「Once in a blue moon」(25)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 の続きです。  
 


☆ 思いがけなく美穂と話すことになった蓮。麻美はその事実に動揺を隠せずに・・・?
麻美目線から始まります。




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 25 ‥…━━━☆






















”『美穂、俺、蓮・・・』”


蓮の声がとても優しかった。一大事だって分かってる。相手は病気だということも。

でも胸の奥がジリジリするのは・・・・仕方ない。

蓮は私たちに目配せして違う部屋に行ってしまった。


トクンッ


(私たちの前では話せない・・・ってコト?)


「ねぇ、昌さんさ・・・美穂さんに最近会ってたの?」


翔太は蓮がリビングから去った後、昌に問いかけた。昌はぶんぶんと首を横に振ると、

爽子に視線を向けた。


「ううん・・・美穂さんの様子は沙穂からよく聞いてたんだけど・・・ねー爽子ちゃん?

 風早と結婚する前、沙穂から結構相談受けてたんだってね」

「あっ・・・たまにだけど、電話で」

「でも沙穂さ、爽子ちゃんの存在が大きかったみたいよ。旦那さんにも言えないこと

 やっぱあるじゃん。それからは美穂さんの話、私にするようになったんだよね」

「それで?」


光平が先を促すと、昌は困惑した様子で麻美を見て言った。


「麻美ちゃんは・・・蓮の元カノのこと・・・知ってんの?」

「あ、はい。蓮から聞いたので」

「そっか・・・んじゃ良かった」


昌は安堵の表情を浮かべると、用意してもらっていた紅茶を飲み干し気持ちを落ち着けた。


「沙穂は結婚して家を出たけど、美穂さんのことは旦那さんと一緒に支えてるようで、

 時々しんどくなって吐き出してくんだよね。むしろその方がいいし。蓮には絶対言え

 ないしね・・・」

「美穂さん・・・入院はもうしなくなったのかな?」

「この5年ぐらいの間に1,2回はしてるみたいね。でも蓮と会ってた頃のようにひ

 どい状態はないらしいよ。だから今回・・・久々じゃないかな?余程沙穂がパニく

 ったんじゃないの?」

「出産はまだ先だよな?」

「うん・・・破水とかしたのかな?心配だよ」

「・・・・」


麻美は茫然と皆の会話を聞いていた。まるで突然降ってきた雨のように蓮の過去が降

り注ぐ。そして雨は止むことなく麻美の頭の中で降り続ける。皆は友達の心配をして

いるのだろう。でも麻美は違う。”美穂”という名にビクビクしている。


「大丈夫かなぁ・・・蓮が引き金にならないかな・・・あぁ、まさかこんなことにな

 るなんて。蓮と関わらせたくなかったのに」


昌は”あ″〜〜〜〜〜〜っ”と脱力するように頭を抱えると、嘆きの声を上げた。


「昌、まだ体調悪いのか?」

「!!」


背後から聞こえた声に、全員勢いよく振り向いた。


「れ・・・蓮??」

「なんだよ」


何事もなかったようにリビングに現れてソファーに座る蓮を皆、唖然と見つめた。

昌はハっとすると焦ったように言葉を発した。


「でっ電話終わったの??」

「うん。大丈夫だったよ。あいつ良くなったんだな」


蓮は淡々と言い放つと、飲みかけのコーヒーを飲み干した。


「蓮〜〜〜〜っサンキュ!!うわぁぁ〜〜〜ん」


思わず昌が泣きつくと、緊迫していた空気が一気に変わってほわっと温かい空気が流れ

込むように皆の表情が緩んだ。そんな中、蓮は戸惑った表情のまま変わらない麻美に気

づくとピンッと額を指ぱっちんした。


「いたっ!」

「ははっ・・・何深刻な顔してんだよ。ほら、ケーキまだ余ってんぞ」

「た・・・食べないよ。太るでしょ」

「太ったっていいのに」

「やだっ・・・蓮に嫌われたくないもん」

「嫌わないって・・・ってゆーか、人前でそんなこと堂々と言うなよ」

「だって・・・本音だから」


すると、麻美は今まで堪えていた気持ちがあふれるように泣き始めた。


「また・・・・」

「ごめん・・・うぅっ・・・」


(うぅ・・止められないっ)


私はこんなに泣き虫だっただろうか・・・。蓮に見つめられるといつも泣けてくる。

人前だっていうのに、こんなに感情が揺さぶられてしまう。

私は自分で思うよりもずっと動揺していたのだと蓮に会って気づいた。


蓮は麻美を隠すように包み込むと、麻美の手を取りさっと立ち上った。


「悪い、ちょっと向こうの部屋借りるわ」

「ごゆっくり〜〜〜♪」

「うっさい」


蓮は昌にからかわれて冷たくあしらうと、麻美を連れて行った。その姿を見て昌はウッ

トリした表情でほわっとため息をついた。


「そっか・・・もう完全に立ち直ったんだねぇ。蓮」

「ほんと・・・マジ良かった」


田口夫婦は感慨深く二人の姿を眺めていた。そして昌は爽子の方を向いて言った。


「麻美ちゃん、最初はクールだと思ってたけどそうでもないじゃん。かわいいね。電話

 の間不安だったんだろうねぇ」

「うん・・・麻美ちゃんはとってもいい人で、本当に蓮さんのこと好きなんだと思う」

「そっかぁ〜〜このままゴールインするといいねぇ!」

「・・・・・」


張りつめた空気が一気に消えて、和やかムードに戻った。翔太は一連の出来事を見て

いてやっぱり蓮はすごいと思った。それと同時に蓮の情の深さを知る。しかしその情

の深さが幸福から遠ざけているような気がした。


翔太はまだ素直に喜べなかった。蓮は過去を引きずってはいない。だが、麻美が蓮の

ことを想うように、蓮は麻美を想えているのだろうか?情ではなく・・・。


ずっと翔太の心の中では蓮を信じきれない気持ちがあった。


”簡単に言ってくれるなよ・・・”


翔太はそっと目を閉じて、あの夜の蓮の姿を思い浮かべた。






「Once in a blue moon」26 へ


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いつも拍手をありがとうございます。過去の話に拍手を下さった方、いつも気づか
ずすみませんっ。嬉しいです。良かったら感想下さいね♪











あとがき↓

すっかり更新が遅くなってすみません。この話も25話。次はこの話をこのまま続ける
かな・・・リレー小説も書かなきゃなと思ってるのですが、”書かなきゃ”と思っている
時はまず書けません(;´д`)トホホ… ま、いつも通り萌えのままに・・・。
ところでキミトドに関係ないのですが、フィギュアの国別対抗見に行きました。高橋く
んすごかったですっ!!実は大ファン。彼は本当にいい人だし選ばれた人だと思います。
このサイトに遊びに来て下さる方の中にも大輔ファンはいるかなぁ・・・?