「Once in a blue moon」(21)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 の続きです。 



☆ 大好きな爽子のことをもっと知りたい麻美。そんな麻美に思いがけないチャンスが
舞い込んできて・・・?相変わらず麻美目線です。




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 21 ‥…━━━☆


















この日、いつも通り落語鑑賞会の後爽子さんの家に寄るつもりだった。しかしお茶を

している時にあることが発覚した。


「え??友達が来る?」

「あれ、蓮さんから聞いてないかな?」


ゆづちゃんと同じ顔で私を不思議そうに見る爽子さん。どうも今夜、仙台から風早さん

達の友達が来るらしい。そして彼らは川嶋蓮の長年の友人らしい。


「聞いてないよっ。そんなだめじゃん。私帰るよ」

「えっ?大丈夫だよ。蓮さんもそのつもりだと思うよ」

「でも・・・」


私を紹介するはずなんてない。過去を知られるのも嫌なんだし。

思わず表情を曇らせた私の気持ちを察するように、爽子さんは言葉を添える。


「きっと・・・蓮さんも機会を待ってたんじゃないかな」

「え?」

「大切な人たちにはちゃんと言いたかっただろうし・・・」


爽子さんはいつも私たちを応援してくれている。不安になったらそっと背中を押して

くれる。そしてもう一人・・・・。

麻美はくいっと後ろからスカートを引っ張られる。


「ゆづっち?」


後ろを向くと、結月がスカートをくいくいっと引っ張ってドアを指さしていた。帰ろ

うと言っているらしい。


「う、うん。でも・・・川嶋蓮にメールさせて」

「うん」


そう言うと、爽子さんとゆづちゃんはにっこりと同じ顔で笑っている。


(あぁ・・・和むわ)


それから蓮にメールすると、休憩中だったらしくすぐに返事が来た。”言うの忘れてた”

と何てことない感じだった。蓮にとっては私が行っても行かなくてもどちらでも取る

に足らないことなのかと思うと、少し腹が立っていたけど・・・。



* * *



「こいつ、俺の彼女」


(えぇっ・・・・!!)


友人達に会ってすぐ、私をそんな風に紹介してくれた。一気にテンションが上がる。

やっぱりそのつもりだったのだと先ほど腹を立てたことが恥ずかしくなった。


(やばいっ・・・顔が緩む)


「せ・・瀬戸麻美です」

「私、田口昌、これ、旦那の光平よろしく〜〜〜!」

「よろしく・・お願いします」

「やだぁ〜〜〜蓮ったら聞いてないし!!ねぇ光平」

「うん・・・聞いてない」


(やっぱり・・・)


昌さんという人は興奮した様子でいろいろ話してくれる。どうも二人は夫婦で、光平

さんという人が川嶋蓮の幼馴染で昌さんは中学の同級生らしい。話の流れから他に二

人仲間がいるようで、風早さんは5年前まで仙台にいたので、そこでみんなと知り合

ったとか。とにかくこの人たちと蓮は長い付き合いというのだけは分かった。私はま

た一つ蓮を知れたようで嬉しかった。


食事の時間になり、風早一家、蓮カップル、光平カップルと総勢7人で食卓を囲む。


「うわわっ〜〜〜すっごい料理!やばいねっ光平!」

「うん。やっぱ黒沼さんって料理上手いんだな」

「ゆづちゃんもお母さんのご飯大好きでしょ?いいなぁ」


昌に言われて、さきほどから大人しい結月がにこっと笑った。でもその笑顔がどこか

ぎこちない。


(ゆづっち、いつもと違う?)


わいわい、がやがや


爽子さんの料理を囲んで皆、目を輝かす。確かに今夜はいつもに増してすごい。


「だからぁ・・・風早よ。睨むなっつーの」

「別に睨んでねーし」

「あはは〜〜〜っ相変わらずだねぇ」

「?」


光平さんと風早さんの会話が今一つ見えなかったが、皆楽しそうに笑っている。蓮も

風早さんも爽子さんもとっても嬉しそう。気を許せる人たちなんだと思った。


「しっかし、蓮もやるよねぇ〜こんな美人捕まえるなんて」

「だよな、北海道に転勤して良かったじゃん」

「そうだな」

「////」


光平さんたちに言われると、蓮はにやっとして私を見る。人の前でこんな風に肯定さ

れることはないから焦る。いつもと違う様子の川嶋蓮に私は少し戸惑いながらも胸の

どきどきが止まらなかった。


「・・・あの?」


麻美は先ほどから昌の視線を強く感じていた。そして今度はいかにもじっと見られ思

わず問いかけた。すると、昌は突然麻美の肩を掴み、号泣し始める。


「わっ!」

「うわぁぁ〜〜〜ん、良かったよぉ。麻美ちゃんよろしくね。蓮のこと」

「昌・・・飲み過ぎだろ」

「だって嬉しいじゃん、光平っ!そうでしょ。光平も」

「まぁ・・・な」


光平がちらっと蓮を見ると、蓮は穏やかな顔で頷いた。


「・・・蓮、変わったな」

「そうか?一緒だけど」

「変わったよな!風早」

「ははっそうかも。何せ今はかわいい彼女がいるしな〜」


風早の言葉を聞いて、昌は目を輝かせる。


「そっかぁ〜〜蓮、今は一人暮らしでもご飯作ってくれる彼女出来たんだぁ〜」


うっとりした顔で嬉しそうに言う昌の言葉に一瞬沈黙が走った。


しぃ〜〜〜〜〜ん


「ん?」


どっくん


麻美は言い返せなかった。黙り込む麻美の様子を見て、爽子が立ち上がった。


「あのっ、良かったらデザートがありますので、リビングで寛いでいてください」

「あ・・・そうだな。みんな、リビングにどうぞ」

「やったぁ〜〜〜!!爽子ちゃんのデザートかなり期待っ!」

「あ、私手伝います」

「私も〜〜〜!それじゃ男性陣はリビングに移動して。ここ片付けるから」

「じゃ、今回はおまかせしよう。爽子ごちそーさん!美味しかった」

「黒沼さん、ごちそうさま」

「ごっそーさん。ゆづおいで。あっちで遊ぼ」


爽子の言葉で元の空気に戻って、男性陣はそれぞれ爽子に礼を言ってリビングに去って

行き、女性陣はキッチンにそのまま残る。結月も蓮に誘われると、やっといつもの笑顔

で蓮のもとへ走って行った。

麻美は思わずふぅっと息をついた。


どくん、どくん


まだ心臓の音が煩い。実はずっと見ないでいたこと。私はまだ川嶋蓮の家には入れて

もらっていない。そこに何かあるのか・・・と考えたこともあるけど、そうではない

のかもしれない。でも素の蓮がそこにあるような気がした。だから来て欲しくないん

じゃないかと。いつも泊まりはホテルだった。


私は吹っ切るように笑顔を作って、爽子さんの手伝いをした。何があっても私は蓮か

ら離れたくない。そう決めたのだから。


昌さんはとてもフレンドリーで私が疎外感を感じないようにと沢山話し掛けてくれる。

川嶋蓮の友人はいい人ばかりだった。人見知りの私も爽子さんがいるし、段々と馴染

んできて楽しい時間を過ごせるようになってきた。


わははっ〜〜〜


笑い声がこだまする。

蓮の大切な人たちに会えたのが嬉しい。蓮の彼女として紹介されたのが嬉しい。仲間

に入れてもらえるのが嬉しい。



でも・・・私はずっと、心のどこかに隙間を感じずにはいられなかった。






「Once in a blue moon」 22 へ














あとがき↓

ずっと麻美目線が続きます。蓮視点がなかなか書けないですが、一山超えたら出して
いく予定です。最初の頃にあった蓮の思いもはっきりさせていく予定。・・・ですが
上手く書けるかな!?とりあえず5話ぐらい進めたいと思ってます。
さて、桜満開ですね〜〜〜〜皆様、花見に行かれましたか?この季節ならではのこと
をいっぱい楽しみたいですね!