「瞳は知っている」7 

※ 前書きから読んでください。こちら⇒前書き
※ 風早×爽子カップルではありません。オリキャラ登場します。


このお話は 「瞳は知っている」      の続きです。

あらすじ*ハルの彼女の爽子に惹かれていく風早。親友のハルは自分を信じている。
友情と恋愛の狭間で悩んでいく風早の葛藤を描く!?(なんちゃって)
それでは以下からどうぞ↓











「瞳は知っている」 episode 7









青い空の下、白球を追う。少年達は今日も輝いていた。

果たして俺は今、輝けているだろうか。


風早は、金網越しの彼女にそっと視線を送る。

今日も、彼女は嬉しそうに野球少年達を見ていた。


あれからハルは何も言わない。あいつは俺を信じてる。

何でこんなことになったんだろう・・・。いっそ全てを捨ててしまいたい・・・と

思ってしまうことがある。そしたらきっとハルは言うだろう。”翔太らしくない”って。

俺らしいって何だろう。彼女に会って、新しい自分を発見してばかりいる。

醜い感情や独占欲、そして初めての恋心に戸惑っている・・・それが今の俺。


風早は拳をぎゅっと固めて、爽子の元へ行った。


「黒沼!」

「風早くん・・・」


彼女の笑顔が痛い。


「今日も・・・ここに来て大丈夫なの?」

「あ・・・うん、だめだったかな」

「いや・・・いつもありがとなっ」

「ううん、こちらこそ、いつもありがとう。が、がんばって・・」

「おうっ」


風早は爽やかに笑った後、くるっと身体を向き直すと笑顔がすぐに消えた。


”ここに来ちゃいけない”・・・この一言が言えない。


そんなつもりのない彼女に言う必要があるのか。それに何より自分自身が

来て欲しくてたまらないのに。でも自分だったら・・・自分がハルだったら


きっと嫌だ。


この感情だけで、ハルを裏切っているというのに。


風早は拳をさっきより強く握りしめた。


そんな風早を爽子は不安そうに見つめた。近いようで遠い二人の距離。

刻々と日が長くなり、蝉の声がちらほらと聞こえ始めた。夏休みは目の前だった。



***********



「もーすぐ夏休みやなぁ〜〜〜いっぱい遊ぼうぜい、翔太!」

「オレもオレも〜〜〜〜〜っ!!」


風早とハルが話しているとジョーが加算してきた。二人が大好きなジョーは

いつも二人でいると側にやってきて”遊んでよ〜〜〜”というのが口癖だった。


「海行くだろ??ジョー」

「行くけどよ〜〜〜それ以外にも遊んでよ。なぁ、風早〜街にナンパ行こうぜ!」

「ジョーそればっかだからさ」


あはっは〜〜〜っ


「おっ風早!」

「おうッアンディ」


そこに風早とゼミが一緒の安藤が声を掛けてきた。


「お願いがあるんだけどさ・・・今日の合コン人数足りねーんだ!来てくんね?」


風早がこういうことをあまり好きでないと分かっているので、安藤は申し訳なさそう

に手を合わせて頼み込んだ。


「はい、はい!オレ、フリー!!」

「えっ・・・ジョー?いいけどさ・・・」


そう言いながら、アンディはちらっと風早を見た。案の定、風早は乗り気のない顔を

している。風早は一つ小さなため息をついた。


風早の持って生まれた爽やかさや容姿から近づいて来る女の子は今までも多かった。

大学に入って、色気づいた男女が異性を求めてやれ、合コン、彼女、彼氏・・・・と

走りまわっている。明らかに高校時代とは変わってきている周囲に風早は戸惑っていた。


とりあえずイベントのための彼女とか、皆がいるから自分も・・・・と楽しんでいる周り

の連中のようにはどうしてもできなかった。好きでもないのにどうして付き合えるのだろう。


女の子達は、自分の何を見ているというのだろう?何を知ってるというのだろう?

段々と自然に自分を受け入れられなくなっていた。


風早が即答で断ろうと思っていた時、ハルが”あ・・・・”と声を上げて表情が変わった。


「爽子!」


ハルが、門近くの爽子を見つけると軽やかに駆け寄って行った。


「ハルは待ち合わせか!彼女持ちはいいなぁ〜〜〜」


ジョーがうらやましそうに言った。


「ハルの嬉しそうな顔!奥ゆかしそうでいいねぇ〜ハルの彼女」

「・・・・・・」


安藤がそう言う横で、風早は表情を変えずに二人を見つめていた。すると、彼女の

視線を感じた。こちらを見て会釈している。俺も軽く会釈する。ハルもこちらを見た

後、彼女をこちらに連れてきた。


「こ、こんにちわ!」


彼女が恥ずかしそうに言うと、男どもはへらっとなり挨拶した。


「これからデート?」


風早が聞くと、ハルが嬉しそうに答えた。


「うん。俺、今日バイトないからさ」

「ジョーは合コン入れてもらったん?」

「いいよなっ?アンディ!!いい娘いるかなぁ〜〜〜♪」

「幸せやなぁ〜ジョーは。がっつくなよお〜〜〜嫌われんで!」


あはは〜〜〜


浮かれているジョーをハルがからかっていると、風早が後ろからぼそっと言った。


「俺も・・・・」

「へ?」

「俺も、行くよ」

「「え??」」


皆で一斉に風早を見た。安藤がびっくりしたように目を見開いて言った。


「マジで・・・・??もう男に二言はないな!」

「う、うん。え?そんなに?」


ガシッと風早の肩に手を掛けて、真剣に言う安藤の気迫に押される風早。


「うん。すぐに女の子に連絡取るから。風早と会いたがってる子多いんだって!

 うわぁ〜〜嵐かもしれん・・・!いいコ揃えてもらおっ♪」


やった〜〜〜と騒いでいる安藤とジョーをハルと風早は呆れ気味に眺めていた。


「でもどーしたん、急に翔太?珍しいやん」

「あ・・・うん。ハルの言うとおり、俺も作った方がいいかなって」


恥ずかしそうに言う風早をしばらく表情を変えずに見ていたハルが、にっこりして言った。


「ええことやと思うよ。運命の出会いはどこで転がってるか分からへんからな」


な!っと爽子を見て、ハルは微笑んだ。爽子はそれに応えるように静かに頷いた。

風早はそっと爽子の瞳を捉えた。お互いの瞳がぶつかる。


「!」


え・・・・・!?


それは一瞬だった。

彼女の目は哀しい色をしていた。


どう・・・して?そんな目をするの?


「・・・・・・」


二人の後ろ姿を茫然と見ていた風早は安藤に呼ばれ、後ろ髪を引かれながら二人の後に

ついて行った。







あとがき↓

段々と「瞳だけが知っている」展開へと・・・なる予定。しかし・・・涼しくなりましたね。

夏が終わった感あります・・・・。ううぅ悲しい。夏は勢いがあるけど秋冬になるとほんと

せつなくなりますよね。君届で癒されましょう!それではまた遊びに来て下さい。

 「瞳は知っている」  UPしました