「はつこい」27

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。
※ 登場人物紹介は「17話」を見て下さい。


翔太との約束の時間になり、約束場所に向かった爽子だが、その場で見た光景とは・・・?


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23 24 25 26 の続きです。


興味のある方は以下からどうぞ↓





























爽子が来る数分前――


「君・・・確か、神楽さんの店の・・」


翔太は目の前の女の子を見て、思い出すように眉を顰めて言った。しかし女の子は

何も喋らない。翔太は変に思いながらも状況が分からず、そのまま黙り込んでいた。

するとかなりの時間が経過した後、女の子が口を開く。


「・・・僕が分からない?」

「・・・・?」


二人の視線が合う。辺りはし〜んとしてたまに行き交う車の音が聞こえるだけだ。ま

たまた沈黙が走る。そして翔太は聞き覚えのある声に”あっ!”と大きな声を上げた。


「えっ・・でもっええ??」


明らかに自分が思い浮かべた人物に動揺している様子の翔太を見て、目の前の女

の子は、ふーっと深呼吸すると微動もせずに目線だけ翔太に向けて言った。


「・・・そうだよ。風早が思った通り。僕、大和だよ」

「・・・・」


翔太は言葉が出なかった。そんな翔太に大和は最大の告白を終えたことにホッとした

のか、べらべらと喋り出す。


「ねぇ、かわいいでしょ?僕、店でもNo1なんだよっ」

「・・・・」

「本物の女の子よりもかわいいと思うんだけど」


そう言ってくるっと回ってスカートをひらひらさせる大和は幸せそうだ。しかし、ぽかんと

している翔太に気づくと、大和は上目遣いに見て申し訳なさそうな顔をした。


「風早が店に来た時・・・びっくりしたんだ。神楽さんとつながってることも知らなかったし、

 何より、風早に知られたくなかったから・・・でもね、この旅行でちゃんと言わなきゃって

 思ったから服も持ってきたんだよ」


この状況をやっと把握した翔太は我に返ると、不安そうな大和に真剣な顔を向けた。


「・・・勇気いったよな?」

「・・・・・」

「ありがとな。本当のこと言ってくれて」


せつない表情で翔太の言葉を聞いていた大和は、ぎゅっと唇を噛んで、ふるふると震

え出した。そして堪えるように言う。


「ーうよ」

「え?」

「違うよっ・・・風早に分かって欲しいのはそんなことじゃないっ!!」


大和は涙目を拭おうともせず、翔太を見上げた。表情は真剣で、再び二人の間には、

緊張感が漂った。


「・・・好きなんだ。風早が好きなんだよっ!!・・・恋愛感情で・・・」


叫びながら大和は翔太に抱きつく、翔太は一瞬何が起こったのか分からず、頭が真っ

白のまま大和に抱きつかれていた。


そしてそこに現れた爽子はばっちりその場面の目撃者となる。



* * *


どくん、どくん、


「はぁはぁ・・・っ」


爽子は身体が自然に動いていた。気づいたら走っていた。


”『もしかしてあの子じゃない?肩までの髪のおとなしそうな子?』”


さきほど見た光景は翔太の後姿に肩ぐらいの髪の女の子が抱かれていた。あやねが言

っていた子、爽子が真っ直ぐ見れなくなった子。爽子はまさにその女の子だと瞬時に思っ

た。そしてその場に居られなくなったのだ。


「くっ・・・うぅっ・・んっ・・」


留めなく流れる涙の意味を知った。もう止まらなかった。悲しくて悲しくて、どうしてこんな

に悲しいかを・・・。失恋と同時に自分の恋心を知るなんて・・・・。


(私・・・風早くんが好きなんだ。恋愛感情で・・・)


気づいた自分の大切な恋心がこんなに苦しいなんて思ってもみなかった。


そして自分のあさましい独占欲に気づく。翔太に特別な人が出来て欲しくなかったのは

自分が全部欲しかったからだ。そんなことあるわけないのに、いつの間にか心が勝手に

動き出していた。バイトで一緒になり、どんどん欲張りになっていた自分。


「ー爽子ちゃん?」

「!」


爽子が泣き崩れていると、前から永遠が現れた。突然やってきた永遠に取り繕うことも

涙を隠すこともできずに爽子は何も言葉を出せずにその場に佇んでいた。すると永遠は

そのまま爽子を見つめ続けると、爽子の方に向かって歩き出した。


(・・・え?)


ぎゅっ


爽子の視界が真っ暗になる。一瞬何が起こったか分からなかった。爽子は永遠に抱きし

められていた。


「・・・そんな風に泣かないでよ」

「か・・・柏木くんっ・・・あのっ」


我に返った爽子は身体を離そうと必死に抵抗するが、永遠の力は強くびくともしない。

永遠は想いを込めるように抱きしめた。


「俺だって・・・俺だってずっと爽子ちゃんが好きなんだ。寂しくなったり、悲しい時は俺

 が守りたい。この先ずっとそんな存在でいたいんだっ」

「・・・・・」


爽子の力が抜けた。好きな人がはっきりした今、伝えなければならない。でも爽子は

ショックのあまり、永遠と向き合う気力を失っていた。ただ人肌が温かくて、そのまま

全てを委ねそうになる。抵抗がなくなった爽子をしばらく抱きしめ続けると、永遠はそ

っと身体を離して爽子を見つめた。


「・・・ちゃんと気持ち分かった?」


爽子はこくんっと頷いた。しかし、その表情は絶望に満ちていた。


「今すぐに答えが欲しいわけじゃないから。でも・・・ちゃんと考えて。マジだから」


爽子は涙目で永遠の真剣な表情を見つめ返すと、もう一度こくんっと頷いた。永遠は

満足そうに笑うと、爽子の手を取って人気のないところへ連れて行く。その夜、爽子

の涙が乾くまで永遠は側に居た。言葉を発さない爽子の側にいるだけで永遠は満

たされていた。まるで心をつなぎとめるかのようにつないだ手を離さずにいた。


そして、翔太もまた爽子が永遠に抱きしめられている姿を見てしまった。


この旅行で爽子は自分の想いに気づいたが、色々な想いによって二人は交わる瞬間

を失ってしまう。交差する想いはどのように形を変えていくのだろうか・・・。


悲しみの中にいる二人を、明るい月光が照らしていた。







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あとがき↓

多分、33話ぐらいになりそう。頑張って終わりまでいけそうです。でも疲れる・・・。
やっぱり同じものを最後まで書くのに向いてないようです私(汗)ちなみに翔太に
告白した女子はそれだけの役割なんでその後出てきません。かわいそ・・・っ(笑)