「永遠の片思い」(1) 

好きな妄想投票箱 第一位 ”新婚SWEET爽風”
のテーマで書いてみたのですが。3回ぐらいになると思います。あくまで妄想なので
あしからず♪興味ある方は以下からどうぞ。


夫翔太の出張中に爽子は夢を見た。しかしその夢に悩まされることになり・・・・・?
爽子目線で進んでいきます。








































「ん・・・・翔太っ・・・外だからっ」

「いーから、ほらっ」

「んんっ・・・・ふふっ・・・あんっ」


(え・・・・?)


私は目の前の光景に身体を硬直させた。まったく動けなかった。翔太くんとミニスカ

ートを履いたきれいな女の人が濃厚なキスをしていた。そして、翔太くんはキスをし

ながらちらっとこちらを見た。


(・・・・!!)


そして、にやっと笑った。


(く・・・苦しいっっ)


こんなに苦しいことが今まであっただろうか。胸の奥がじりじりと痛む。必死で声を

出そうと思っても声が出なかった。翔太くんは冷たい目で笑うと、女の人と一緒に去

っていく。


どうして行っちゃうの?


待って・・・・待って・・・翔太くん・・・待ってっ!!


「って・・・待ってっ・・・」


がばっ


爽子の全身は汗と涙で濡れていた。胸の鼓動は激しく、まるで運動をした後のように

息が荒い。


「はぁはぁ・・・・っ」


きょろきょろっと慌てたように周りを見渡す。


「え・・・・」


爽子は広いベッドの上で、ぼーっと考える。し〜んとした部屋。そしていつもの風景。


「ゆ・・・夢!?」


しかし、今も胸が痛い。なんて生々しい夢だったのだろう。そして頬を伝う涙は今も

流れ続けていた。爽子は胸をぎゅっと掴むと、たまらず声を出して泣き出した。


「うぅぅ〜〜〜〜っ・・・しょったくん・・・・っ」


結婚して半年、夫の風早翔太は初めての出張のため家を空けた。寂しいが、今までも

遠距離恋愛をしていたのだ。一人の生活は慣れていた。しかし、不思議だった。いつ

もよりダブルベッドが広く感じた。


そして、夢・・・・・。爽子の中にはどんどん不安が広がっていく。いつもは前向き

な爽子もなぜか今回は深く根付いた暗雲を取り除くことができなかった。


そうこうしているうちに2泊3日の出張を終えて、翔太が嬉しそうに帰宅した。


「たっだいま〜〜〜〜爽子っ♪」

「お、おかえりなさい・・・」

「爽子だっ!!」


翔太は爽子を見た瞬間、待ちきれないとばかりにがばっと抱きつく。


「きゃっ!!」


ところが、爽子は咄嗟に翔太の身体を交わしてしまう。


「え・・・・・」


翔太は真面目な顔になり、宙に浮いた手を硬直させた。爽子はハッとして真っ青にな

り、あわあわと狼狽えた。


「ち、違うの・・・あ〜〜〜あのっ、お腹空いたかな?お風呂も沸いているよ」

「うん・・・・じゃ、風呂入ろうかな」

「タオルとか用意するねっ」


ばたばたばたっ


背中に翔太くんの視線を感じる。ど・・・どうしよう。普通に出来なくなってしまった。

あの時の翔太くんの目が脳裏から離れない。夢だって分かっているのに。


* * *


「え・・・・っ」

「あ、あのね、今生理中で・・・・」

「そ、そっか・・・・じゃ仕方ないよな」

「ごめんね」


翔太くんが帰ってきて広いベッドが温もりにいっぱいになったのに。寂しくて仕方が

なかったのに、身体を求められて嬉しいはずなのに・・・・どうしても応えられなか

った。ぎこちなくなるとどんどん普通にできなくなっていく。


「じゃ、爽子を抱きしめて寝るっ」

「わわっ」


翔太はにっこり笑うと、爽子を自分の胸の中に包み込む。いつもより手の力が強く感

じた。全ての不安を拭おうとするような仕草に爽子は胸の奥がずきんっと痛む。


(きっと・・・・翔太くんも何か気づいているんだ)


いつものように応えられなくて、腕の中で固くなっている私に翔太くんは何も言わな

かった。微妙な空気が流れる中、翔太くんは眠ってしまった。


翔太くんは変わらない。ずっと温かく私を守ってくれる。でも、いつまでも好きでい

てもらえるのだろうか?もし、夢のように翔太くんが去ってしまったら、私はどうな

っていくのだろう・・・・?


爽子は、現実か夢か分からない心の奥にずっとあった不安が結婚半年目にして表に出

始めたのであった。


* * *


あれから風早家は・・・・


ある日、日用品を二人で買いに行った時の一コマ


「爽子、荷物俺が持つよ」

「あっ・・・大丈夫重くないのでっ」

「・・・・そう?・・・うん」


またある日、家の中で爽子が家事をしていた時の一コマ


「爽子、俺が風呂洗うよ」

「えっ・・・ううん、大丈夫。もう終わってるので」

「あ・・・そうなんだ」


またまたある日、戸棚の整理してた爽子が背伸びをしていた時の一コマ


「爽子、上段は俺にまかせてっ」

「あっ・・・・大丈夫っ。私の仕事なので」

「・・・・分かった」


(・・・どうしよう感じ悪い)


どんどん普通にできなくなっていく。以前どう接していたかも分からなくなった。今

や翔太くんの顔もまともに見られない。


爽子はある日、鏡を見てあまりの形相に驚嘆する。”これは怖すぎる・・・”と。そし

てさらに不安が広がる。


(こんな顔では翔太くんに嫌われてしまうっ・・・・)


そして翔太もまたいつもと違った。

いつもストレートな翔太は、こういうことがあると必ず爽子に直接聞いていた。しか

し爽子のそっけない態度に何も言わない。ただ視線を逸らすだけ。そんな翔太の態度

にも不安になり、どんどん関係が悪化していた。今や、周囲の者が見ても分かるほど、

二人の関係はぎこちなかった。


そんな状態が続いたある日、夕食を終えてソファーに座っていた翔太はすくっと突然

立ち上がった。


「ちょっと出掛けるね」

「え・・・と・・・どこに?」

「飲み行ってくる」

「え・・・・?今から」

「うん。じゃ」

「え??・・・あっ・・・・」


ばたんっ


翔太は爽子を見ずに背を向けて去って行った。


(翔太くん・・・怒っている。怒らせてしまった)


ずきんっ


爽子はあの夢を思い出す。まさにデジャブだった。引き留めようと思ってもうまく言

葉が出ずに、力をなくした手は行き場がなく宙を彷徨った。


「うっ・・・・ひっく・・・くっ」


爽子はその場にしゃがみこむと、身体を震わして嗚咽し始めた。

もうどうすればいいのか分からなかった。変な態度をしたのは自分。翔太は怒って当

然なのだ。どうしてこんなに不安になってしまったのか・・・?


高校の時から付き合っている翔太くんは私とは正反対でみんなに人気者で・・・。

そんな翔太くんに憧れ、どんどん好きになっていく。結婚してからもその気持ちは全

く変わらなくて。だけど、好きになればなるほど広がっていく独占欲。あの夢は自分

の不安そのものだった。


原因は分かっていた。しかし、そのことに向き合うことが怖かったのだ。


その夜、爽子は留めなく流れる涙を止めることができずに、その場に座り込んでいた。




<つづく>




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あとがき↓

SWEETのはずが・・・?って。でもそんなに暗雲が立ち込める感じでもないのでご安
心を。なにせ好きな妄想企画だし。よければ最後までお付き合いください。すでに読ん
で頂いている方はごめんなさいね。