「はつこい」29

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。
※ 登場人物紹介は「17話」を見て下さい。


爽子は旅行の時に風早への恋心を自覚したが、風早が女の子と抱き合っているのを

見て失恋したと誤解する。行き場のない想いに戸惑いながら過ごす爽子の前に大和

が現れて・・・。


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興味のある方は以下からどうぞ↓




























* * *


あの旅行後、大和は釈然としない想いを抱えながら毎日を過ごしていた。忘れようと

思ってもあの夜の光景が頭から離れない。暴走してしまった夜。


大和は思い出しては、せつない表情を浮かべた。


『・・・あぁっなんであんなことしちゃったんだろ』


でも大和は分かっていた。なぜカミングアウトしてしまったかを。嫉妬してしまったの

だ。入学式の時からずっと目が離せなかった風早を好きになるのに時間はかからな

かった。あの自然な笑顔に釘づけになった。爽やかだけど、頑固で自分の考えを曲

げない。そんな姿に男らしさを感じた。でも友達として信頼を置いてくれる風早にどん

どん真実を言えなくなった。警戒されないために東京に彼女がいると言った嘘も未だ

撤回できないまま・・・。

そんな風早が恋をした。すぐに分かった。風早が恋をするならきっと本気の恋だと直

感的に気づいていたが、それを目の当たりにするとつらくなった。あんな熱い目で見

るなんて・・・。あれから鏡に映る自分を見ては、どれだけ自分がかわいいかを確認

しては、優越感に浸ったりした。でもそのたびに自己嫌悪に陥るんだ。結局”女”とい

うだけで負けを感じている自分に。そして正直に生きられない自分自身に・・・・。


あの夜、風早はちゃんと自分の想いを受け止めてくれた。そんな風早だから・・・。

だから・・・好きになったんだ。ちゃんと人として見てくれる風早を。


『好きな子がいるんだ』


分かっていたけど、胸の痛みは重くて。でも精いっぱい応えてくれた風早の幸せを願

いたいと思った。風早には笑っていて欲しい・・・大好きだから。

でも、風早からその後笑みが消えた。大好きな風早を悲しませているあの子が許せな

かった。そして、気が付いたらここに来ていた。


大和は唇をぎゅっと噛むと、涙目で爽子を睨んだ。


「これ以上・・・風早を悲しませたら許せないからっ!!」


爽子は茫然としたまま立ち竦んだ。


「私が風早くんを・・・悲しませた?」


そして、瞳を揺らしながら頭の中で大和の言葉を反芻するように呟いた。そんな爽子

を大和はじっと探るように見つめる。


「アンタさ・・・風早のこと好きなの?」

「えっ・・・あ、あのっ」


爽子は心を見透かされたように図星をさされると心臓が飛び跳ね、思わず口籠った。

しかし、そこは正直な爽子だ。誤魔化すことができなかった。


「は・・い。私、風早くんに特別な人がいても・・・風早くんが好きで、諦められなくて・・・

 迷惑だと分かっているんですけど・・・」


大和は爽子のきれいな目を見つめると、面白くなさそうにイラッとした顔で言った。


「ふぅ〜〜ん、そんなに簡単に信じるんだ?人から言われたことを”はいはい”って

 素直だね〜〜〜。自分は何にもしないで」

「・・・・・」


困惑した表情で黙り込む爽子に大和は我慢できないかのように、拳に力を込めると

大声で叫んだ。


「・・・っだから自分のことしか考えてないって言うのよ!!風早は・・・・風早の好きな

 子はあの子じゃないわよっ」

「あっ・・・」


爽子はそのまま走り去る大和を見送るしかなかった。そして宙に浮いた手をゆっくり

胸に持ってくる。胸には今まで感じたことのないような強い痛みを感じていた。



**********



”「これ以上・・・風早を悲しませたら許せないからっ!!」

「自分のことばっかり考えているから何も見えないのよっ!!」”


爽子はあれから大和が言った言葉の意味を考えていた。そしてなぜ大和を怒らせてし

まったかを・・・。


大和さんの言うとおりだ。私は自分のことばっかりで風早くんの幸せを考えることが

できているのかな? 風早くんが他の人と幸せになることを心から喜ぶことができな

い自分が風早くんを悲しませている・・・?


「うぅぅ・・・・っ」


考えれば考えるほど分からなくなっていた。そしてついに、あの旅行以来向き合うこ

とができないまま抱えているもう一つの想いに向き合う時がやってきた。


「爽子ちゃん、こっち」


待ち合わせ場所で永遠が笑顔で手を振っていた。旅行後、永遠から電話があった。

夏休みの最後に会おうと。爽子はあの後いろいろ考えた。翔太への想いに葛藤し

ながらも諦めることのできない自分。そして、恋を失うつらさ・・・。


爽子は遠目で永遠を見つめると、申し訳ない気分でいっぱいになる。翔太への気持

ちに気づいてから、いろいろな想いを知った。独占したい思い。違う人を好きな翔太

を見なければならないという苦しい思い。


永遠は暗い表情で重い足取りでやってきた爽子を見ると、ふーっとため息をついた。


「はは・・・最初からその顔はやめてよ」

「えっ?」


爽子は顔を上げると、永遠が苦笑いをしていた。


「言わなくても分かっちゃうじゃん」

「・・・・」

「ま、最初から分かってたんだけどさ」


永遠は深刻な顔をしている爽子を優しく見つめると、近くのカフェに爽子を連れて行く。

そして座ってしばらくすると、視線を逸らさずに言った。


「ちゃんと・・・爽子ちゃんから返事聞かせて」


とくんっ


爽子はごくんっと唾を飲み込むと、真剣な表情で永遠を見つめた。心臓は今にも飛び

出しそうなほど早鐘を打っている。


「あっあの・・・っ」


爽子はなんて言ったらいいのか分からなかった。ただいつも優しく接してくれたいい

人、永遠を傷つけたくなかった。自分なら苦しくてたまらない。


翔太を思い浮かべると、爽子はぎゅっと苦しそうに目を瞑った。そんな爽子をじっと

見つめていた永遠は再びふーっとため息をついて言った。


「・・・爽子ちゃんはさ、優しすぎるんだよ」

「え??」

「でもね、優しすぎるのは恋愛感情を持っている男にとっては酷だな」

「・・・・・」

「それが本当に優しいって思う?恋愛は友情とは違うんだから」


どくんっ


”「恋愛は両想いになる以外の人は傷つけることになるのは仕方ないんだよ。友達じゃ

 ないんだし」”


以前あやねに言われた言葉だ。それが恋愛なのだ。


爽子は心臓に強い痛みを感じるとぎゅっと胸を押さえた。


「好きじゃなかったらちゃんと言って。好きな人がいるんでしょ?」


永遠の目は真実を求めている。爽子は深呼吸すると決心したように永遠と目を合わせた。


「私・・・風早くんが好きなのっ!!」



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あとがき↓

文章が消えてしまってどんなだったか忘れたぁ〜〜〜!