「Once in a blue moon」(42)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
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☆ 場面変わって北海道。麻美の仙台旅行が終わってすぐ、風早家と蓮カップルで外食を
することになっていたが・・・?




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 42 ‥…━━━☆

















*******



「あれ?翔太は?」

「あ、実家にいるゆづちゃんを迎えに行ってくれてるの」

「え・・・?」


ある日、風早一家と食事をすることになっていた蓮は、爽子だけ待ち合わせ場所に現

れたので驚いた顔をして聞いた。


「めずらしー」

「え?」

「いや、滅多に二人になんかしないだろ翔太は。究極の嫉妬男だからな」

「えっ////」


爽子は蓮ににやっと笑ってそう言われると、ぼっと真っ赤になった両頬を手で覆った。

本当は約束時間に間に合うはずだったが、実家に遊びに行っていた結月を迎えに行く

と寝てしまっていて支度が遅れた。運転手の翔太は蓮カップルを待たせるのも悪いと

思い、爽子に先に行ってもらうことにしたのだ。この日の外食はかなり前から決まっ

ていて、風早家と蓮カップルで会うことになっていた。


「麻美ちゃんは一緒じゃなかったの?」

「うん。なんか少し遅れるって」

「あっ・・そ、そうなんだっ」

「?」


焦った様子の爽子に蓮は不思議そうに首を傾げた。爽子は鋭い蓮の視線を感じて慌て

て言った。


「あっと、とりあえず、お茶しませんか?」

「うん・・そーだな」


二人は近くの店で皆を待つことにした。そこには仙台で二人でお茶をした時と同じ、

ファーストフード店があった。爽子は席に座るとふふっと笑った。


「何?」

「あ・・・ごめんなさい。なんか懐かしいなぁって思ったの」

「・・・・・」


蓮はもちろん気づいていた。自分も同じことを思っていたのだから。翔太と爽子の誤

解が解けて、お互いが入れ違いになったあの夜・・・爽子を昌の家に案内する途中に

入った店だ。蓮は懐かしそうに言った。


「なんか、随分前なのについ最近のような気がするな」

「わたしもっ。ふふ・・・不思議だなぁ」


この日は温かく、オープンテラスにいた二人は心地よい秋の風を感じながらお茶をし

ていた。爽子の長い髪が風に揺らぐ。蓮はその光景をぼーっとして見ていた。


「・・・蓮さん?」

「あっ・・・何?翔太遅いな」


蓮が焦った様子で言うと、爽子はきょとんとして蓮を見つめた。


「まだ10分も経ってませんが・・・?」

「いやっ・・・そうなんだけど」


蓮はくしゃくしゃっと髪をかきむしると、コーヒーをぐいっと一含みした。その様子

を見ていた爽子はくすっと笑った。


「今度は何?」

「あっまたまた・・・わわっごめんなさい」

「え?いや」

「あのね・・・その仕草が翔太くんに似てたから笑ってしまって・・・ごめんなさいっ

 勝手に」


爽子は慌てた様子で言うと、蓮は大きく目を見開いた。


「・・・似てる?」

「うん。友達って似てくるって本当だね」

「いや、似てないだろ〜〜〜。言われたことないし。残念ながら俺はあんな爽やかくん

 じゃないよ」

「そうかな・・・二人は似てると思うけど」


蓮はあまりにも意外な爽子の言葉に返事をするのも忘れて黙り込んだ。そして爽子をじ

っと見つめて聞いた。


「・・・どんなとこ?」


爽子は穏やかな笑みを浮かべて言う。


「お互いをとても大切に思っている・・・ところかな?」

「はっそんなの・・・似てるとか言わねーし」

「わわっそうですねっ」


しばらくの沈黙の後、どちらからともなく笑い合う。そして蓮はふぅ〜と息を吐くと、

優しい目をして爽子を見つめた。


「何にしても・・・幸せで良かったな」

「うんっ・・・翔太くんも言ってるけど、蓮さんおかげですっ」

「・・・・・」


精いっぱい気持ちを伝えようとしている爽子を蓮は嬉しそうに見つめた。


「美穂さんのこと・・・聞きました。お仕事始めたって・・・」

「あ〜うん。良かったと思う」

「私もいつか・・・会えるかなって」


蓮は目を輝かせながら言う爽子を唖然と見つめると不思議そうに言った。


「あんなことあったのに、アンタは強いんだな」

「ううんっ・・・強いとかじゃなくって。私の問題で・・・」

「え?」


その時、蓮は初めて知った。爽子も美穂のことを引きずっていたことを。何年も前の

出来事だが、それぞれの中に残る過去。

蓮は息を潜めて爽子の言葉を聞いていた。


「私・・・美穂さんとの約束をずっと果たしてないから」

「約束?」

「うん・・・北海道から帰ってきたら会いに行くっていったのに・・・」


爽子はつらそうな表情で言った。正直蓮は驚いた。そのことは知っていたが、まさか

まだ爽子がその約束を気にしていたとは思ってもみなかったからだ。それもあまりに

も見当はずれなことを引きずっている。


(・・・マジで!?)


「そんなの・・・美穂は病気だったし、子供になった時の記憶なんて今はないし、

 それにさ・・・あのことはもう大丈夫?」

「あのこと?」


きょとんっとして全く分からない様子の爽子に蓮は戸惑った。蓮には珍しく言いにく

そうに言葉を詰まらせた。


「いや・・まぁ、いいわ。ぷっ」

「??」


蓮は話している途中にいきなり腹を抱えて笑い出した。訳が分からずびくっと身構え

る爽子。


「あっ・・・あの?」

「ごめっははっやばっ・・・ツボに入った」

「つ・・つぼ?」


爽子は見たことのないような蓮の様子に戸惑った。しかも原因が分からず・・・。爽子

はオロオロしながら蓮を見ていた。


「マジ、翔太が敵わないわけだよな」

「え??」

「はは・・・気にしないで・・・・って」


その時、蓮は爽子にじっと見られていることに気付いてハッとしたように真顔になった。


「・・・何?」

「あっご・・ごめんなさいっ」


爽子は蓮を見過ぎたことにあわあわになって謝った。そして不思議そうな顔をしている

蓮を見て嬉しそうに笑った。


「嬉しいなって・・・思ったの」

「え?」

「ずっと・・・そんな風に笑っていて欲しいなって」

「・・・・」


蓮は答えられなかった。無言のまま爽子の笑顔を見つめ続けた。


「ゆづちゃんもね、蓮さんが大好きだから」

「ゆづ・・・も?」

「あっ・・・翔太くんも、もちろん私もってことですっ///」

「・・・・」


秋の風がふっと吹き抜けると長い黒髪がぱらりっと揺れた。それと同時に爽子が持って

いた帽子がふわっと風に舞った。


「「あっ」」


蓮は咄嗟にその帽子を掴んだ。そして爽子に渡す。


「ありがとう・・・っ」

「・・・・・」


爽子の笑顔が茜色の空に重なった。その前をパタパタと飛び去る鳩の群れ。

まるでスローモーションのように見えるその風景を蓮は夢の中のように見ていた。



”彼女は心から笑いたいときに笑うんだ”



蓮はその笑顔をいつまでも見ていたいと思った。





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あとがき↓

やっと爽子出せた(* ̄ー ̄*) しばしの平和。そうしばしの・・・( ̄Д ̄;