「Once in a blue moon」(32)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 の続きです。  


☆ 仙台にやってきた麻美は偶然昌に会うことができた。そしてランチをしていると昌の
本音が顔を出し・・・?



















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 32 ‥…━━━☆



















気付くと、会ったのが2回目だとは思えないほど深い話をしていた。

落ち着いた店の雰囲気も後押ししているのか、不思議なほど本音が顔を出す。昌さん

は紅茶を一含みすると話を続けた。


「だから・・この傷は私の中で一生背負っていくものだと思う。それは誰のせいでも

 なく、仕方ないものじゃん。人を好きになるという感情だけは」

「・・・・」


達観したように言う昌さんの表情に翳りを感じた。明るい昌さんとは正反対の姿を見

てしまった。言葉に出しているよりもきっと重い傷なのだ。


爽子さんを好きになる人はきっとのめり込むと思っていた。生半可な想いじゃない。

そして人は本気で好きになった人と結ばれるなんて奇跡に近い。その前にそんな相手

に出会えることも奇跡だ。


私は・・・爽子さんのような恋はできない?


(あっ・・・)


その時気づいた。爽子さんの家で皆で集まった時に感じた焦燥感はなんだったのかを。


”『きっと後にも先にも・・・光平が本気になった相手は爽子ちゃんだけだよ』”


人は沢山の人と恋愛するだろう。でもその中でも本物は一つなのかもしれない。

私は蓮にとっての本物になりたいんだ。たった一人の・・・。ただ好きで付き合う。

それだけでは満足できなくなっている。


こんな私は欲張りだろうか。求めては・・・いけないのだろうか?


「麻美ちゃん?」

「・・・昌さんは・・・それでいいんですか?」

「え?」

「光平さんの一番になれなくても・・・それでも一緒に居られたらいいんですか?」


麻美の真っ直ぐな目に観念したように、昌は視線を落とし本音を漏らした。


「・・・一番ってね・・光平にとって今は私だよ。ただね、恋愛と結婚は違うのよ」


恋愛と結婚は別・・・。


それは私が以前から思っていたこと。何にでも冷めていた私は恋愛も客観的に見てい

ることが多かったから分かる。でも何だろう・・昌さんの言葉に、妙にわびしい感情

を覚えた。蓮に出会ってから心のどこかで願っている。本物なら違わないと。


「爽子さんに対して・・・普通に接することができるんですね」

「ま・・・正直なとこいろいろ感情は渦巻いてたよ。北海道に行くまで本当はすごく

 不安だったしね。光平の気持ちが戻っちゃうんじゃないかって」

「・・・・」


昌は涙を堪えるように言うと、さっと顔を上げた。


「だけど・・・行かないといけないと思ったの。見たかったの。今の光平の気持ちを」

「で・・・どう思ったんですか?」


すると昌はにっこりと笑った。


「うん。これからもやっていけると思った。光平にとって爽子ちゃんは特別だろうけど、

 私も違う意味で特別なんだって。それに私はやっぱ爽子ちゃんが好きだしね」


違う意味で特別・・・?


この時一つの愛のカタチに溺れていた私には昌さんの言葉の意味を心底理解することが

できなかった。愛には様々なカタチがあることを受け入れたくなかったのかもしれない。


麻美は複雑な表情で、昌の笑顔を見つめた。



* * *



その後、昌さんとは仕事の時間になり別れることになったが、私が仙台滞在中に観光や

食事などに付き合ってくれると言った。社交辞令でもなさそうな昌の言動に、麻美は戸

惑いながら聞いた。


「どうして・・・こんなに親身になってくれるんですか?」


すると昌は驚いた顔をした後、ふっと優しい笑みを浮かべて言った。


「それは・・・蓮と麻美ちゃんのため。そして・・・私のため」


”私のため・・・”


その言葉の意味が私には分かった。昌さんは私を通して自分を見ているんだ。私が蓮

にとっての”一番”になること、それは・・・。


麻美はそれ以上深読みしてしまう自分の考えが嫌になりぶんぶんっと頭を振った。


「本当に・・・皆さん蓮のことが心配なんですね」


麻美の言葉に昌はハッとした表情になり、申し訳なさそうに言った。


「あっ・・本題はそこだったよね!ごめんね私の話ばかりしちゃった」

「いえ・・・・」

「麻美ちゃんはもっと蓮の話が聞きたいんだよね」

「・・・・」


昌さんの問いに、ずっと仙台に来た時から心のどこかにあったものがふっと浮上した。

私は本能的に分っていたんだと思う。ただ話を聞くだけでは真実に近づけないことに。


麻美は肩で大きく息をつくと真っ直ぐに昌を見据えて言った。


「私・・・美穂さんに会いたい」



昌さんの瞳が凍ったのが分かった。






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あとがき↓

続きです・・・待っていただいていた方遅くなってすみません。麻美の仙台編が思
ったより長くなりそうで一体この話何話までいくの??と自分で不安になった次第
です。相変わらずだらだらですがそれでも気にしない方は読んでもらえたらと思い
ます。当分この話続きます。暗くなっていきます・・・はい(;;;´Д`)。