「流れ星」2 

これは長編の中にある「瞳は知っている」という話です。時系列は風早がつらい恋に
逃げ出して外国に行った時から始まります。全くのパラレルなのであしからず。


爽子を忘れようと新しい恋をしようと思った風早。そして付き合った後二人は・・・?


この話は「流れ星」 の続きです。
詳しくは目次にある「瞳は知っている」を見て下さい。
一話一話、視点を変えてみます。二回目はオリキャラ川崎舞目線でどうぞ!





























初めて会った時、どこにでもいる”自分のため”に優しい人だと思っていた。日本人に

ありがちなのが相手によく思われたい優しさ、体裁のためのその場しのぎの優しさ。

私はそんな日本人気質が大嫌いだった。相手のことを想うからこそ厳しいことも言う

し、本当の意味で自分を大切にしているからこその主張が外国人にはあった。生まれ

た時からそんな環境にあった私は日本人に会うたびに失望していた。

だけど彼は違った。古き良き時代の日本人が持っていた本当の優しさを持っている人

だった。他人であろうと自分が出来ることを親身になって付き合ってくれる。でも彼

は自分を犠牲にしていなかった。そんな彼が男として魅力的に映らないわけはない。

私は彼を知るたびに自然に惹かれていった。でも彼の恋愛の部分に踏み入るのが怖か

った。男気がある彼だから恋愛には頑固な気がしていたからだ。

だから嬉しかった。彼が私を受け入れてくれた時。彼の優しい笑顔が好きだった。

でも・・・私はその笑顔を本物に変えることはできなかった。

私はずっと知りたかった。あなたの心の闇を。笑っているけどその笑顔には寂しさが

隠れていることに気付いていた。あなたはそんな風に寂しい笑いをして生きてきた人

なの?人の過去なんて気にしたことはなかった。でも初めて知りたくなった。

今まで外国人としか付き合わなかったのは波動が同じだし楽だった。同じ人種でない

からこそ深く知らなくても上手くいったのだ。でも彼に恋をしてから気付いた。

私は逃げていただけなのだと。本物の恋をするのが怖かった。自分を全部さらけだす

ことが怖かった。それほど、彼のことを好きになっていた。でも本物の恋に終りがや

ってきた。いや、最初から終わっていたのかもしれない。


”『ごめん・・・』”


別れるその日までも彼はその笑顔で笑った。申し訳なさそうに・・寂しい瞳をして。

別れ際に彼は言った。”自分は人を好きになる資格はない”と。今までで一番悲しそう

な彼の姿に私は何も聞けなくなった。でもその資格のない人を好きになった女はどう

するの?と聞きたかった。でも私は敗れたのだ。最後まで本当の彼に会えずに・・・。


それから彼は日本に戻り、風の便りに聞いた。彼女が出来たこと。彼なら普通に彼女

は出来るだろう。でも私が知りたいのはまだあの寂しい笑顔のままでいるの?


それとも・・・?



* * *


〜3年後


「マイ!」

「Wao ! How`s keeing?Kenji!」

「It`s fine and you?」

「Everything going well!haha」

「Really??」


wahahaha〜〜〜!


3年ぶりの日本。この日はイギリスの大学で知り合った日本人コミュニティーの日本

での初めての集まりだった。すっかり社会人になった私たちは、イギリスで働いてい

る者、日本に帰っている者など様々だったが、この時たまたま全員が日本にいるとい

うことで仲間の一人が幹事をかって出てくれて実現した。私は今イギリスで働いてい

るが、里帰りでこちらに来ていた。というかこの目的で帰ってきたのだ。フライトの

都合上、私は中盤からの参加になった。久々の懐かしい面々に興奮する。


「Hey マイ〜〜〜!久しぶり〜〜〜っ!直行だったんでしょ?」

「まーね!でもNo plobremよ。Oh-my god!その子リサの子?すっかりmamじゃん」

「あれから3年も経ってるんだからね〜」


次々やってくる懐かしい面々と熱い抱擁を交わしながらも舞の視線は定まらなかった。

きょろきょろとしている舞に気付いた友人の一人がその行動を察して言った。


「もしかしてショウタを探してる?」

「あ、まぁね。久々だからさ・・・来てる?」

「うん。来てるよ」


どくっ


彼に会える・・・それだけでものすごく大きく胸が脈打った。もう終わった恋だし、

彼女のいる男に期待するつもりはない。でも私には知る権利がある。


「でも今何か忘れ物をしたらしく、駅に取りに行ったみたい。もうすぐ帰ってくると

 思うよ」

「あ・・そうなんだ」


ドンッ


「あっごめんなさい」

「い、いえっっこちらこそすみません!」


ボーっとしていた私はその時一人の女性とぶつかった。この店には知り合いしかいな

いはずだったのでその女性の顔を見て必死に記憶を辿った。


(えっと・・・誰だっけ?)


「・・あなたもこの集まりに?」

「あっ・・いえっとんでもありません。部外者が来てしまってすみませんっ!」

「部外者?あ、誰かの連れなんだ。私、川崎舞。あなたは・・?」

「く、黒沼爽子と申します。すごいですね・・・みなさん」

「へ?何が?」


胸の前で手を組み、目をキラキラさせて”外国みたい・・”なんて呟いている彼女。

なんかあまりにもトンチンカンな彼女に肝心な誰の連れかを聞くのを忘れて呆然と見

つめてしまった。長い黒髪に切れ長の目、日本人形みたいな彼女。鋭い目が何か迫力

あるが、きれいな顔立ちをしていた。


「ぷっあなた面白いね〜でもあなたみたいな人が外国人にモテるわよ」

「えっ!ま、まさか!?」


漫画みたいな石になるリアクションが妙に変で笑えた。


(なんかコケシみたい・・ぷっ)


「英語ができる人に憧れます・・」

「だって私は生まれた時からそんな環境だったから逆に普通だよ。彼氏とかも外国人

 の方が安心するし」

「そうなんですかっ!ス、スゴイ」


やたらと感動しているみたいでその方が笑えた。外国の話など興味深く聞かれると、

私もいい気になって話していた。


「あはは〜〜やっぱ面白いね、あなた。で、誰の知り合いで来たの?誰かの彼女?友達?」

「あっ・・その」


ずっと知りたかった。あなたが求めていたものは何なのか。

あなたが背負っていたものは何なのかを・・・



私はすぐに知ることになる。目の前の綺麗な目にすべての答えがあったことを・・・。




<「流れ星」 へつづく>

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あとがき↓

やっぱありがちな女子だった。ただ単に恋に破れた風早くんを客観的に見たかっただ
けなんだけどね。いや、爽子がいないとどーにもならないという風早くんが書きたか
っただけ。懲りないなぁ・・・何回書いても、そういう風早が好きで。9巻あたりが
好きだもんなぁ。次は爽子目線です。