「はつこい」32

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。
※ 登場人物紹介は「17話」を見て下さい。


爽子は大和に会いに店に連れて行ってもらう。大和に会いたかった訳とは・・・?


こちらは 「はつこい」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 1819 2021 22
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興味のある方は以下からどうぞ↓




































「えっ??大和さんですか?」

「・・・ここではオリオンって名前があるんだからやめてくれる?」


爽子は目の前に現れたかわいい女の子に目をまん丸くする。そしてぱぁぁと顔を輝か

せた。そんな爽子に大和は顔を歪ませる。


「何?何見てんのよ」

「き・・・きれいっ」

「はぁ?」


大和は理解不能な爽子の反応に拍子抜けた様子でさらに顔を歪ませる。爽子はふーっ

と深呼吸すると、ここに来た目的を話し出した。


「あ、あのっ・・・私、大和さ、あっオリオンさんと話したくて」

「・・・・」


大和は無言のまま爽子を見つめると、それ以上何も言わずに、ママに”ちょっと店抜けさ

せて”と言って爽子についてくるように目配せした。

去っていく二人をアキと神楽は茫然と目で追う。そして神楽が焦ったように言った。


「ちょっ・・・あれ何??」

「さぁ?さっぱり分からんわ」


アキは両手の平を上に向け、分からんポーズをした。


「しっかし、爽子ちゃんってすごいわね」

「なんで?」

「だってオリオンちゃんの性癖を知っても驚かないなんて」

「そー言えばそうやな。AVであんなにひっくり返るほど驚く子がなぁ」


二人は腕を組んだまま、困惑した表情で唸っていた。



* * *



「・・・それで話って?」


店の路地裏に爽子を連れていくと、早速大和は切り出した。


「ごめんなさい・・お仕事中に。大和さんに会いたくて」

「何で?」


ぶすっとして壁にもたれながら大和が言うと、爽子は緊張気味に顔を紅潮させて、

大和に向き合った。


「わ・・・私、柏木くんにお断りしました。”風早くんが好きだから”って・・・」

「はぁ?なんでそれを僕に言うわけ?」

「えっと・・・大和さんとちゃんと向き合いたかったので」

「何、それ?」

「お、おこがましいのですが、勝手にライバルなのかなって・・・思って」

「・・・・・」


大和は一生懸命気持ちを伝えようとしている爽子を茫然と見つめる。なぜかそこに

嘘偽りを感じなかった。大和は爽子をじっと見つめながら言った。


「アンタさ・・・本気でそう思ってんの?男なのに風早を好きになってとか・・・思って

 んじゃないの」

「え・・・・」


明らかに固まっている爽子を大和は眉間にしわを寄せながら凝視する。そして固まっ

ていた爽子はハッとして驚いた顔で口をぱくぱくさせている。


「お、男の人なんですかっ!?」


しぃ〜〜〜〜〜〜ん


二人の間に風が吹き抜ける。大和は爽子が”天然記念物”とバイト仲間達から言わ

れていたことを思い出し、このドがつくほどの鈍感ぶりが翔太の気持ちに気づかない

原因だと確信するのである。


「そっか・・・そっかぁ」


爽子は密かにほっとしたように顔を緩ませた。


「何、だから安心だって言いたいの?」

「ち、違うの。あの・・・旅行に風早くんの大学の友達が来ると聞いて、まさか女の子

 だって思ってなくて・・・実はちょっと落ち込んでいました」

「・・・・・」

「そ、それにとってもきれいな人で・・・書籍部門の人が風早くんに告白する以前に大和

 さんのことが気になっていて・・・。あぁ〜〜〜私って小さいですっ!!」


頭を抱えてやたらと悶絶している爽子を大和は呆気に取られて見ていた。そして視線

を下ろすと、気持ちを誤魔化すように下の石を蹴りながら言った。


「でもさ・・・実際今は知ったわけだし、ライバルなんかじゃないって分かったでしょ」

「え??そ、そんなことないですっ。本当にきれい・・・きれいです。まるでフランス人形

 みたいでっ」

「・・・・・」


大和は手を組んで目を輝かせる爽子を見ていると、例えそれが本音でなくてもいい

と思えるほど、心が温かくなって思わず顔を緩ませる。その表情を見られないように

話題を切り替えた。


「あんたさ・・・いつから翔太が好きなのよ?」

「えっあの・・・その・・高校の時・・・」

「へ?」


爽子は頬を紅潮させながら、懐かしく思い浮かべるように夜空を仰いだ。


「高校の入学式・・・初めて会った時から恋をしていたんだと思います」


皆に人気者の翔太の姿。いつも爽やかな笑顔。楽しそうに運動している姿・・・。爽子

にとってどれも宝物のような翔太の思い出。初めての出会いは桜の中だった。あの時

からずっとあの笑顔に恋をしていた。


「・・・一目ぼれだったみたい」


気持ちを確かめるように言う爽子を見て大和は顔を歪ますと、握りしめていた手に力

を込めた。


「何よっ・・・僕だって、会った瞬間からずっと好きだった。風早が好き・・・」


爽子はぎゅっと胸に置いた手を握りしめながら、瞳を逸らさず大和に言った。


「・・・私も・・・風早くんが好き」


大和は純粋な爽子の目を茫然と見つめた。そして視線を逸らさない爽子にふっと肩

の力が抜けた。


「僕はちゃんと言ったよ。風早に気持ち伝えたよ」

「!」

「フラれたけどね・・・」


悲しげな目で言う大和を爽子は瞳を揺らして見つめた。


「今度はアンタの番じゃないの?」

「え?」

「風早に好きな子がいるから自分の気持ちが迷惑だとか、自分のことをどう思ってる

 だとか・・・そんなことばっかり気にしてるから何もできないのよ」

「・・・・」

「自分のことばっか考えてないで、風早のこと考えてあげてよっ」


爽子は大和の訴えのような言葉を聞きながら涙があふれてきた。そこには翔太への

想いがいっぱい詰まっているように思えた。そしてまるで自分を応援してくれているよ

うに感じたのだ。


「う、うんっ・・・・あ、あの」

「何?」

「大和さん・・・ありがとうっ」

「・・・・・」


大和は”礼なんて言われる筋合いない”と毒を吐こうと思っていたのだが、爽子の

笑顔に引き付けられるように何も言えなくなった。その笑顔は純粋な彼女そのもの

のように感じた。こんなに素直な笑顔があるだろうか・・・・と思った。そして風早が

彼女を好きなわけが少しだけ分かるような気がした。


大和はふーっと息を吐くと、俯いたまま小さな声で言った。


「・・・風早の好きな子、あの子じゃないって」

「え?」

「・・・ちゃんと本人に聞きなよ」


爽子はこくんっと頷くと、大和を見てもう一度微笑んだ。


二人の想いが届くまでもうすぐ・・・・。




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あとがき↓

最後まで行けそうな感じ。しかし、もっと短くまとめれそうなのにだめだなぁ。