「Once in a blue moon」(31)


※こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 の続きです。 


☆ 蓮の過去を探るために仙台に来た麻美。幸運にも偶然昌に会うことが出来て、昼に
改めて会う約束をしたが・・・?麻美&昌の回です。




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 31 ‥…━━━☆





















「お待たせ〜〜っ!」


不安を抱えながらぎこちない様子で待っていた麻美の元に、昌が笑顔で手を振ってや

ってくる。麻美は緊張気味に頭をぺこっと下げた。昌はテンション高く喋り続けなが

らお目当てのレストランに麻美を案内した。


「おいし・・・」

「でしょ?ふふっ良かった」


不思議だ・・・。なんで私はこの人とランチをしているのだろう。なぜここにいるん

だろう?ふと現実か夢か分からなくなる。

しばらく料理を堪能した後、昌さんが何気なく聞いてきた。


「麻美ちゃん一人なの?」

「ま・・・まぁそうです」


どきっ


当然そう来るだろうと思っていたけど、言われるとどきっと胸が大きく脈打った。

麻美は伏し目がちに落ち着かない様子で食事を続けた。


「麻美ちゃんが来ること、蓮知ってんの?」

「・・・いえ」


すると昌さんは驚いた顔をした後、私がここに来た理由を探るようにじっと見つめた。

昌さんはストレートな人だ。だから裏表がないような気がする。でも爽子さんのよう

にはすんなりと入ることはできなかった。


「観光・・・じゃないよね?」

「・・・・」

「そっかぁ。じゃ、私に会ったことも内緒だね!」

「え・・・」


何て返せばいいか分からなくて困惑している私はその言葉にバッと顔を上げた。すると、

昌さんはにっこり笑って続けた。


「分るな・・・私でもそうするかも」

「え?」

「蓮のこと・・・知りに来たんでしょ?」


どくんっ


”遠慮いらないから”と言いにくい私の気持ちを察するように配慮してくれる昌さんに、

胸が熱くなった。


「わわ・・・麻美ちゃん、泣かないでよっ。ほんと・・・意外と涙ぼろいんだねぇ」


昌は麻美の頭をポンポンッと優しく撫でる。


張りつめていた緊張が解かれるように私は感情があふれた。昌さんが優しくて泣けて

くる。本当に蓮の友達はいい人ばかりだった。


「嬉しくて・・・。ごめんなさい・・突然」

「ううん・・・本当に蓮が好きなんだねぇ。蓮は幸せモンだね!」

「そんなことないです・・・私、蓮にふさわしいのかっていつも思う。」

「分かる!不安になるよね、好きだったら・・・それに蓮は分りにくいから。私も蓮

 の彼女だったら不安でたまらないかも」

「昌さん・・・」


その時、注文したケーキがやってきて、昌さんは”おいしそ〜〜〜食べよっ”と明るく

言うと私にフォークを取ってくれた。

ここの料理は本当においしくて、昌さんは優しくてそれからの私は会話を楽しむ余裕

も出来た。蓮の学生時代の話に花が咲く。知らなかった蓮の話を聞くと楽しい時間が

あっという間に過ぎていく。そして自然に私たちのことに話題が流れていった。


「蓮もさ、そろそろ結婚したらいいのにね」

「えっっ!?」


昌さんは何気なく言っているのだろうけど、動揺は隠せない。昌さんはそんな私を見

てにっこりと笑う。


「だって麻美ちゃんはいつでもOKでしょ?」

「えっ・・・」

「ははっ分かるんだ。私と一緒だから」

「?」


その言葉の意味が私には分らなかった。でも昌さんの瞳に少し翳りを感じたのは私の

思い過ごしだろうか・・・?


” 私と一緒だから ”


麻美は無言のまま昌を見つめた。その”一緒”という真意を知るために。昌はふぅっと

息をつくと少し伏し目がちに語り出した。


「私、ずっと光平に片思いだったから、その長い年月分、想いが膨れ上がったという

 かさ・・・。あっ麻美ちゃんは片思いじゃないんだけどね」

「・・・・」

「でもなんか麻美ちゃんを見てたら分かるの。すっごく好きな気持ち」


私は蓮と付き合っているのだが、その恋は片思いに見えるのか・・・と思い、何だか

ブルーになった。そしてじりっとした感情も湧き起こる。


「・・・昌さん、覚えてないかもですけど、爽子さんの家に来た時に酔って、意味深

 なことを私に言ったんです」

「えっっ?やばっ何か言っちゃった??」


そのジリッとした感情の正体は分っていた。そう・・・ただ図星を指されただけ。

昌さんは何も悪くないのに、私はイラッとした気持ちで昌さんに聞いた。もう、先ほ

どの弱気な気持ちはない。


「爽子さんと光平さんのこと・・・」


昌さんの表情が固くなった。でもこんなことで躊躇するぐらいなら聞いていない。風早

さんが仙台に居た時のこと。全部・・・知りたい。爽子さんのこと、風早さんのこと、

そして・・・蓮のこと。いつか爽子さんが自分のことを話してくれるかもしれない。

でも・・・待てなかった。そのためにここに来たのだから。


「あ”ぁぁ・・・私何言ってんだろうね」


昌さんはそう言って苦笑いをした。そしてもう隠さないとばかりに真実を語り出した。


「そうなんだよね。もうこだわる必要はないんだけどさ、私たちは夫婦なわけだし。

 でも、酔った時に出るってことは・・やっぱまだ傷があるのかな」

「・・・・」


あれほどしっくりとしたカップルに見えた昌さんが不安そうに言う姿に驚いた。


自信のある人間なんていないんだ・・・。


私は妙にさきほど湧き起こった感情が恥ずかしくなった。人に流されない人間だった

はずなのに、いつの間にかこんなに人の言う事を気にしている。

それは蓮を好きになったからだ。


「やだねぇ・・・私」


その後、昌さんは哀しげな瞳を私に向けた。それは今まで見たことない目だった。

私は思わずどきっとする。

そして、昌さんが言った次の言葉に心臓がぎゅっと掴まれるような感覚を覚えた。



「きっと後にも先にも・・・光平が本気になった相手は爽子ちゃんだけだよ」



その時初めて分かった。昌さんは今もなお傷を背負って生きていることに・・・。





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あとがき↓

昌が結構活躍します。活躍ってのも変だけど(笑)麻美の過去を探る旅にしばらく

お付き合いください・・・。その後、暗くなっていくのでご了承を(;´д`)トホホ…