「Once in a blue moon」(27)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26 の続きです。  
 


☆ 光平達がやってきて、それぞれの過去を垣間見た麻美。そんな光平夫婦も2泊3日の
旅を終え帰って行った。風爽ラブの巻です。




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 27 ‥…━━━☆




















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あれから、田口夫婦は札幌市内を観光して仙台に帰って行った。

光平達は遠慮したが、翔太は遊びを兼ねるからと家族で空港まで二人を見送った。


「相変わらず賑やかだったな・・・昌さん」

「うんっ・・・楽しかったなぁ。ゆづちゃんも大分慣れたみたいだし・・・」

「だな。ゆづは慣れるまで時間がかかるもんな。そーいや、瀬戸さんは最初から大丈

 夫だったな」

「うん。蓮さんも・・・」


翔太は少し驚いた様子で目を見開くと ”そーだな”と納得したように頷いた。


翔太と爽子は展望デッキの中をぐるぐる走り回り遊んでいる結月を寄り添って見つめる。

その瞳はどこまでも温かい。そして翔太は青空に向かって大きく伸びをした。


「ふぅ・・・っなんかホッとした」

「え?」


不思議そうな顔をしている爽子を見つめると、翔太はふっと恥ずかしそうに笑った。


「やっぱだめなんだよなぁ・・・俺」

「?」

「田口のこと・・・」

「!」


爽子の瞳が揺れた。


「爽子・・・」


翔太は爽子の頬に宝物のように触れると、爽子を目を細めて見つめた。


「俺・・・きっと一生安心できない。爽子が側にいる限り」

「翔太くん・・・」

「あ、違うよ。爽子が悪いんじゃないよ。そういう意味じゃないから」


瞳を揺らせて困惑したような様子の爽子を見て、翔太は取り繕うように言った。そし

てちらっと視線を上げる。


「いや・・・ちょっと悪いか」

「えっ!?」


翔太はそっと爽子を抱きしめると、耳元で囁くように言う。


”『・・・かわいすぎるとこ』”


翔太がいたずらっ子のように舌を出すと、爽子は耳まで真っ赤になる。それは出会っ

た頃から変わらない。翔太はそんな爽子が愛しくて仕方がなかった。


「ゆづ〜〜〜おいで」


そしてこの家族が堪らなく愛しかった。結月と爽子を抱きしめながら翔太は幸せを噛

みしめる。そしてこの幸せを誰よりも望んでくれた人を想う。


3人は夕日を浴びながら手を繋いで駐車場まで向かう。翔太はひとり言のように呟いた。


「・・・俺、蓮に幸せになって欲しいんだ」

「翔太くん・・・」


幸せを感じれば感じるほど、蓮のことが気になっていた。


「仙台にいた時、色々あったけど・・・俺、本当に蓮に会って良かったって思うんだ。

 なんてのかな・・・誰よりも俺の気持ちを理解してくれたように思うから」

「うん・・・」

「爽子への気持ち・・・」


二人はにっこりと笑い合った。そして二人が結月を包み込むように笑うと結月も笑う。

翔太はあの夜、光平と二人で話したことを思い浮かべた。


* * *


『俺・・・あの頃、結構蓮に忠告されてたの知ってた?』

『え?』


風早家に皆が集結した夜、翔太と光平は夜更けまで話した。蓮が起きてきた結月を寝

かしつけていたため、思いがけなく二人きりになった。


アルコールが進んでいくと、深い話になっていく。光平は時効とばかりにずっと封印

していたあの頃の話をぽつりと話し出した。爽子とのこと・・・。


『俺、蓮に軽蔑されても自分の気持ちを止められなかったんだ』

『・・・・』

『そんな時、蓮が言ったんだ。”真っ直ぐ見れる恋愛しろよ”って。そう言われなけれ

 ば俺、風早に向き合おうと思わなかったかもしれない』


”あの時でさえ到底かなわなかったけどな”と言って光平は苦笑いをすると、ビールを

飲み干した。光平の皮肉が風早には分かった。今でも痛い皮肉だ。

”あの時”・・・それは風早と爽子の誤解が生じた時。


『あの頃、蓮もつらかったはずなのに風早のことばっか考えてたよ』

『・・・違うよ。田口のこともだと思うよ。あいつは・・・そんな奴だよ』

『うん・・・美穂さんのこともすごかったよな。俺なら、あんな風にはできない』

『・・・・』


自分を押し通すように見えて、本当は誰よりも人の気持ちを優先してしまう。だから

時々不安になる。自分の幸せを貪欲に得ようとしないのではないか・・・と。

翔太はそんなことを考えながら願うように言った。


『蓮は幸せになる権利があるよ』

『うん。麻美ちゃんだっけ?・・と幸せになって欲しい』

『・・・・』


恋愛だけが蓮を幸せにするのだろうか?

翔太は光平の言葉に少しの違和感を感じた。恋愛じゃなくても人を想い、想われるこ

とで人は生きている。でも恋愛をして幸せになっている自分がそれを証明することは

できない。そして蓮が幸せになるためには本物の恋愛が必要な気がした。


蓮は優しい。だけど恋愛はその優しさが酷になることもきっと蓮は知っているはずだ。

なんでだろう・・?蓮は自分に期待してない。何かを諦めている?


蓮が貪欲に求めない限りは幸せにはなれない・・・。結局、他人がどうこうできるも

のではない。自分の人生は自分でしか切り開けないのだから・・・。


* * *


翔太はぐるっと空港を仰ぐと、結月に言った。


「ゆづ、お父さんとお母さんはいつも空港で別れないといけなかったんだ」


結月は不思議そうに翔太に顔を向ける。


「あん時はまじつらかったなぁ・・・」

「・・私もっ」

「あの時があるから余計に・・・今こうして一緒に居られること嬉しんだ」

「・・・うんっ。ゆづちゃんに会えたことも・・・」


それは何よりの奇跡だった。


沢山の想いの上に自分たちの今の幸せがある。誰にでも幸せになる権利がある。

だから、蓮にも幸せになって欲しい。

蓮が幸せに思えること・・・そんな奇跡にきっと出会える。


翔太は心からそう願った。





「Once in a blue moon」27 へ
















あとがき↓

明日からずっと仕事です・・・。できれば更新しますが(汗)いったいこの話何話になる

んだろう。ちょっと不安になった。「Half moon」ぐらいまで行くんじゃないだろうか。

いや、それはないかな。半分ぐらいかと思いますが。いつもながらまとめられず( ̄○ ̄;)

でも漠然と「君に届け」の連載が終わったらここも終わるだろう・・・と考えています。

それまでには終わらさなきゃっ・・・。