「私の王子様」

「彼女の王子様」番外編

賢のことを全部分かっていた風早。賢の恋を温かく見守っていた。そんな先生として

の風早を見つめる爽子の心情と二人のラブラブ話♪”賢失恋パーティー”の時の二人です。


本編は「私の王子様」1 2 3 4 5 を見て下さい。

以下からどうぞ↓

























「翔太くん、先生の顔してる」


爽子はぼーっと賢を見ている風早を見て、ふふっと笑った。店の中はすっかり酒で気分

が良くなった千鶴が賢に絡み大騒ぎをしている。


「ははっ、そうかな」


風早は見られていたことに気付き、恥ずかしそうに手で顔を覆った。そして爽子を見て

にっこりと微笑みかける。その笑顔に爽子はぽぉっと頬を赤くした。


(相変わらず・・・・眩しすぎるっ///)


皆にいじられている賢に風早は再び視線を戻すと、懐かしそうな顔をした。


「いや、いろいろ思い出してたんだ」

「え?何を・・・」

「高校ん時のこと。なんかあいつ見てたらもどかしんだけど・・・懐かしくなるっつーか」

「賢くん?」

「うん」


風早がはにかんで笑うと、爽子はまた胸がきゅんっとした。


いつも・・・思う。


風早の眼差しはどこまでも深くてどこまでも優しい。

その瞳はいつも自分に安心をくれる・・・と。


「賢くん、いつか想いが届くといいね」

「・・・うん、そうだね。まぁあいつは大丈夫だよ」


じぃ〜〜〜〜〜っ


「ん?何」


風早はグラスのビールを飲みながら隣の爽子の視線に気づく。爽子は風早と目が合い、

びくっと身体をのけ反らせた。


「わわっごめんなさい・・見とれていましたっ」

「え??」

「素敵な先生だなぁ・・・って思ったの」


風早は驚いた顔で爽子を見ると、”さぁ生徒はどう思ってるか・・・”と言って恥ずかし

そうに笑った。


「あのね、あの花壇・・・今もあるって聞いたの。賢くんに」

「花壇?あっ・・・」

「うん。北幌の。翔太くんが理科部の顧問で薬草を育ててるって・・・」


すると風早は驚いた顔をした後、いつもの照れた表情で言った。


「・・・俺がさ北幌に着任が決まった時、すぐに花壇を見に行ったんだ。どうなって

 るか気になってさ。すると何もなくって・・・」


”爽子の花壇なのに・・・”と風早は悲しそうな顔をした。


「だから、作ることにした。上手くできなかったけど、いつか爽子に見て欲しいって

 思ったんだ。今は助言してくれる人もいて、結構ちゃんと育ってんだよね」

「あ・・・だからいつか聞いてたのかな?薬草の育て方・・・」

「ははっそう。ばれたかっ!」


風早はくしゃっと笑って言った。爽子はぱぁぁっと顔を輝かせる。


「す、すごいよっ翔太くん!だって北幌の薬草って今は買いに行く人もいるって・・・」

「それは俺たちが高校ん時、学校祭で薬草使ったカフェしたじゃん?それを復活させ

 ただけで・・・。もとはと言えば爽子なんだよ」

「そ、そんなことないよ。翔太くんが・・・「ーっ爽子なのっ」」


風早はそう言い切って、ぷぅっと頬を膨らませた。爽子はその姿にふっと表情を緩ませる。


(かわいいなぁ・・・)


「あっ・・・笑ったなっ!」

「ご、ごめんなさいっ」

「うそ。笑って」


そう言って、風早は爽子の頬に手を当てるとまた温かい眼差しで爽子を見つめた。


「・・・あの花壇の前で初めて喋ったじゃん。だから、大切なんだ。あの場所」

「翔太くん・・・」

「守りたい・・・って思ってる。爽子との思い出」


そう言って風早はまたキラキラの笑顔を爽子に向けた。


爽子は風早の笑顔を見るたびに幸せな気分になった。いつもその笑顔に釘づけだ。

それはきっと誰もが感じること・・・。


「翔太くんの笑顔・・・きっと北幌の女子高生達は釘づけだろうなぁ・・・」


両手を胸に当てて憧れるような顔で言う爽子を、風早はじっと見つめる。

爽子の胸がどくんっと鳴った。


「俺は爽子に釘づけ」

「えぇぇ〜〜〜〜!!」

「な〜〜〜んてね。ちょっとクサかった?」


ははっとまた爽やかに笑う風早に爽子はぽぉっと頬を赤らめた。

そして、先日会った時に賢が言っていたことを改めて納得する。


”『王子的存在。男女問わず大人気』”


(うんうんっ王子様って・・・分かるなぁ)


爽子が自分の世界に浸っていると、『あ”〜〜〜〜〜っ』と突然風早の叫び声が聞こ

えた。なぜかカウンターに顔を伏せて頭を抱えている。爽子は思わず身構えた。


「ど・・・どうしたのっ??」


ばっっ


そして勢いよく顔を上げる。風早の顔は心なしか赤い。


「翔太くん??」


きょとんっとしている爽子を見て、風早は髪をくしゃくしゃっとすると、じりっと

爽子との距離を縮めた。そして、風早の行動の意図が分からず驚いた様子の爽子の

耳元に顔を持っていくと、小さな声で囁いた。


ごにょごにょっ


「えっ!!////」


大きく目を見開き、体制を崩す爽子を見て風早は照れ笑いをしている。


がばっっ


「きゃっ!」

「ちょっ〜〜〜風早ぁっ爽子とばかりイチャつくなよなぁっ!」


二人の甘い空気を打ち破るように千鶴が後ろから爽子をぎゅっと抱きしめた。


「まぁまぁ、いつでもどこでも一人占めしたい人だからさぁ」

「相変わらずよゆーない王子」

「ーお前らほんとにヤダっ!///」


あはは〜〜っ


ケントがやれやれとからかうように言ってあやねがいじる。それはいつもの風景。

風早のベタボレぶりは誰もが邪魔したくなる甘さなのである。



その和やかな光景を見ながら、爽子はまだ熱い頬を両手で覆う。


”『キスしたい・・・』”


かぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ


風早に耳元で言われた言葉を思い出すと、体中が熱くなるのを感じた。


「爽子さん?真っ赤だけど?」

「わわっ////」


賢が横に居ることに気付いて、爽子は大きなリアクションをした。そんな爽子の様子

を見て、賢はにやっとすると、ぽりぽりっと料理をつまみながら向こう側の風早を顎

で示しながら言う。


「俺・・アイツの前では絶対言いたくないけど・・・風早っていい教師だと思うよ」


爽子は興奮した様子で、目を輝かせた。


「うんっ・・・そう思います。皆に人気あるの分かるなぁ」

「そだね・・・意外と爽やかじゃないけどさ」

「え?」

「だってアイツけっこースケベだよね。さっきから見てたけど、何かと爽子さんに

 触ってんじゃん。我慢できねーのかっつーの」

「////」


賢は風早をちらっと見ながらここぞとばかり、毒舌を吐く。聞かれたら羽交い絞め決定

だからだ。すると、爽子は恥ずかしそうに頬を真っ赤にした。


「・・・なの」

「え?」


賢が聞き返すと、爽子は今度ははっきりと、とびきりの笑顔で言った。


「私もなの。ずっと・・・一人占めしたくて。だから、同じ」

「へ・・・」

「北幌の生徒さんには申し訳ないけれど・・・私だけの王子様でいて・・欲しいの」


躊躇ない爽子の言葉に、風早を貶めるつもりの賢は笑うしかなかった。


結局似た者同士の二人なのである。





★゜・。。・★゜・。゜☆゜゜




高校の時からずっと憧れの王子様だった翔太くん。

今は少しは欲張っても・・・いいんだよね?



”私だけの・・・王子様”



爽子は心の中でそう呟くと、幸せそうに微笑んだ。




<おわり>

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あとがき↓

番外編でこういう二人を書きたかった!
しかし・・すごい開いた。なかなか更新できなくて、楽しみにして下さっている人
がいればすみません。本業に専念です・・・。また4月前半までぐらい忙しいと思
いますが、余裕が出来たらどんどん書いていきたいと思います。リレー小説は次の
話案を下さった方がいますので、私が代筆したいと思います。まだまだ書けないで
すが・・・(;´д`)トホホ…