルくんと一緒にいた。どうしてもハルくんの哀しい顔を見たくな

かったから。ズルいのは私。なんて非道な人間なんだろう。あの日、夜空に必死で隠

した涙。苦しくて苦しくて・・・このまま夜空に消えてしまいたいと思った夜。

そして同じ瞳をしていた彼に気付いた夜だった。もう隠せないほど好きになっていた。

その後いなくなった風早くんに私はぽっかりと心に穴が開いたと同時に心のどこかで

ホッとしていた。


”ハルに救われたんだ”


風早くんが同じことを言った。ずっと思っていたこと。沢山の想いの上に今ここにい

ることを決して忘れたくない。あの日夜空の流れ星と一緒に消し去った涙を拾い上げ

てくれたのは紛れもなくハルくんだ。私に正直に生きさせてくれたのはハルくんだ。

一生忘れない。私はずっと忘れることはない。大切な存在を。風早くんと一緒に・・・。


* *


「そっか・・あなたが”彼女”なんだ」

「あ、は、はいっ」


(うわぁ・・・彼女っ///)


私は舞さんという方に言われてドキっとした。何度言われてもドキドキして嬉しくな

る言葉。あの頃は想像することもできなかった。風早くんの隣で居られること。

風早くんは笑顔で”俺の彼女”と皆に紹介してくれた。笑顔が固くなったけれど、そん

な私を優しく包み込んでくれる風早くんが側に居てくれる限り”大丈夫”だと思える。

後から来られた舞さんにも紹介してくれた風早くんはすぐに向こうの友達に連れてい

かれてもみくちゃにされている。思わず顔が緩む。


(いつも人気者だなぁ〜〜風早くん。ス、スゴイ!)


その時、舞さんの強い視線を感じた。


「あ、ごめん。じっと見過ぎた」


そう言って舞さんはペロッと舌を出す。明るくて美人でさっぱりしてそうな彼女は誰

かに似ていると思った。


(あ・・・)


「え?何?」

「あ・・なんか風早くんに似ているなって思って。雰囲気が」

「え・・・」


そうだ、明るくて華やかな雰囲気が風早くんに似ているんだ。


「そ・・かな。だから惹かれたのかな」

「え?」


舞さんのひとり言のような言葉を聞き返すと舞さんはニッコリと笑って私に言った。


「ねぇ、ちょっと話さない?向こうで」

「!」


いきなりで驚いたのだけれど、舞さんはすでに私の手を引っ張っていた。


私は後から知ることになる。彼女のひとり言の意味。そして瞳の奥に隠し持っている

悲哀に似た感情を。それがまさか自分に関係しているなんて・・・


「・・・・」


風早は周りにもみくちゃにされながら、皆が集まる場を去って行く二人の姿を目で追

っていた。


* *


「飲める?」

「あ、少しなら」


敷居で仕切られたバーカウンターに連れて行かれると、舞さんはバーテンダーに慣れ

た調子でカクテルを二つ注文してくれた。


「これ、弱いから。イギリスの方がおいしいけど。このお酒は」

「よく・・飲まれるんですか?」

「ビールの方が好きだけどね。あ、敬語止めてよ〜!!年関係ないじゃない。友達の

 友達は皆友達!でもいくつ?」

「25歳です」

「同じ年だ!!ということは・・・ショウタと同い年か」

「・・ハイ」


”ショウタ”


未だ名前で呼べてない私。その時、胸の奥がきゅんっと痛んだ。そんな私の気持ちを
察して舞さんはすぐに言ってくれた。


「外国では名前呼びが普通だからね。ここに居る人みんなそうだったでしょ?」

「あ、はいっ・・すみません」

「いや、あやまることじゃないんだけど」


ものすごく頭の回転が速く配慮の行き届く彼女に私は憧れを抱いた。


「なんだか舞さんキャリアウーマンって感じしますっ!!」

「ははっ生意気だから女のくせにって日本では言われるかも。もちろん向こうでは言

 われないけど。ちょっと敬語止めてって!!」

「あっ!!ご、ごめんなさい〜〜!!ハイっいや、うん!」

「あはは〜〜っ」


舞さんは私を見てケラケラ笑うと、真顔に戻ってグラスのカクテルを一含みした。

それがまたとても絵になった。


(カッコいいなぁ・・)


爽子は美味しそうに飲む舞を見て、顔を緩ませると自分のカクテルを一口飲んだ。


「わっ・・このカクテル美味しいっ!」

「でしょ」


笑顔も本当に素敵で、長い髪を耳に掛ける仕草がまたかっこいい。この人の彼氏にな

る人は幸せだな・・と思った。アルコールが入ったせいか、初対面だというのに私は

思わず聞いてしまった。


「やっぱり今の彼氏さんも外国の人ですか?」

「!」


その問いに舞さんはしばらく無言になった。思わずサーと血の気が引く。


(し、しまったぁぁ〜〜)


「あわわっごめんなさい・・・人様のプライバシーにずかずかと」

「いや、それはいいんだけど。”彼氏”か。」

「?」


舞さんは視線を落としながらひとり言のように呟いた。


「彼氏ってなんだろう」

「・・・・」


何か悩みを抱えているように思った。舞さんの表情に笑みが消え、寂しげな様子が感

じられる。私は何て言ったらいいのか分からず、ただ横に佇んでいた。舞さんはこち

らを見るわけでもなく頬杖をついて呟き続けた。


「彼氏彼女って一言にいってもいろいろなカップルがいるじゃん?関係も色々でさ〜

 自慢するためとか、セックスの相性がいいだけとか」

「/////」

「あら純情。ストレート過ぎた?でも高校生じゃないんだし本音で喋ろうよ。初対面

 って言ってもショウタの友達なんだし」

「は、はいっ・・・あの」

「ん?」


ずっと知りたかった。私の知らない風早くん。


「風早くんはイギリスでどんな感じだったんですか?あ、だったの?」

「ふふ・・・そーねぇ」


舞さんは懐かしそうにその頃を思い浮かべるように頬杖をついた。その瞳は何だか温

かくて愛おしそうに感じる。


「いいやつかな。一言で言って。それが決して自分のためだけじゃない”いいやつ”

 だからモテたよ〜〜あっちの人にも」


納得した。思わずウンウンと頷く。風早くんの周りには自然に人が集まり、明るい輪

のようなものができる。そしてしっかり人と向き合うから信頼される。


「・・だけど意外とガードが固い」

「ガード?」

「うん。恋愛に関して」

「・・・・」


そう言うと舞さんは私をじっと見つめてふふっと笑みを浮べた。その笑みはからかう

でもなく、憎しみがあるわけでもなく、哀しそうに見えた。

その時私はまだ、舞さんの瞳の奥に隠し持っている何か悲哀に似た感情のワケに気付

けずにいた。




<「流れ星」 へつづく>

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あとがき↓

次は風早目線に戻ります。この3人でやっていきます。