「Once in a blue moon」(50)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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47 48 49 の続きです。
 


☆ 蓮と麻美が上手くいくように祈っている風早家。そして本当の幸せを模索し続ける蓮
と麻美。二人はどうなっていくのか・・・?



















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 50 ‥…━━━☆





















蓮は翔太に正月は帰省すると言ったが、結局仙台には帰らなかった。仲間達が自分の

帰りを待ってくれていることは分かっていたが、今年は帰る気になれなかった。

今はただ、そっとして欲しい・・・そんな気分だった。


それは胸の中にある”畏れ”に目を背けてるに過ぎない。まだ向き合えない自分自身に

蓮はもどかしさと苛立ちを感じながらその中で自分なりの答えを探していた。


自分にとっての ”幸せ” とは何かを・・・


そして麻美も同じように模索し続けていた。


* * *


かちゃっ


「麻美ちゃん・・・久しぶりっ」


玄関先で爽子の顔がぱぁぁっとっ輝いた。


「突然ごめんね・・」

「ううんっ・・・嬉しい」

「爽子さん仕事はいつまで?」

「1月末までなの・・・とりあえず入って!!」

「ありがと・・・」


麻美は蓮と和解してから、一回風早家にやって来て一緒に夕食を食べた。でも単独で

爽子に会いに来るのは久々だった。麻美は緊張した面持ちで靴を脱いだ。すると結月

がパタパタっと嬉しそうにやってきてスリッパを出す。


「あ・・ゆづっち・・ありがと!なんか大きくなったね」


結月は爽子と同じようにぱぁぁっと笑顔を見せると、麻美の手を引っ張り、新しいお

もちゃなどを披露して嬉しそうにしている。結月も麻美を待っていたことが分かる。

その姿を見ると、麻美は心の中がふわっと温かくなった。変わらないその風景に。


「まだゆづっち、喋んないんだ?」

「あ・・うん。3歳児検診では耳の方は問題なかったのだけれど・・・」

「そっか、良かったね。まぁいつか喋んだろうけどね」

「うん・・・」

「あれ?心配してる?」


爽子は麻美にそう言われて、硬い笑顔で小さく笑うとお茶とお菓子を運んで来た。

相変わらず手作りのお菓子や匂いの良い紅茶を出されて麻美は一気に気持ちが落ち着

いていくのを感じた。ふ〜〜っと息を吐いて言う。


「やっぱ・・・かなわないな・・爽子さんには」

「え?」

「ううん・・・仕事どう?」

「うん・・・久々で皆さんの足を引っ張らないようにと必死です」


麻美はちらっと爽子を伺うように見て言った。


「光平・・さんも同じ職場だったんだよね?」

「あ、うん」

「光平さんもそう言えば仙台出身か。じゃ地元に帰った形になるんだね」

「うん・・・昌さんの近くになって本当に良かった」

「・・・爽子さんは遠恋の頃よく仙台に行ってたの?」

「え・・・えっと一ヶ月に一回はできるだけ・・・」


爽子はいつもの麻美なのだがいつもの麻美ではないようなそんな雰囲気を感じていた。

何が違うのか分らない。でも何かが違う。それは結月も感じているのか、いつの間に

か2階に上がって一人で遊んでいた。


「蓮は・・・どんなだった?」

「蓮さん?私はあまり会えなかったけど・・・」

「ほんと・・・?美穂さんに会いに行った時も?」

「え??」


二人の間に微妙な空気が流れた。麻美はぎゅっと目を瞑ると顔を歪めて自分の頭を激

しくぶった。


「あ、麻美ちゃん??」

「・・・あぁ”っ・・ごめん、違う、私変なのっ・・・」


麻美は大きく息を吐くと、真っ直ぐ爽子を見つめた。その瞳は以前と同じだった。


「・・良かった」

「え?」


爽子が柔らかい笑みを浮かべて呟いた。よく分からない会話の流れに麻美はぽかんっ

とした表情で聞き返した。


「あ、ごめんなさい・・・いつもの麻美ちゃんの目だなって思ったの」


どくっ


麻美は胸をぎゅっと押さえた。純粋な爽子の目が優しく包み込む。麻美はしばらくその

瞳を見つめると、留めなく涙があふれ出した。


「え?ど、どうしたのっ・・・麻美ちゃん!?」


いきなり麻美に泣かれて爽子はあたふたと無駄な動きを繰り返した。麻美はそんな

爽子の姿を見てさらに涙が止まらなくなった。


「少しだけ・・・抱きついていい?」

「だ・・抱きついて!?///は、はいっ私でよければっ!」


いきなり緊張する爽子に麻美はふっと笑みを浮かべると、爽子にぎゅっと抱きついた。

想いを全て拭うように・・・。


麻美は苦しんでいた。自分の中の疑惑を取り除かないと苦しみ続ける。でも無垢な人

を傷つけたくはない。爽子の家に来て何ができるというのだろうか?



誰も悪くない。誰のせいでもない。

ぶつけることのできない想いを抱えたまま、日々自分自身が病んでいくのを感じてい

た。麻美も探し続ける。自分の幸せ、そして蓮にとっての本当の幸せを・・・。


そして麻美は苦しみの中で一つの決心をした。


爽子の家からの帰り道、麻美はふと立ち止まって爽子の家をせつない目で見つめる。


「・・爽子さんに会って決心がついた」


人生意味のない出会いなんてないと言う。これは全て意味があること。

大好きな爽子さんに会えたこと、そして・・・魂が揺さぶられるような恋に出会えたこと。

だから・・・。


麻美はそれからは振り返らず真っ直ぐ前を見据えた歩き出した。

揺らぎのない瞳で・・・。






「Once in a blue moon」51 へ

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あとがき↓

ひぇ〜〜〜またサイト放置してしまいました。そんな自分が嫌になった。これからは
あまり間隔開けずに更新したいです。(なんかいつも言ってるな( ̄0 ̄;))
放置の間も見捨てず遊びに来て下さった皆様、本当にありがとうございます。ついに
この話も節目の50話。内容は全然節目じゃないけど。どれだけ続くか分からないで
すが納得できるような形で終えれたらいいなと思っています。いつも読んで下さって
ありがとうございます!!