「Once in a blue moon」(38)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 の続きです。  
 


☆ 庄司の”爽子さんと出会ったから”と言う言葉に異様に反応した麻美は昼間の美穂の言葉
を思い出し・・・?緊迫した病院から場面を移し、この回はいきなり昌の場面からです。




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 37 ‥…━━━☆















* * *


「大丈夫かなぁ・・・麻美ちゃん」


今晩麻美と飲みに行く約束をしていた昌だが突然麻美からドタキャンの連絡が来た。

ただ単に疲れているからということだったので安心したが、内緒で仙台にくるほど蓮

のことが好きなのだ。思い詰めてないか・・・?そう思うと胸がきゅっと熱くなる。

それはかつて自分も味わったことのある不安感、そして焦燥感。好きな人が自分を向

いてくれていないという悲しみは本気で人を好きになったものにしか分からない。そ

してその想いは醜い感情をも連れてくることを知っている。


「あぁ・・・蓮はやっぱ麻美ちゃんに本気じゃないのかねぇ。見た感じラブラブには

 見えるんだけど・・・やっぱ違うか」


昌は美穂と付き合っていた蓮を知っている。あの頃から人を寄せ付けなかった蓮が少

しずつ自分を出すようになって、輪の中に入ってくるようになった。もうあんな恋愛

はできないのか?昌は蓮の過酷な恋愛を思い浮かべると諦め感が先立つ。


「はぁぁ・・・」


Plululul〜〜〜♪


昌が蓮を思い、無力な自分に打ちひしがれていた時カバンの中の携帯がなった。


「あ、光平?ごめん遅くなって・・・今から帰るね」

『・・・何してたんだよ』

「え?」

『なんか・・・最近こそこそしてない?』

「し・・してないよっ」


どきっ


『・・・だったらいーけどさ』

「もしかして・・・浮気とか心配してるの?」

『え?・・・べ、べつにっ連絡ないと心配するっつーの』

「・・・・」


”私は爽子ちゃんと違う意味で特別・・・”


昌は自分が麻美に言った言葉を思い浮かべる。そして幸せそうに微笑んだ。


「光平・・・好きだよっ」

『は・・はぁ??』


電話を切った後、困惑している光平の様子に大笑いすると、空に向かって大きな声で

叫んだ。


「麻美ちゃん・・・ガンバレっ!そして蓮・・・もう幸せになっていいんだよ〜〜!」


夜空には二人の幸せを願うように満天の星とフルムーンが輝いていた。



**********



薄暗い診療室に月明かりが差し込む。私はかなりの形相で先生を睨んでいたらしい。

先生の言葉でハッとした。


「あ・・・すみません、言葉が足りなかったですね。”うちの奥さんが!”ですよ」

「え・・・」


(あれ・・・・えっと??)


私は何を考えていたのだろう。

おかしくなってる。美穂さんに影響されて・・・。


「す・・・みませんっ。ぼーっとしちゃって」

「大丈夫ですか?」

「はいっ・・・それで?奥さんが?爽子さんを・・・え??爽子さん」


そっか、先生も爽子さんを知ってるんだ。改めて爽子さんの名前が出たことに驚いた。

ありえない思考にまだパニくってる。


(恐るべし・・・・美穂さん)


「はい。うちの奥さんは爽子さん狂なんですよ。よく聞かされました」

「あ・・・分ります。私も大好きなんですっ・・・すごく素敵な人で」

「麻美さんも爽子さんをご存じなんですね」

「ええ。最初は爽子さんと出会って・・・それから爽子さんの旦那さんと蓮が友達だ

 ということを知ったんです。そしてよく家にお邪魔するようになって・・・」

「そうなんですね」

「それで、爽子さんとの出会いというのは・・・?」

「爽子さんとの出会いがうちの奥さんにとって大きかったってことです。人の出会い

 って不思議ですよね。大きく影響されるところがあったんでしょうね」

「・・・・」


そして私はずっと聞きたいことを口にした。


「美穂さんはどうなんですか?・・・美穂さんにとっても爽子さんは大きかったんですか?」

「・・・さっきも言いましたが、美穂さんは感覚的に人を選ぶところがあるんです。だか

 ら爽子さんとはあまり会っていないはずなんですが、存在は大きかったようですね」

「会って・・・ないんですか?」

「・・・のはずですよ。私が知る限りでは」


じゃ・・・なぜ?


「美穂さんは・・・なぜ爽子さんにナイフを向けたんですか?」


一瞬この場に緊迫感が走った。先生の目が光る。


「驚きました。・・・ご存じだったんですね」

「あ・・・偶然なんですけど」


そして事の経緯を話すと、”なるほど・・・”と先生は納得された。そして窓の方に体

を向けた。私は拳に力を込めると、真っ直ぐ先生を見つめた。


「私・・・全部知りたいんです。本当の蓮を・・・・っ」


無言で先生は私と視線を合わせる。それは一瞬かもしれないのだが、とてつもなく長

い時間に感じた。ごくっという喉の音さえ聞こえそうな雰囲気だ。

蓮のことを全部知りたい・・・でも怖い。でも知りたいって・・・まだ何を知りたいの?

美穂さんのこと・・・?自分で自分が分からない。

”本物” ”運命の相手” そうではないものを私自身が感じているからだ。だから何かが

あると理由づけているだけなのだろうか?


一人で思考をかき巡らしている私の心を見透かすように先生が言った。


「あなたは・・・何を知りたいんですか?」

「・・・・」


答えることができなかった。自分でも分からないのだから。


「すみません。意地悪でしたね」

「え?」

「あなたが知りたいことは・・なんとなく分ります。でも私が話す過去の中には多分

 答えがないかもしれませんよ」

「こた・・・え?」

「はい。蓮さんと美穂さんの中には答えがないということです」


蓮と美穂さんの過去には答えがない・・・?



漠然と私が感じていたことを先生は言った。







「Once in a blue moon」39 へ
















あとがき↓

なぜか37話が一回UPした後、最後の方が消えてました〜〜〜(;ω;)最近は下書
きをしていていないので、何を書いたか忘れて違った文になっちゃいました。ごめん
なさい!!次回は庄司先生目線に話が進みます。多分明日UPできます。