「長い夜」

ラブラブ新婚中に翔太の出張。一人ぼっちの爽子は不安になり・・・?
爽子の心情ヤキモキ話。よければ以下からどうぞ↓























し〜〜〜ん


「アレ?こんなに部屋って広かったっけ・・・?」


最近私はおかしい。結婚してから欲張りになっているみたい。
翔太くんが側にいるのが当たり前になってしまっている。だから、いない時は不安
になってしまう。


「さて、夕飯の用意しよっ!」


そう思って立ち上がったものの、すぐに時計を見ている。


カチカチカチ


時計の音だけがリアルに部屋に響く。まだ翔太くんが出張に出て3時間しか経ってい
ないというのにものすごく長い時間が経過したような気がする。


「はぁ・・・」


自然についてしまうため息。
本当に私はいつのまにこんなに欲張りになってしまったのだろう。
翔太くんが帰って来ないと思うと、こんなに不安になるなんて・・・
あの広い胸や大きな手、男らしい腕に触れたくて仕方がないなんて・・・


(え・・・触れたい??)


「あ”ぁぁぁ〜〜〜っ///」


(きゃぁぁ私って何考えてるの!!)


今日何度目かの雄叫び。こんな姿翔太くんに見られたくない。何だかひとり言も多い。
一人で夕飯を作って食べて、テレビを見たり、翔太くんのセーターを編んだりしなが
らなんとか夜までやって来た。時計を見ないようにしながら。


「あはは・・・」


お笑い番組で笑ってみる。いつも翔太くんと見ている番組。二人で大笑いをしている
番組。いつも通り面白いのに、なぜ心から笑えないのだろう。一人の食事もなんでい
つも通り美味しくないんだろう。


ザーザー


「え・・・雨?」


がらっ


窓を開けると、いきなり大雨が降り出していた。そう言えば、今夜から天気が荒れる
とニュースで言っていたような気がする。天気は必ず毎日チェックしているのだが、
今日はそれもしていない。というか、テレビを見ているのにちゃんと見ていなかった。
そんな自分に自己嫌悪・・・。


(何してるの私っ・・・!)


ピカッゴロゴロ〜〜ッ


「きゃっ」


雷も鳴りだし、嵐のように風も強くなってきた。


「わわっ雨戸しめなきゃ」


私はバタバタと動きながら、家中の雨戸を閉めた。


バタンッ


「ふーっ終わった」


プッツン


「え・・・」


テレビの電波が切れた。部屋中が真っ暗になる。


「て、停電・・・」


こんなの平気。じっとしていたらそのうち電気がつくし、テレビもつく。雨戸で風や
雨の音もましになった。


(大丈夫・・・大丈夫)


がたっがたっ


風が雨戸を揺らす。私は自然に身体を強張らせ小さくなって固まっていた。


がたんっ


(大丈夫・・・だい・・っ)


ぴかっ


「ひゃっ!!」


思わず耳を抑える。一人の部屋がこんなに怖いなんて思ってもみなかった。そして、
翔太くんの存在がどれだけ私に安心を与えてくれていたかを実感する。


がちゃっばたんっ


ものすごい風でドアが開いたような音がした。でも真っ暗で怖くて閉めに行くことも
できなかった。何て弱くなったんだろう。


(こんな私じゃきっと翔太くんイヤになるよっ!)


「こんなことで泣かないっ・・うぅぅ」


でも涙が止まらない。翔太くんは出張先で大丈夫かな?お仕事してるのに電話する
のも迷惑だ。こんなことで心配させたくない。それに今は電波も途絶えているはず。
私は心の中で翔太くんの笑顔を思い浮かべた。


「翔太くん・・・っ」


その時だった。背中に温かいものを感じた。私はあまりの恐怖で声が出なかった。


「ーはい!」


(・・・え?)


「爽子、怖かった?俺だよ。タクシー飛ばしてきた」


カチッ


小さなライトに照らされたのは・・・?


「やっぱり泣いてた」

「しょ・・・翔太・・くん?」


(・・うそ?)


「ごめん、驚かせて。真っ暗になってたからいないのかと思った。停電だったんだね。
 家に居たんなら玄関の鍵閉めとかないとだめだよ」

「ど・・うして?」


現実が夢か分からなくなった。ずっと想っていた人が側にいた。
翔太くんはいつものはにかんだ優しい笑顔でそっと私の涙を拭ってくれる。


「仕事切り上げてきた」
「でも、泊まりだったんじゃ・・・」
「台風が近づいてるから明日帰れなくなったら嫌だし、そっこー終わらせた。皆は
 ホテルに泊まってるから残った仕事はしてくれるってさ」
「だ・・大丈夫なの?」
「だってこんな夜、爽子一人にしておけないもん」
「へ、平気だよっ」
「じゃ、どうして泣いてたの?」
「・・・っ」


ほすっ


「爽子?」


爽子は翔太の胸に身体を預けた。


「・・っ・・うぅぅ〜〜〜っ」
「うん、うん。怖ったんでしょ?」


翔太くんが私の髪を優しく撫でてくれる。ずっと触れたかった翔太くんの温かい肌。
なんて安心できるんだろう。


「ひぃっくっ・・・うわぁぁぁ〜〜んっ」


私は嗚咽して泣いていた。もう我慢できなかった。たった数時間翔太くんに触れていな
かっただけなのに。たった一泊の出張なのに。


「本当はねっ・・・ひっく、風や雨よりも・・くっうぅ・・・しょうたくんが、いない
 ことが怖かったの。情けないよねっ・・うぅっ・・おくさんっ・・しっかくっだっね」
「・・うん」
「!」

(呆れられたっ・・・?)


翔太くんに肯定され私はさらにどん底に落ちそうになっていた時、さらに強い力で抱き
しめられた。大きな温かい胸に。


ぎゅっ


「しょ・・しょうたっくん?」
「俺も夫失格だから。仕事しながら爽子のことばかり考えてた。爽子が怖がってないか
 と思いながらも、俺がダメだから」
「・・・ダメ?」
「爽子がいないとダメ。触れたくて触れたくて・・・ははっ禁断症状。たった一泊なの
 にな。社会人としても失格」


(翔太くんも・・・?)


心がぽかぽかになっていくのを感じた。私はこんなにも強く翔太くんを求めていた。
心も身体も・・・。


「私も・・・翔太くんに触れたかったのっ///」
「爽子・・」


小さな光で照らされた翔太くんの顔は私の大好きな笑顔だった。愛がいっぱいあふれ
た熱い眼差し。


”失格夫婦だね”と言って笑い合った。
こんなにも弱くなった私を許して。でも、翔太くんがいるから弱くも強くもなるの。


それからもう一度夕食を一緒に食べて、テレビを見て、寝る時間になっていた。
そして時計を見ると翔太くんが帰って来てからかなりの時間が経過していた。


「ふふっ不思議。あっという間に時間が経っちゃう」
「え?」


不思議そうに聞き返す翔太くんに私はにっこりと笑った。
側にある幸せを噛みしめながら・・・





<おわり>

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あとがき↓

ご無沙汰してます〜〜!どれだけサイトを開けなかったんだ?と思ったら年末で終わ
ってたんですね。突然書きたくなった。気まぐれなんで再開とかではなく、また書き
たくなったらやってきます。そう言えば今週は別マ発売じゃないですか!?早い!!
連載は全部書いてから一気にUPしようと考えているので(最後まで書くつもり〜〜!)
なかなか進まないんですね。でもその方がいいと思って。
放置ブログに訪問してくださっている方、ありがとうございます。爽風萌えは今も変
わることはないので、これからも書き続けたいとは思っています。