「Once in a blue moon」(65)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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☆ ついに決裂した蓮と麻美。その夜蓮は麻美の心を開くことが出来なかった。その朝・・・



















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 65 ‥…━━━☆



















* *


夜中に降った雨が仙台の街のところどころに水たまりや木々や葉に滴を残していた。

今朝はすっかり雨が上がり、太陽の光が滴にきれいに反射している。

この日朝一番、蓮を心配した風早一家がホテルを訪ねた。爽子は昨日早く帰った麻美

のことも気がかりでやってきたのだが・・・。


「え??瀬戸さんが帰った!?」


翔太はホテルのロビーで素っ頓狂な声を上げた。


「ちょっと蓮、なんで瀬戸さん帰ったんだよ?」


すると蓮はポリッと頭を掻いて気まずそうに言った。


「まぁ・・・ちとケンカしちゃってさ」

「えぇ?この仙台でなんで・・・」


お茶を飲みながら淡々と話す蓮に翔太は訝しげな視線を送る。昨日違う部屋で泊まっ
た蓮が朝方麻美を訪ねると、すでに麻美はチェックアウトしていた。フロントに預け
られたメモには”先に帰ります”とあった。


「翔太だって分かんだろ?ほんと大したことないことでケンカするもんだろが。男と

 女ってさ」

「ケンカなんかしないよな〜〜爽子」

「しょーもないヤキモチばっか妬くくせに」

「////ーっさい」


蓮はいつも通りのからかい口調で言うと「な〜!」と結月を膝に抱いた。結月と楽し

そうに遊んでいる蓮の後ろで眉を寄せて心配そうな爽子。そんな爽子に気付くと、蓮

は優しい目を向けて言った。


「大丈夫。帰ったらちゃんと仲直りするから」

「あ・・・うん」


爽子はぎこちなくコクンと頷いた。


「じゃ、蓮帰るの?」

「えっ・・いや、冷却期間が必要だと思うからもう少しここ居ようかな・・と」


蓮は翔太の鋭い視線をひょいとよけた。翔太は軽くため息をつくと、それ以上何も言

わなかった。結局二人の問題なのだ。


「ところで、蓮、残念だったな・・・同僚の人」

「・・ああ」


そのことを聞くと蓮の表情が曇った。蓮にとってはかなりつらい出来事だったのだと

言う事が分かる。膝に抱いでいる結月がじっと自分を見ていることに気付いた蓮は、

にっこりと微笑み、話題を変えた。


「ところで、今日はどんな予定だっけ?」

「爽子とゆづは秋山さん家に行くんだろ?」

「うん。赤ちゃんとゆっくり遊びたいなって。昌さんは残念ながら仕事なんだけど」

「へぇ」


別行動らしい翔太と爽子を蓮は意外そうに見つめる。その視線に気付いた翔太は少し

拗ねたような表情で言った。やはり別行動には理由があった。


「仙台支部ん時の同僚がさ、ほら〇〇さん達!と久々に飲もうということになって・・・

 あ、蓮も一緒に行く?」

「だって俺あんま知らねーもん。その人たち。そっか〜〜んじゃ、楽しんで。たまに

 はいいよな〜〜ゆづ。父ちゃんいつもべったりだもんなぁ。母ちゃんに」

「蓮〜〜〜っ!!」


わはは〜〜っ


くわっと翔太が噛みつくように叫ぶと結月がケラケラ笑った。元気な様子の蓮に翔太

も爽子もホッとする。


「蓮は?」

「あ、実家でも見てくるわ。空家になっていないかさ」

「・・・」


軽く笑い話のように言う蓮に翔太も爽子も何も言えなかった。決して幸せとは言えな

い蓮の生い立ち。滲み出る孤独感は染みついて一生取れないものなのだろうか?幸せ

になって欲しいと願う翔太の想いに反して、幸運の女神は蓮に試練を与える。今にも

崩れそうになっている蓮の足元に翔太は気付けなかった。


* *


「ふぅ・・・」


風早家が帰った後、蓮は一人でホテルに佇んでいた。翔太達にはああ言ったものの、

実家に帰っても誰もいないことが分かっている。でもまだ北海道に帰る気にならなか

った。麻美を追いかけなければと頭では思っていても体が鉛のように動かない。妙に

身体が重かった。


やっぱり・・・一人でいるべきだった。


最後にいつも考えがそこに行きつく。結局、誰一人幸せになんかできない。葛西さん

の葬式に行った時、何度も重なった美穂の残像。一つ間違えば美穂も・・・そんなこ

とを考えると、自分が幸せになる権利なんてこれっぽっちもないと思う。


”『蓮には幸せになって欲しんだよ・・・』”


翔太はそう言ってくれる。でも幸せになる権利なんて遠い昔に失ったような気がして

いる。望んではいけないことなんだ。

俺は麻美と幸せになりたかったのか?いや・・・ただ一緒に居たかった。自分の信じ

ていることに真っ直ぐ突き進む、麻美に憧れていたのかもしれない。俺とは正反対だ

った。そしてこんな俺を好きだと言ってくれる。その気持ちに応えたかったのかもし

れない。でも半ば諦めてる自分もいる。麻美を傷つけた俺に麻美の側に居る権利なん

かない。いや・・・全部逃げだ。


”『ねぇ、蓮はまた同じことを繰り返すの?』

 『蓮が私のことを好きじゃないことは知ってたわ。ただ責任感で私の側にいたこと』”


(サイテーだな・・・)


美穂・・・俺は救いを麻美に求めたのかもしれない。抱えきれない背徳に目を背ける

ために。俺は人を傷つけることしかできない・・・。


蓮は暗い部屋の隅で何もせずにしゃがみ、滅多に吸わない煙草を無心で吸っていた。

外が暗くなってきたのを感じて、腕時計を見ると時刻は17時を指していた。

いつの間にかこんなに時間が経過していたことに驚く。


「また、雨が降るか・・・天気変わりやすいな」


立ち上がってカーテンを開けようとした時、蓮の足元がぐらついた。


(・・・えっ・・?)


俺はそのまま意識が遠のいていくのを感じた。





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あとがき↓

お久し振りです・・・。書く書く詐欺のsawaloveです(;;;´Д`)ゝある程度書いてから
と思っていたのですがもうUPしていきます。いつになるか分からないのでモチベ上げる
ためにもとりあえず上げます。暗い暗い蓮の過去に入っていきます。こんな暗いところ
でSTOPしていたのね。自分で書いておきながら嫌になるわな〜と読み返して思いました。
まぁぼちぼち書きます。完結頑張ります!!って誰にも読んでもらえないかも(笑)