「Once in a blue moon」(22)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 の続きです。  


☆ 昌と光平が風早家に遊びに来た。”彼女”と蓮に紹介された麻美は喜ぶが、楽しい時間
を皆と過ごす中、少しの違和感を感じ・・・?




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 22 ‥…━━━☆



















この隙間はなんだろう・・・?


私は周りが気にならない人間だった。それなのになぜこんなに自分に違和感を感じて

いるのだろう。私は私だと思いながらも二組のカップルを見ていると何だか焦ってい

る自分がいる。


” 私だけが違う ”


心のどこかで感じている。この違和感を言葉にするのは難しい。ただ・・そう思った。

そして段々と自然に笑えなくなる。


「−ちゃん、麻美ちゃん?」

「え?」


気付いたら、爽子さんが私の顔を覗き込んでいた。片付けの手が止まってぼーっとし

ていたようだ。


(っ・・・ちゃんとしなきゃ)


「ごめんっ・・・これ、私するね」

「麻美ちゃん、あの差し出がましいようだけど、気分が悪い?」

「え?」


爽子さんが心配そうに遠慮気味に言うと、昌さんも身を乗り出す。思わず恥ずかしく

なった。でも爽子さんの真剣な目に少し気が緩む。


「あっごめん、違うの。なんか二人見てると自然で羨ましくなって・・・」

「誰が?」

「昌さんと爽子さんカップル?」


私が取り繕うように言うと、二人はきょとんっとした顔で動作が止まる。そして昌さん

が驚いたような顔をした後、ゲラゲラと笑い出した。私は唖然・・となる。


「え〜〜〜!!そんなこと思ってたの?あはは〜〜そんなの当然じゃない?だって麻美

 ちゃんは付き合って半年も経たないんだよね?私なんかもう何年の付き合いだと思う?」

「あ・・・中学の頃からでしたっけ?」

「そ〜〜だよっ。これで自然に出来ない方が怖いわ」


そう言って昌さんはまた大笑いした。爽子さんは何も言わずに見守っている。

確かに二人には歴史がある。でも何だろう・・・違う気がする。その違和感は説明でき

ない。特に爽子さんと風早さん・・・。


「こっちこそ羨ましいよ。初々しい時期じゃん。私なんか夫婦になってから馴れ合いに

 なった部分も多くってさぁ・・・」


そう言いながらも幸せそうな昌を見て、爽子は嬉しそうに微笑みを浮かべた。


「幸せそう・・・だね」

「まっね。爽子ちゃんには負けるけど」

「そ、そんなことないよっ。二人の結婚式・・・・素敵だったなぁ」

「ふふっいろいろありがとっ爽子ちゃん」


昌さんと爽子さんはお互い嬉しそうに笑う。この人も爽子さんを理解できている人な

んだなぁ〜と思った。二人の遠恋をずっと見守っていたんだろうな。


「あの、昌さんは中学の頃から光平さんと付き合ってるんですか?」

「ううん・・・全然。ずっと私の片思いだった」

「え?そうなんですか?」


すると昌さんは少し表情を暗くした後、にっこりと私に笑いかけるとこそっと耳元で

とんでもないことを言った。その行動に唖然とする。


”「実はさぁ・・・彼、爽子ちゃんが好きだったんだよ」”

「・・・・」


一瞬理解が出来ずに頭で??が飛び交った。


「突然ごめん・・・でも麻美ちゃんってこれから蓮と深くなっていくだろうし、どう

 せ知ることになるのかなぁと思ったから」

「・・・・・」


(えっと・・ちょっと待って。今なんて言った?)


どくんっ


心臓がバクバクといきなり爆音を鳴らし始めた。

ちらっとダイニングテーブルでカップを並べている爽子さんを見る。


(・・・聞こえてなかった?)


「いろいろあったけどさぁ〜今はみんな幸せだからさっ!」

「・・・・」


そう言って、わだかまりが全くない顔で昌さんは笑った。

全て過ぎ去った過去だから言えるのだろう。この間、二人で料理を作っている時に私

が聞いた質問に爽子さんが思い浮かべた人は光平さんだったんだ・・・。

私はもっと聞きたかったがこの状況では聞けるわけもなく、また突然今までいかにも

まともそうに見えた昌さんがふらつき始めた。その様子をすぐに察知した爽子さんが

慌てて昌さんの側に寄り添う。


「わっ昌さん、ちょっと横になった方が・・・・」

「へ〜き、へ〜〜きだってば。うう”っ」

「あわわ〜やっぱり・・・っ」


どうも昌さんはいつもの状態ではないらしい。気持が悪くなったみたいで、トイレに

駆け込んだ。爽子さんは昌さんを必死で介抱している。


バタバタバタッッ


どきっ


「ちょっと、昌、何やってんだよ」


騒ぎを聞きつけてダイニングに来た光平さんに再び心臓が大きく動く。


「あっ田口くん。ちょっと昌さん気分が悪いみたいなので、ベッドまで連れていって

 もらえるかな?」

「マジで?お前、テンション上がりすぎなんだよ。ごめんな、黒沼さん。コイツ昨日

 から初めて二人の家に行けるってはりきりすぎてさ」

「ううんっ私も楽しみにしてたから・・・」

「らいじょーぶだよっ!!ばかっ光平」


光平さんは昌さんをすくっと持ち上げて寝室に連れて行く。私は思わず、光平さんと

爽子さんを交互にちらちら見てしまう。そして頭の中で悶々と思考をかき巡らす。


(・・・ということはですよ)


昌さんはずっと光平さんが好きで、光平さんは爽子さんが好きで・・・。


”『・・・何もないカップルなんてないだろう。二人は遠恋だったしさ』”


(ええぇぇ〜〜もしかして・・・めちゃやばい三角関係じゃん??)


心臓がものすごい速さで脈打っていた。偶然知ってしまった爽子さんの過去に異様な

ほどドキドキしている。そして光平さんの顔を自然に見れなくなってしまった。爽子

さんは寝室から帰ってくると、心配そうに作業の続きを始めた。私は横に立ってちら

っと爽子さんを伺いながら話す。


「ねぇ爽子さん、昌さん・・・大丈夫?」

「かな?田口くんがいるから大丈夫だと思うけど・・・」

「昌さん、酔ってたの?」

「うん、そーみたい。全然気が付かなかったね。いつも元気だから」

「・・・・」


酔って漏らしたということは潜在意識に残っているということだ。


爽子さんは何も言わない。自分のことを話さない。

私は心の中に、驚きと同時に寂しい気持ちが広がった。自分はまだ言うに足らない

存在なのか・・・と。


「あ!昌さん大丈夫?」

「うん、少し寝たら大丈夫だと思う。心配掛けてごめんな」


光平は寝室から出てきてリビングのソファーに腰かけながら言った。爽子はホッとし

ながら軽く首を横に振った。そして持っていたトレイをテーブルに置く。光平は思わ

ず目を輝かせた。蓮も甘いものが大好きで、少年のような顔で嬉しそうにケーキを見

ている。


「うわぉっすっげ〜〜〜ケーキだっ」

「おまたせしました・・・」

「昌アホだな〜〜先頂こうぜっ!」

「だなっ。うまそっ!」

「爽子のスイーツは天下一品だからさ」

「出たよ。スイーツより甘い翔太の顔。メロメロ」

「うっさい///」


あはは〜〜〜っ


昌を気にする様子もなく大はしゃぎする男性陣に爽子と麻美は思わず呆れ気味に笑った。


「さ、麻美ちゃんも食べよう」

「うんっ!」


和やかな光景をぼんやり見ていた麻美は爽子に声を掛けられると気持ちを切り替えて、

嬉しそうに蓮の隣に座った。


笑い合う蓮や風早さん、光平さん、爽子さんを見ながら、私はますます5年前に何が

あったのか気になっていった。今こんな風に笑い合っていられるのはすべてを乗り超

えたからだろう。もし複雑に絡み合っていたとしたら、こんな風に修復できるものだ

ろうか?そして、蓮はこの仲間達の間にどう絡んでいたのだろう・・・?




麻美は絶品の爽子スィーツを食べながら、様々な思考を頭の中でかき巡らしていた。







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あとがき↓

まずは麻美が過去を知るところから始まります。一体何話になるんだろう・・・? 

ところで「僕等がいた」も私は好きなのですが、映画になりましたね。評判はどう

なのかな?この映画は前後半だそうで。キミトドもそうしてくれたらあんなに詰め

込まずにもう少しマシになったのかなって。