「Once in a blue moon」(56)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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47 48 49 50 51 52 53 54 55 の続きです。
 

☆ 蓮と麻美が突然風早家にやってきた。仲の良さそうな二人に爽子達は安心する。
その続きです。麻美目線です・・・やはり。 



















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 56 ‥…━━━☆





















突然訪ねてきた蓮と麻美はその夜遅くまで風早家に居て、久々に飲み明かした。結月

も喜んでいつも通り蓮とおおはしゃぎしている。麻美は以前と同じようにこの場に居

られる自分が嬉しかった。


「おぉ〜っ!なんかまた大きくなったなゆづ。重いわ」


蓮に高い高い〜とされてきゃっきゃと声を上げて笑っている結月を麻美と爽子は微笑

ましく見ていた。


「麻美ちゃん、旅行に行ったんだね。楽しかった?」

「うん。何だか蓮が前よりも近く感じるようになった」


穏やかな顔で言う麻美を爽子を嬉しそうに見つめる。


「そっか・・・もうお付き合いして長いもんね」

「うん。1年になる」


麻美は月日の長さを噛みしめるように笑顔を浮かべた。

半年前麻美は仙台に行き、蓮が未だに背負っているものが何かを考えていた。過去の

中に答えがあると思っていたが、探れば探るほど蓮を苦しめるような気がした。それ

より今、目の前にいる蓮をそのまま受け入れようと思った。すると不思議なほど穏や

かな蓮を感じられるようになったのだ。


「来週、仙台七夕祭り・・・爽子さん達行くでしょ?」

「うん・・・麻美ちゃんは?」


爽子は少し躊躇しながら聞いた。蓮が誘わないと麻美が仙台行くことはないからだ。

そして蓮が仙台に麻美を誘うということは大袈裟かもしれないが、ある程度の覚悟を

決めているのかと爽子も翔太も思っていた。この正月はまだ早すぎたのかもしれない

が今は・・・?

遠慮気味な爽子に麻美はにっこりと笑った。


「私も。私も行くことになった。蓮が誘ってくれたのっ!」

「ほんと??わぁっ・・・嬉しい。一緒にお祭り見れるね」


爽子は興奮気味に拳を握りしめて言った。その姿に麻美は頬が緩む。


仙台七夕祭り”

仙台に行った時、季節外れの七夕祭りのポスターを見たことを思い出す。蓮が生まれ

育った仙台を一緒に歩きたいと思ったこと。一緒に七夕祭りを見たいと思ったこと。

蓮に”一緒に行こう”と言われた時、涙が止まらなかった。嬉しかった・・・。


ぐいぐいっ


「ゆづっち?」


麻美が思いに更けていると、蓮と遊んでいた結月が麻美の服を引っ張った。蓮がすか

さず代弁する。


「麻美も一緒に遊ぼってさ」

「ゆづっち・・・うんっ!!いくぞ〜〜〜っ」


きゃっ・・きゃっ  あははっ〜〜〜


楽しそうに遊ぶ結月を翔太と爽子は嬉しそうに眺めた。麻美は結月と遊びながら、久々

ということもあるが、結月が以前より全身で近づいてくれているような気がした。子

どもは繊細だ。あの頃の自分は自然に結月さえ遠ざけていたのだろうか・・・。まる

で鏡を見ているような結月の反応に麻美は少し怖くなった。


「じゃ、ありがと〜〜」

「今度仙台で」

「ばいばい〜〜〜ゆづっち」


3人にぶんぶんっと手を振り、蓮たちは風早家を後にした。

二人で歩いて帰るのは久々だ。初めて会った時に一緒に帰った時のようだ。

そう告白したあの夜のように・・・。


「気持ちい〜〜ね。夏の夜」

「あぁ。やっぱ北海道は涼しいな」

「仙台は?」

「もっと暑い時あるよ。北海道もだろうけど」

「へぇ・・・」


嬉しそうに腕に巻きつく麻美を蓮は愛しそうに見つめる。


「麻美・・・いろいろありがとな」

「へ?何突然」

「ん・・別に意味なし」

「なんだそれ。でも・・・」


くすっと麻美は笑うと、笑顔を蓮に向けて言った。


「嬉しい・・・蓮と一緒に仙台。今度こそ一緒」


”今度こそ一緒”


蓮は麻美のその言葉を聞いて、静かに目を瞑った。


「いろいろ・・・悪かったな。不安にさせて」

「何?もう昔のことだよ。今はもう何も不安はないよ!」

「そっか・・だといいけど」


麻美はちらっと蓮を見る。相変わらずこういう時の感情を読み取れない。でも仙台に

”一緒に行こう”と言ってくれた蓮の目は優しかった。


「ありがとう・・・蓮」


感情が出ない蓮の表情が少し緩んだ。


このまま付き合っていけると思っていた。乗り越えられたと思っていた。蓮の家にも

普通に行けるようになった私は関係が深まったと浮かれていた。以前より心が通い合

うことが嬉しくて蓮の笑顔を増えたことが嬉しくて。

だけど、私はまだ不安をどこかに抱えていた。そのままの蓮を受け止める、蓮を信じ

ると思いながらも私は畏れている。美穂さんの存在。


蓮が美穂さんともし会ったらって・・・


私は蓮に聞けなかった。いつか会うつもりなのだろうか、このまま会わないでおくのか。

皆それぞれ過去があるから現在がある。だけど、その過去が重ければ重いほど、簡単

に負の方向に引き寄せられるんじゃないだろうか・・・と。


(いや、違う・・・私が一番畏れていることは・・)


「麻美?」


考え込むように黙り込んだ麻美を蓮は不思議そうに見つめる。麻美は想いを吹っ切る

ようににっこりと笑うと、もっと強く蓮の腕にしがみついた。


このままずっと離れないでいたい・・・と


仙台七夕祭り。

一緒に行けることが嬉しくてたまらないのに、背中合わせの感情が自分の中に潜んで

いることを麻美は認めずにはいられなかった。









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あとがき↓

なかなか蓮の心情に行けないなぁ。麻美視点を止めようと思ったけど、麻美視点でない
と運べない展開とかあって難しい。北海道や仙台知識はよく分かんないので目を瞑って
下さいませ。二次二次なんで(´-`)
別マはもっともっとラブラブ見たい〜〜〜〜っと欲張りになってる。風早の壊れ具合と
か、風早のことももっと知りたい〜〜!