「Once in a blue moon」(51)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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47 48 49 50 の続きです。
 

☆ 麻美は蓮と向き合えずに苦しんでいた。しかし、爽子に会うことである決心をするが
その決心とは?



















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 51 ‥…━━━☆


















がやがや わはは〜〜っ


「・・・・」

「・・・・」


さっきから蓮と麻美の間に微妙な空気が流れている。正月休みで賑わっている喫茶店

の一角、二人は黙ったまま向き合っていた。やっと口火を切ったのは麻美。


「・・・どうして言ってくれなかったの?」

「別に」


”別に”なんて言葉で片付けられるわけはない。正月に帰省しているはずの蓮に用事で

連絡すると帰ってないと言う。麻美はすぐに蓮を呼び出した。


「・・やっぱ・・・私が原因なの?」


麻美はつらそうな表情で唇をぎゅっと噛んで言った。

自分が変に蓮の過去を探ってしまったことで蓮は仲間達に会いにくくなったのではな

いかと麻美は思った。


「違うよ。ほんと面倒になっただけ。家に帰っても誰もいないしな」


感情が見えない蓮の目に麻美はとくんっと心臓が動いた。

蓮の幼少期を少ししか知らないが、複雑な家庭環境だったと言う事は聞いた。でも今回

はそれが原因だとは思えない。


「じゃなぜ”帰る”って言ってたの?」

「帰ろうかと思ってたけど止めた」

「・・・・」


どうやっても掴めない。蓮の心の奥を見ることはできないのだろうか?結局仙台に行

ってまで得ようとしていたものは一体何だったのだろうか・・・。


麻美は蓮に仙台に行ったことが知れた今も自問自答している。蓮の過去を知ることに

何の意味があるのだろうと。

でも向き合わなければならない。爽子に会ってそう決めたのだ。

麻美は拳を強く握りしめると、真っ直ぐ蓮を見つめた。


「じゃ、蓮の家に行っていい?」

「!」


蓮の目が一瞬動いた。でもどういう感情が分からなかった。

見ないフリをして付き合っていくことは可能だ。むしろ蓮にはその方が都合がいいと

思う。好きだからこそ怖い、見ないでいたい。でもこのままでは自分が潰れてしまう。

蓮とずっと一緒に居たいのなら・・・。


麻美は覚悟を決めた目で蓮の答えを待っていた。


* * *


ー仙台、田口家


「なんで蓮、帰って来ないんだろうねぇ。会いたかったのに」

「さぁ、おじさんもいないみたいだしな」


夕食中、昌がおかずをつまみながら不満げに呟いた。光平も残念そうに言う。


「相変わらずなの?あの家」

「ま、皆大人だし今さらってとこかもしれないけど。でもあの両親まだ離婚してない

 んだよな」

「え?そーなの?」


昌が身を乗り出して言うと、光平は”多分・・・”と曖昧な返事をした。蓮の家の事情

は最近分からない。この年になって家庭事情を引きずってはいないだろうが、正月に

帰るところがないというのは寂しいものだ。

光平が思いに耽っていると、昌がいきなり話題を変えてきた。


「ねぇ、光平!男一人暮らしの家に彼女を呼ばない理由ってなんだと思う?」

「何?いきなり」

「いや、最近職場の子が悩んでたからさぁ〜〜〜」


昌が視線を逸らしながら何気なく聞くと、光平は首を傾げて”う〜〜ん”と考えて言った。


「まぁ、彼女が他にいるとか・・・または見せたくないモンがあるとか?」

「見せたくないもの・・・」


昌は光平の言葉に考え込んだ。仙台に麻美が来た時にそのことで悩んでいることが分

かった。そこに大した意味がないのかもしれない。でも麻美は明らかに気にしていた。

光平は昌の様子を気にするでもなく、ご飯を放り込みながら呑気に言う。


「っていうよりその子、彼女じゃないんじゃねーの!ほんとは。わははっ」


ぼかんっ


「いてっ!!何すんだよっ」


思わず光平を殴った昌でした。そして大きなため息をついて遠くを見つめる。


「麻美ちゃん・・・どうしてるかなぁ」


あの寂しそうだが情熱あふれる熱い麻美の目を思い出し、昌は複雑な気持になった。



* * *


麻美はその時、蓮の家にいた。ずっと行きたかった蓮の家。かなり会社から遠く、な

ぜ蓮がこの場所を選んだのか不思議だった。外観の古さと違い中はこぎれいで、ワン

ルームの部屋の中は物がなくがらんっとしている。男の一人暮らしなのでこんなもの

かもしれないが、妙に寒々しく感じた。

この場所で蓮は孤独にならないのだろうか・・・と。


「どうぞ。客が来ないから座布団もねーけど」

「あ・・ありがと」


蓮に入るように促されてボーっと周りを見渡していた麻美はハッとしたように現実

に戻った。

”蓮の家に行きたい”と言えば蓮は応えてくれると思っていた。今の蓮ならはぐらか

したりしないだろう。本当はいつか自然に蓮が呼んでくれると思っていた。蓮から

言って欲しかった。だからその ”いつか” をずっと待っていたのが本音だ。

・・・蓮の場所に行けば自分が見つけられない蓮を知れるような気がした。


異様に緊張している自分がいた。蓮の匂い、蓮のモノ・・・。


「って・・・・まじで何もない」

「あぁ、なんでお前が俺んトコに来たいかわかんねーわ」

「・・・・」


(・・・確かに)


ふわっ


「でも・・いいんだ。蓮の場所ってだけで嬉しい」

「おっと・・!」


麻美はそう言って蓮に抱きついた。今だけ、この幸せな感じに浸っていたい。

なぜならここに向き合うために来たのだ。抱えきれない私の中の不安、疑惑を拭うた

めに・・・。


麻美は爽子を思い浮かべるとぎゅっと力を込めて蓮の背中に手を伸ばした。






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あとがき↓

ほんっとなかなか、書きたいシーンにいかない。これもまたジレンマだ(汗)