「はつこい」33

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。
※ 登場人物紹介は「17話」を見て下さい。


大和に後押しされて翔太へ気持ちを伝えることを決心する爽子。そして、その時翔太は・・・?


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興味のある方は以下からどうぞ↓

























第8章<届け!&エピローグ>


翔太は走り続けていた。歩くこともできないほど、気持ちだけが先走っている。


「はぁはぁっ・・・」


こんな時間で常識がないとか頭を霞めたけど、今じゃないといけない気がした。


Plululu〜〜♪


『−はい』


3コールの後、彼女が出た。心臓が飛び出しそうになる。でももう逃げない。彼女に

想いを伝えたい。


「今から会えるかな・・・いや、会いたいんだっ!」



* * *


どくん、どくん


爽子は高鳴る胸を押さえながら翔太との約束場所に向かった。


”『・・・行きなよ。僕のことはいいから』”


大和と一緒に居る時にかかってきた翔太からの電話。大和は優しい口調でそう言った。

それは今までの敵対するような態度ではなく温かみを感じる。そして旅行の時のこと

を話してくれた。わざと翔太と書籍部門の女の子とのことを言って爽子を敬遠しようと

していたこと、あの夜に翔太に告白して抱きついたこと。翔太はその告白をしっかりと

受け止めてくれたこと・・・。


(・・いい人〜〜っ)


爽子は無心で走り続けた。ただ、気持ちを伝えたかった。大和が後押ししてくれた思

いを無駄にしたくなかった。その気持ちが通じるようにかかってきた翔太からの電話。


「ー黒沼っ!」

「風早くんっ」


待ち合わせのバイト先の前に爽子が見えると、翔太はさらに速度を速めて走った。


「はぁはぁ・・・っ」


翔太は身体を折り曲げると必死で息を整えた。そして真正面から向き合う。その真摯

な瞳に爽子はどくんっと心臓が鳴った。


「突然呼び出してごめん」


爽子はふるふるっと頭を横に振った。そしてぎゅっと胸に手を当てる。


「話があるんだっ。ずっと言いたくて・・・言えなかったこと」


どくんっ


爽子は翔太の真剣な瞳から視線を外せなかった。お互い真っ直ぐ見つめ合う。


「わ、私も・・・言いたいことがあるの!」

「え?」


翔太は意外な爽子の言葉に少し動揺するが、気持ちを持ち直してごくっと唾を飲み込

むと、”先に言っていい?”と爽子に断る。どうしても言いたかった。こんなに募った想い

をなぜ今まで自分の中に留めておけたんだろう・・・と思うほど、今は伝えたくて仕方が

なかった。幸せな二人に後押しされた今、伝えたい・・・。


爽子は強い意志を感じる翔太の目を見て、コクンッと頷いた。


「・・・黒沼は覚えていないかもしれないけど、高校の入学式の日、桜の木の下で

 会った。それが黒沼との一番最初の出会いだったんだ」


覚えていないはずがなかった。爽子は思わず泣きそうになるのを堪えた。


「今から思うと、その時から俺は黒沼に恋してた。一目ぼれ・・・だったんだと思う」


爽子の瞳から涙が零れ落ちる。驚いた表情で、手で口を覆った。


「ずっと見ていたんだ。廊下を歩いている時、花壇をいじっている時・・・吉田達と笑い

 合っている姿とか・・・やばっ俺、ストーカーじゃん」


翔太はそう言って恥ずかしそうに俯いた。爽子はまだ声も出せずに目を大きく見開い

たまま顔を紅潮させている。翔太はそのまま続けた。もう迷いは何もなかった。爽子

の返事が怖かった以前の翔太ではない。ただ、伝えたいと言う気持ちだけだった。


「ずっと好きだった。転校した後もずっと・・・。本当は黒沼がこのバイトに来た時、飛び

 上がりそうなぐらい嬉しかった」

「わ・・・わたしもっ」

「え・・・・?」


やっと言葉を発した爽子は感情があふれ出すように涙をぽろぽろっと流して翔太を見

つめる。二人の視線がぴったりと合った。


「黒沼の・・・話は?」


翔太は気持ちが急くように心拍数が上がっていく。もしかして?という期待が現実になる。

想いを込めるように爽子は言葉を紡いだ。


「・・・風早くんが好き・・・大好きなのっ・・・私も桜の下で会った時から・・・」

「!」


翔太は信じられないという表情で爽子を見つめたまま、茫然として動かない。そして

夢ではないと確かめるように爽子の顔を覗き込む。今までにないぐらい心臓が激しく

脈打っている。


どくん、どくん、どくんっ


「ほんとに・・・ほんと?」

「ほ、ほんとにほんと・・・」

「同じ・・・?俺と同じ恋愛感情で?」

「う、うんっれ、恋愛感情で・・・風早くんが好き」


真っ赤な顔で一生懸命気持ちを伝えてくれる爽子を見ていて、翔太は今まで押さえて

いた感情があふれ出した。感情のまま手を伸ばすと、爽子をぎゅっと抱きしめた。

でも、今度は理由なんていらない。好きだから・・・触れたいことに。


ぎゅっ


いきなり抱きしめられた爽子は恥ずかしそうに身体を硬直させるが、翔太の気持ちが

伝わってくるように強く抱きしめられると、身体の力を緩める。そしてそっと翔太の腰に

手を伸ばした。


「もっと・・・もっと強く抱きついて」

「え////?」

「だって・・・両想いなんだよね?信じらんないけどっ」

「う、うんっ///」


すると、遠慮がちに伸ばされた彼女の手に力が籠った。


温かい・・・。


夢みたいだ。でもすっぽりと俺の中に入る彼女は温かくて・・・・。夢なんかじゃない。

やっと気持ちが届いた。最初からずっと両想いだったなんて。俺たちもシンさんみたい

に回り道をしていたんだと気づいた。寄り道したり、行き止まりにぶつかったり・・・それ

でも諦められなくて。


翔太は爽子の涙を拭う。目をまん丸くさせて頬を紅潮させる彼女がたまらなく愛しか

った。本当はもっと近づきたいけど、この大切な時間をゆっくりと味わいたいんだ。

両想いというキセキを感じながら・・・。

翔太は腕の中の宝物を離さないとばかりに抱きしめた。


「わおぅ・・・見〜〜〜〜ちゃった」

「わわっ!!」


背後から声がして、二人はぱっと離れて振り返る。すると、後ろでにやにやしている

本城の姿があった。


「そっか〜〜〜やっぱなぁ。ついに両想いか・・・」

「ほ、本城さんっなんでここに??」

「え?バイトだけど」

「ま、まじっすかぁ〜〜〜??」


滅多にバイトに入らない本城が夜中のバイトに入っていた。このあまりにもレアな

偶然に翔太はくら〜〜〜〜となった。


「爽子ちゃん、こんな恋愛初心者の男でいいの?俺の方がリードしてあげるし、幸せ

 にしてあげられるのに」

「え?え?「ー本城さんっ」」


翔太に睨まれて、本城は舌をペロッと出すと、今度は魅惑の笑みを浮かべる。翔太は

その顔にどっと冷や汗が出る。


(やな予感・・・)


そして後日、翔太は爽子との待ち合わせ場所をバイト先にしたことを大変後悔する

ことになる。



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あとがき↓

次こそラストです。最後は楽しい感じでいきたいです。しかし・・100万アクセス企画

をするまでに到達しそうで焦ってますっ!いやぁメディアの影響は怖いっ大分落ち着

きましたが。