「Once in a blue moon」(26)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 の続きです。  
 


☆ 蓮と麻美のラブラブぶりにすっかり蓮が過去を乗り越えたと思った仲間達だが、翔太
はまだ信じ切れていなかった。そして麻美は動揺しながらも仲間達の過去も気になり・・・?




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 26 ‥…━━━☆

















この何時間かの間に沢山のことが凝縮され、ものすごく長い時間に感じた。想定外の

出来事って突然起こるものだ。あれから蓮の様子は変わらない。元カノと久しぶりに

話したというのに動揺しないのだろうか?どんな気持ちなんだろう・・・?


そして・・・何を話したんだろう?


私は蓮を気にしながらもあれから普通にみんなと過ごしている。昌さん達はホテルを

取っていると言っていたが、このままオールナイトでだらだらと飲み明かしそうだ。

蓮も久々とあって積もる話が尽きないようだ。


そのうち昌さんはリビングで眠ってしまい、爽子さんが客室に布団を用意する。光平

さんはヤレヤレという感じで爽子さんに断って昌さんを運んだ。二人のやり取りを見

ていても今は何もないのが分かる。爽子さんは光平さんのことをどう思っていたのだ

ろう?全く揺らがなかったのだろうか?


そんな三角関係を蓮はどんな風に見てたんだろう?・・・・頭の中でぐるぐる思考が

回った。


「何考えてんの?」

「えっ・・・」


トリップしていた私に蓮がぼそっと言った。思わずどきっとする。


「ううん・・・別に。なんかいろいろある夜だなって思っただけ」

「美穂のこと?」

「・・・・」


正直、元カノの名前を彼が呼ぶだけで嫌だったりする。


(私ってなんて嫉妬深いの・・・)


こんな自分は嫌だ。嫉妬とか醜すぎるとかぐちゃぐちゃ考えていた私を見透かすよう

に蓮はいつも特別な言葉をくれる。


「麻美はーっとにかわいいよな」

「えっ!?」

「その素直なところに救われてる」


蓮はそう言うと優しく微笑んだ。無口な蓮が時々こんな風に私を甘やかす。


(ヤバイっ・・・にやける)


「赤いし」

「ーっさいっ////」


蓮はそんな私に大笑いする。その笑顔を見れるだけでもう何でもいいや・・・とか思

ってしまう。その笑顔を向けるのは私だけだと・・・信じていい?


私は先ほど感じた黒くて醜い感情が胸の中から消えていくのを感じた。


* * *


その夜はやはりオールナイトとなり、布団で寝るもの、リビングで飲み続けているも

のそれぞれに過ごす。私は布団を用意してもらい、爽子さんと話しながらいつしか眠

っていた。横には昌さんがすっかり夢の中のようで気持ちよさそうに眠っている。


(わっ寝てた・・)


麻美はむくっ起き上がると眠気眼でトイレに行くことにした。爽子はキッチンで洗い

物に集中しているらしく水の音がザーザーと流れ麻美の存在に気付かない。麻美は声

を掛けようと思ったが、まずトイレに行こうとリビングの方に向かって歩き出した。

その時、視界に飛び込んできたものに思わず足が止まる。


どくっ


そこには翔太と光平の姿。なぜか蓮はいない。2人で飲んでいることにドキッとした。

意識し過ぎだと分かっているが無意識に身構えてしまう。そして飛び込んできた会話。


「蓮がいない時に聞きたかったんだけど、もう・・・大丈夫なの?黒沼さん」

「何が?」


翔太はグラスの氷を転がしながら、ソファーに深く腰掛けている。険悪な雰囲気はも

ちろんないが、和やかな感じもしない。


「美穂さんのこと。俺、ずっと気になってたんだよね。あの後何もなかったように見

 えたけど、黒沼さんの心の傷とかになってないかって・・・」


(心の・・・傷?あの後?)


いきなり深い話になり、翔太は姿勢を整えて光平を見据える。


「あの時のこと、ちゃんと目の当たりにしているのって俺と風早だけじゃん。あれか

 ら美穂さんはすっかり自分のやったことは覚えてないみたいだけどさ、黒沼さんに

 とっては大きいことだよな」


(え・・・何が?何で爽子さん・・・?)


麻美は胸に手を当て、息を潜めて話を聞いていた。


「大丈夫だと・・思う」


煮え切らない様子で言う翔太に光平は明らかに少しイラついて続ける。


「思うって・・・確信ないんだ?正直、トラウマとかになってもおかしくないのに?」

「・・・例えそうだとしても、田口には関係ないじゃん」

「・・・・」


ぶすっとした顔で言う翔太にぽかんっ・・・と口を開いたまま止まっていた光平が

ぶはっと腹を抱えて笑い出した。


「な、なんだよっ」

「ははっ・・・いや、なんだ!やきもちか」

「えっ?」


体を折り曲げてしばらく笑い続けた後、光平は呆れ気味に翔太を下から見上げた。


「っとに・・・変わんねーな。俺、もー既婚者なんだけど?」

「わ、分かってるけどさ。なんかそんなマジになられるとあの頃を思い出すっつーか」

「ま、いろいろあったからね〜でも夫婦で遊びに来れるぐらいなんだからさすがに

 安心してよ。俺幸せだしさ」

「うん・・・ごめん」


照れた様子で顔を覆う翔太を光平は苦笑いしながら羨ましそうな顔で言った。


「マジで変わんねーな。で・・・トラウマはどう思うの?」

「大丈夫。爽子は俺が思っているよりずっと強くて大きい人だから。今も心配して

 るよ。美穂さんのこと」

「・・・じゃ良かった。ナイフを向けられるなんて尋常な出来事じゃないからさ」


どくんっ


(ナイフ・・・?)


私は背筋が凍るような感覚でサーッと背中が寒くなった。

一体何があったのだろう?そしてなぜ爽子さんなのだろう?


かたっ


(はっ・・・!)


「あの・・よかったらどうぞ」

「さ、爽子!びっくりした〜〜っ」

「わわっびっくりさせてしまってごめんなさい〜〜〜っ」

「いやっそ〜〜じゃなくって。あっうまそ!」


その時爽子さんがおつまみを持ってリビングに現れた。私はハッとして無意識で体を

引っ込めた。風早さんたちも焦っている。


どくん、どくん・・・


私はそのまま素早く客室に戻った。そしてひどく煩い心臓を押さえながら横になると

布団を頭まで被った。あの場に堂々と出て行く勇気はなかった。

それは・・・聞いてはいけない過去を聞いたような気がしたから。


麻美は今まで想像もしなかった美穂と爽子の接点に異様な胸騒ぎを覚えた。










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あとがき↓

まだ、麻美過去を知る編続きます・・・でもちょっと忙しくなるかもっ(泣)気長に
覗いてやってください。そんなこんなでもう5月ですね。早い・・・(汗)