「笑顔」

いきなりショートです。高校生の二人を書きたくなった。新婚ウブコントを書こうと
思ったのですが、いつもながら妄想のまま・・・。


付き合い始めた二人、爽子は風早といると自然に笑顔がこぼれた。そんな自然な笑顔
が沢山見られるようになって嬉しい風早だが・・・?


以下からどうぞ↓



























爽やかでスポーツができて、クラスの人気者の風早くん。憧れだと思っていた気持ち

がいつの間にか”恋”に変わっていた。そして風早くんも同じ気持ちなんてそんな奇跡

はあるんだろうか・・・・。


風早くんとお付き合いをさせてもらって3ヶ月。彼女としてまだまだ慣れないけれど

ドキドキしながらもやっと一緒に居る時間を緊張せずに過ごせてきたように思う。


「最近、なんか・・・・変わったね////」

「え・・・?」


何が変わったんだろう・・・。変になったのかな?ちょっと図々しくなった??


学校からの帰り道、風早にそう言われて爽子が困惑した表情を浮かべていると、風早は

「あっ」と焦ったようにぶんぶんと手を振った。


「違うよ!悪い意味じゃないよっ!」

「えっ・・・それじゃあ?」

「//////」


なぜか彼は手で顔を覆い、くるっと背中を向けた。


「え・・・笑顔が前よりもっとかわいくなったなって・・・・」

「え!?」

「あっ、もちろん今までもかわいいよっ。でも、もっと・・・・」

「あっ/////」


そこまで言うと、くるっと風早は再び爽子の方を向いた。そして恥ずかしそうにぼそ

ぼそ声で言った。


「俺と・・・いる時だけにしてほしいとか・・・思ってんだよな」

「え?ごめん・・・もう一回。聞き取れなくて・・・・」


不安そうに瞳を揺らしながら爽子が手を組んで懇願するように言うと、風早はぷしゅー

と頭から湯気を出した。


「な、なんでもないっ///とにかく、黒沼が・・かわいいって言ったんだよ」

「えぇぇ〜〜〜!!お、思いがけないサービスをありがとーございます」

「サービスじゃないし・・・・」

「/////」


二人は嬉しそうに笑い合った。こうやって一緒に居る時間が少しずつ心地の良いもの

に変わっていく。風早くんといる時に自然にあふれる笑顔。


大好き・・・・。


* * *


いつも下校は風早と帰る爽子だったが、この日は千鶴とあやねと買い物をするため、

風早に断った。そして楽しく買い物を済ませ爽子は二人と別れた。


その帰り道、爽子が楽しさの余韻に浸りながら歩いていると・・・


「あれ?もしかして爽子ちゃん?」

「え??」


突然の声に爽子が振り向くと、道路の向こうに見た顔の男性が立っていた。


「あ・・・関谷さん?」

「やっぱり爽子ちゃん!〜〜〜〜久しぶりだなぁ」


関谷は嬉しそうに道路を渡って爽子のもとにやってきた。関谷は父の同僚で、爽子が

小さい頃家によく遊びに来ていた。その頃まだ20代後半の若手のホープだった。


「きれいになったね〜〜〜前に会ったときは確か、小学生だっけ??」

「そうですね」

「いや〜〜月日は早いね」

「はいっ。でも関谷さんは全然変わっていません」

「そんなことないよ〜〜〜もうおじさんだよ」

「ぜんぜんですっ!!」

「優しいなぁ〜〜〜爽子ちゃんは」


あはは〜〜〜〜っ


そう言って、関谷は小さい子をなでるように爽子の頭を優しくなでた。


「・・・・・・・」


たまたま買い物に出ていた風早はその場面に出くわしてしまった。自分に向けるよう

な自然な笑顔の爽子を見て愕然とした表情で佇んでいた。



* * *


次の日・・・


この日は雨だった。ザーザーと強い雨が降り、雷もなり始めている。


「か・・風早くん、傘は持っていますか?」


下校時間になり、一緒に帰れると思った爽子は風早に恥ずかしそうに聞いた。この日

はあまり喋る機会がなかった。やっと下校時間になり、ゆっくり話せると思っていた

爽子に風早はいつもと違う様子を見せた。


「・・・持ってないから入れてくれる?」

「う、うんっ!もちろん」


いつものようにお日様の笑顔は出ずにどことなく暗く感じる風早。


(・・・体調でも悪いのかな)



ザーザーザー


雨の中、相合傘で歩く二人に緊迫した空気が流れる。それは今日の風早があまりにも

無口だったからだ。爽子は心配になり風早をちらっと見ると勇気を出して聞いた。


「あ・・・あの、風早くん?体調でも・・・・悪いの?」

「・・・・・ううん」


そのあとしばらくまた風早は黙り込むと、歩きながら爽子を見ずに呟くように言った。


「昨日・・・見ちゃったんだ」

「え・・・・?」

「黒沼が男といるとこ・・・」

「昨日?えっと・・・あっ!関谷さんのことかな?」

「・・・誰か知んないけど、知りたくもないし。でも・・・・あの笑顔は俺だけじゃ

 なかったんだね」

「笑顔?」


爽子が瞳を揺らして風早を見つめると、風早は”あ"〜〜〜〜っ”といきなり声を上げ、

髪をくしゃっとかきあげた。爽子はびくっと身構える。


「ごめん・・・俺、ほんと勝手。自己ちゅー」


どきんっ


そして風早は爽子をじっと見つめる。傘の中の至近距離に爽子の胸は大きく脈打った。


「ははっ失望するだろ?俺、黒沼が思ってるほど爽やかなんかじゃない・・・すぐに

 嫉妬するし・・短気だし」


爽子はいつになく弱気な風早を瞳を揺らして見つめると首を横に振り、緊張した面持

ちで言った。


「私・・・全部欲しくなったの」

「えっ?」

「この気持ちが”恋”だと知った時、どの風早くんも全部っ・・・ひとりじめしたく

 なった。あっ・・・そんなの無理に決まっているのだけれどっ///!!」


爽子は真っ赤になって焦ったように付け足した。そんな爽子を風早は頬を染めて茫然

と見つめる。


「好きっ・・・」


爽子はぎゅっと胸に手を当てると、涙を溜めた目で一生懸命気持ちを伝えた。


「風早くんの全部が・・・好きなの」


どくん、どくん


「だから、笑っていてほしい・・・」


風早は爽子の真摯な目をしばらく見つめると、恥ずかしそうに俯いた。


「ごめん・・・俺も黒沼にずっと笑っていてほしいのに・・・不安にさせてごめん」

「私こそ・・・ご、ごめんなさいっ」

「いや、黒沼は何も悪くないし」

「誤解させてしまったのでっ・・・」

「それは俺が勝手に・・・はっもういっか!」


お互い、くすっと笑い合う。


その後、風早は昨日の事実を聞き”あ”〜〜〜〜穴があったら入りたいっ”と勢いよく

しゃがみこんだ。そしてすくっと立ち上がると満面の笑顔で言った。


「俺も・・・全部好き。黒沼の全部が大好きだよ」

「風早くん・・・」


お互いが大好きな笑顔で笑い合う。そこにはいつもの二人が居た。


照れた横顔、あわてた顔、真剣に怒った顔、真面目な顔、悲しい顔、そして・・・・

真正面からの満面の笑顔。


全部・・・大好きなの。



すっかり外の雨は上がっていた。



<おわり>

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あとがき↓

本誌はどうやって向き合っていくんでしょうね。まずは風早の爽やか以外の黒い性格を
爽子に分かってもらわなくっちゃね。なんちゃって〜〜風早くんは黒くなんてないね。
二次では思わず黒く塗ってしまいそうになる時がある・・・どの二次さんもありがちで
笑ってしまう。あんなに爽やかなキャラなのになぜ!?いきなり脱線のショートでした。
とりあえず蓮の話、30話まで頑張ろうとは思ってます。