「Once in a blue moon」(30)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 の続きです。 


☆ 光平達が風早家に集まった時に麻美は過去への入り口に足を踏み入れてしまった。
その後の麻美です。




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 30 ‥…━━━☆

















例えば、各駅停車なら次の駅ですぐに引き返すことができるだろう。でも、特急電車

なら?そう、すぐには引き返せない。もともと、白か黒かという極端な性格だ。

中途半端に恋は出来なかった。全部知りたいという欲求は走り出してしまった。

私はすでに特急電車に乗ってしまったのだ。あの人たちの過去に向かって・・・。




あれから一週間の月日が流れた。昌さん達はあの後、観光などをして帰ったようだ。


”『・・・じゃ良かった。ナイフを向けられるなんて尋常な出来事じゃないからさ』”


あの時の光平さんの言葉がずっと頭の中に残っている。


そして思い出す度にどくんっと心臓が動く。


一体、あの頃・・・・何があったの?


もちろん風早さんにも爽子さんにも聞けるわけはなく、釈然としない気持ちを持て余し

ている。考えられることは、確か美穂さんは精神を患っていると言っていた。というこ

とは美穂さんの病気関連のトラブルに爽子さんが巻き込まれたということだ。


そう言えば・・爽子さんを見る蓮の目が労わりで溢れているような気がした。何も関係

ない人を巻き込んだのだから蓮の性格からしたら一生責任を感じそうだ。


でもそれも想像でしかない。


そして私は決心した。

蓮のためにもある行動に移すことを・・・・。



* * *



あれから一か月後ー


「ここが仙台・・・」


麻美は仙台の町に足を踏み入れていた。蓮には仙台に行くことを言っていない。友達と

近くを旅行すると伝えた。


そう・・・決心とは蓮たちの過去を探ること。


蓮に内緒で過去を探ることに後ろめたさはある。でも以前のように虞(おそれ)はない。

これで嫌われたとしても自業自得だ。それでも知りたい欲求は止められなかった。そして

おこがましいかもしれないけど、蓮の過去を知ることで蓮を救えたら・・・。


麻美はぐるっと周りを見渡した。


ここが蓮の生まれ育った街・・・。


妙に感慨深かった。本当は蓮と一緒に来たかった。


仙台駅から繁華街をゆっくり歩いてみる。勢いできたものの、どうすればいいか考え

ていない。会社は有給を取った。今回爽子にも言わなかった・・・というか言えるわ

けがなかった。爽子の過去も探ろうとしているのだから・・・。


「・・・・」


蓮の過去を知るには昌を頼るしか手段はない。でもどうしても連絡できなかった。

固い決心をしながらも、人に頼ることが苦手な自分の性格を呪う。


(・・・っどうしよう。でも・・・)


無意識で手に力を込めていた麻美はぶんぶんっと頭を振って、携帯をカバンから取り

出した。昌の連絡先は先日赤外線で交換し合ったので入っている。


「あぁ”〜〜〜〜っ」


麻美は携帯を握りながら、ボタンを押せずに頭を抱えた。そしてとりあえず仙台の街

をぶらりと回ることにした。なにせ大好きな蓮が生まれ育った街なのだ。そう思うと

自然に心が躍り出す。


「ま・・・ちょっとだけ観光。よく考えたら昌さん仕事だろうし・・・」


そんな言い訳をしながら、地図を片手に歩き出す。初めての土地なのである意味旅行

気分だ。


「う〜ん、これどこかなぁ」


麻美は道が分からず、側にあった服屋に入って聞くことにした。入るとセンスが良い

店内が目に飛び込み、思いがけなく自分好みの品揃えが購買意欲を誘った。麻美は道

を聞くことも忘れ、目の前の商品に目を輝かせる。


(わっ・・・これかわいい)


思わず蓮が頭に浮かぶ。”こんなの好きかなぁ・・・”なんて考えている自分に笑える。

ここに来た理由も忘れて呑気に買い物をしているからだ。苦笑いをしている麻美の元

に店員が近づいた。


「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」

「あっ・・・いえ、道を聞きたくて」


(そうだった)


「いいですよ。どこをお探しでしょうか?」


女性店員が親身になって地図を覗いてくれた。その時、背後から聞き覚えのある声で

名前を呼ばれた。


「・・・麻美・・ちゃん?」


(えっ?)


振り返ると、昌さんが立っていた。驚いて思わず声を失う。


「やっぱり〜〜〜〜うっそっ!!驚いた。なんでここにいるの??」

「あら?田口さんの知り合い?」

「はい。友達なんです。北海道に住んでるんです」

「あの・・・昌さんのお店?」


すると、呆気に取られた昌さんはゲラゲラ笑い出した。


「なわけないじゃん。そんなやり手じゃないよ〜〜〜」

「・・・・」


どうもこの店はアパレル関係の仕事をしている昌さんの会社の取引先らしく、仕事で

来ていたことが分かった。この偶然に驚く。会いたかった人にこんなに簡単に会える

とはあまりにもラッキーだ。麻美は運命の女神が自分に微笑んでいるような気がした。

”もうすぐ昼休みだからご飯食べよう”と昌さんに言われて、ゆっくり話す機会を持て

ることにもなった。


でも・・・なんて切り出そう。


どくんっ


あまりにもラッキーな状況に浮かれていた麻美は、大切な目的を思い出し現実に引き

戻される。


私は蓮と両想いで付き合っているはずなのに、なぜかいつも不安を抱えていた。その

不安が”知りたい”という欲求を引き寄せる。蓮を知りたい。知れば安心できるのでは

ないだろうか?何が安心できるの?・・・そんな葛藤が頭の中を駆け巡る。


蓮を救うとか言ってまるで任務を遂行するようにここに来ている。でも・・違う。


私が救われたいのだ。




麻美は不安を隠しきれずに複雑な表情を浮かべながら待ち合わせ場所に向かった。






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あとがき↓

いやぁ・・・きみとど16巻読みました。別マで見ていたけど、続けて読むといいですねぇ。
風早くんの葛藤やベタボレぶりが分かるというか。この人、爽子が本当に好きなんだなぁと
思って妙に愛しくなっちゃいましたよ。爽子はというと”風早くんの気持ちに誠実でいよう”
というスタンスは変わっていない。やっぱ風早くんは爽子にはかないませんね。そして好き
すぎるあまりに天然爽子に振り回されるのであった。ひひっ萌えが止まりませんよ。さて、
二次はこの話もう少し進める予定です。