After Glow 15

オリキャラ主人公、爽風CP揺らぎなし。爽子は新任の高校の保健の先生、風早は
大学を卒業して家業を継いでいるという設定。原作高校卒業後のパラレルです。


☆九条の前に突然現れた美女。二人の関係とは・・・? 



この話は ★After Glow 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 の続きです。














After glow 15














「お久しぶり」


突然九条の前に現れた美女は腕を組み、勝ち誇ったように魅惑の笑みを浮かべた。九条の
方が明らかに背が高いが、まるで見下ろしているような態度に周りの生徒たちはざわめいた。


「あら、九条くんともあろう人が動揺しているとか?」
「・・沢渡里香」
「良かった。覚えていてくれて」


そう言って里香はにっこり笑うと周りをちらっと見た後、大胆に九条の腕に抱きついた。


ざわざわっ


「−ちょっ」
「ふぅ〜ん。やっぱり九条くんはこの学校でも注目の的なんだ」
「やめろよ」
「・・と言いながら無理やり私を離したりしないんだ。というか、出来ない?」
「・・・・」


その姿に、周りはすっかり二人は彼氏彼女だと信じ込んだ。確かに似合いのカップルが
イチャついてるようにしか見えない。


そして里香は九条の耳元で小声で言った。


”『私・・偶然転校してきたわけじゃないから。意味、分かるよね?』”


九条は腕にまとわりついたままの里香を冷めきった目で見つめた。


「じゃ、まったね〜〜九条くん。私は4組だから」


そう言って里香はウィンクを一つ飛ばし、長い髪を揺らして美女オーラ全開で去っていった。
残された九条に周りは近づきたくても、いつにもまして人を寄せ付けない雰囲気を漂わせ
ていて誰も声を掛けられず、教室の前から逆方向へ歩いて行く九条を目で追っていた。
そこに保健室の常連、美咲と由奈もいた。二人を顔を合わせてコソコソと話す。


「最近、柔らかくなったように思ったけど、やっぱ怖いね」
「・・う〜〜ん、ここは貞子ちゃんの出番じゃね?」
「だね」


二人は目を合わすとニッと笑い合った。


* *


「え?九条くんに彼女?」


放課後、保健室に”大ニュース”と駆け込んできた美咲&由奈&その他男子の勢いに押され
壁際い追い込まれた爽子は目を丸くした。


「そ〜〜なの。ショックじゃない?」
「すっげー美人だしな・・っいて」
「だから男は!すぐそれだ」
「でも、ほんとだろ?美男美女でちょー似合いだったじゃん」
「・・まぁ。そーだけど。だけど何か彼女えらそうだったよね」
「確かに。あの九条に対等ってある意味すごいけど・・・あっ!」


4人は会話に夢中で爽子を置き去りにしていることに気づいてハッとする。


「あ・・でも貞子センセも美人だし」
「そーだよ。意外とかわいいし」
「何よ!意外と、って。貞子ちゃんはめっちゃかわいいんだから!」
「そ〜〜だよ。中も外もピュア天使だし」
「・・・?」


爽子はなぜお世辞を言ってもらえているのか?妙にフォローされているのか理解できず、
困惑していた。そう言えば、山野井にも”九条をよろしく”と言われている。


(よほど、九条くんの方がしっかりしているんだけどなぁ)


と頓珍漢な爽子と周りの認識は今やもう、かなりかけ離れていた。九条のみならず、爽子
も九条が好きで二人は両想いだと思われていたのだ。教員と生徒という禁断な立場であり
ながら禁忌の印象を持たないのは爽子の醸し出す雰囲気他ならないだろう。周りは純粋に
爽子に初彼を、九条に安らぎを!と願っているのだ。


「こうなりゃ直接対決ね!」
「そうよ。相手は美人でも負けないで!貞子ちゃん」
「あの・・その彼女って転校生、なの?」
「そう。知ってるの?貞子ちゃん」
「うん・・えっと名前は・・」


そう言えば、職員室でそういう話を聞いた。爽子はピンと頭に浮かんだ名前を口にしよう
とすると・・


「沢渡里香」


(ん?アレ)


爽子は一瞬、自分が言ったのかと思ったが違った。その声の方向を振り向くと、保健室の
ドアに腕を組み、もたれかかっている長い髪の美女がいた。


「あ・・そう。沢渡さん・・沢渡さん?」
「私のこと噂してたでしょ?」
「あ・・はい」


爽子が素直に答えると、周りはぎょっとする。そして今までピーチクパーチク鳥のように
喋っていた保健室の住人は気まずそうに黙り込んだ。里香は保健室を一周ぐるりと眺める
と爽子の前で腕を組んで、上から下まで舐め回すように爽子を見ている。


「あ・・あの?」
「ふぅ〜〜ん、大したことないじゃん」
「え?」
「ちょっ!あんたねぇ!」


美女に圧倒されながらも気の強い美咲が立ち上がった。爽子を馬鹿にされては黙ってはい
られない。しかし里香は美咲を無視してテーブルに置かれている紅茶や菓子に目をやった。


「何?ここ保健室じゃないの?ふぅ〜ん、こういうもので生徒を吊ってんだ」
「なっ!!違うよ、先生はねっ!!」


今度は感情露わに由奈が立ち上がると、すっと里香と由奈の間に爽子は立ちはだかった。


「え・・貞子ちゃん」
「あの、よければどうぞ!」


”お口に合えばいいんですが・・”といつも通り謙虚に手作り菓子を進める爽子。そこにい
る誰もが一瞬固まった。皆と一緒に固まっていた里香は気を取り直すと、思いっきり顔を
歪めた。


「はぁ?何?私を取り込もうと言うの?」
「いえ、あの、一緒にお茶をどうかな・・と思って」
「・・・」


にっこりと笑って言う爽子に4人は脱力する。そしてどこからもなくケラケラと笑い声が
漏れ始めた。


「やっぱ貞子ちゃんだわ。あはは〜〜おっかし」
「最高!!センセ」


あはは〜〜〜っ


調子を崩した里香は大きくため息をつくと、勧められた菓子に見向きもせず、相変わらず
の高圧的な態度で言った。


「変なセンセというのは本当なんだ。やっぱデマということが分かったわ」
「?」
「九条くんがこのセンセを気に入ってるって噂」


爽子は一瞬固まった後、ほぅと表情が緩む。


「だと・・嬉しいなぁ」
「は??あんた生徒に何言ってんの?」
「え?」
「・・・」


頬に手を当てて照れながらも嬉しそうにしている爽子に里香はさらに複雑そうに顔を歪め
た。自分が言った意味が通じていないような気がしたからだ。頭に手を当て混乱している
様子の里香に美咲たちは思わずぷっと吹き出し、トンっと肩を叩いて言った。


「直球じゃないと通じないのが貞子ちゃんだから」
「??」


ニンマリと意地悪そうに言われた言葉に里香はムカッとする。しかし後程、里香はその直球
の意味をよ〜〜く理解するようになるのである。






After glow 16 














あとがき↓
ちょこちょこ更新がんばりま〜〜す!