「はつこい」23

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。
※ 登場人物紹介は「17話」を見て下さい。


翔太は周りの恋を見ながら自分の”恋”を模索していく。思い通りにならない気持ち

を抱えながら爽子との旅行がやってきた。爽子も旅行がとても楽しみで・・・。


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の続きです。


興味のある方は以下からどうぞ↓





























みんなで旅行・・・。


バイト先の人はいい人ばかりで、最初から自然に接してくれた。客対応がうまくでき

ない自分をフォローしてくれたり、普通に食事誘ってくれたり。初めは男の人ばかり

で不安だったけれど、今は一緒に働ける幸せを感じる毎日。私を仲間として受け入

れてくれることが嬉しくて嬉しくて・・・・。


そして二泊三日の旅行。


どきどきわくわく。今回面識のない人も多いが、爽子はみんなで一緒に過ごせる時間

がとても楽しみだった。しかし不安もあった。永遠や翔太に上手く接することができる

のだろうか・・と。でもぎこちなくなっている自分に永遠も翔太もいつも通り接してくれて

いる。そんな微妙な関係の中、月日は過ぎあっという間に旅行の日がやってきた。



旅行当日――



(えっと・・・タオルは入れたし、みんなのお菓子も・・・)


爽子は大きな荷物を持って集合場所である駅に向かって歩いていた。


「さ〜〜わこちゃんっ」

「あ・・・アキさんおはようございますっ」


爽子が振り向くと、アキが後ろでぶんぶん手を振っていた。そして元気よく走ってくる。


「おっはっよ〜〜〜〜よく寝れた?」

「あ・・・興奮してあまり・・・」

「あはは〜〜〜さわこちゃんらしっ荷物も大きいな〜〜〜」

「あっ・・・いろいろ考えているうちに荷物が増えてしまいましてっ・・・」

「はっは〜〜〜後で中見せてや」


アキは自然に爽子の横を歩き出した。そんなアキの姿に、爽子はますます旅行の実感

が湧いてきた。嬉しそうな爽子を見てアキはにやっと笑う。


「楽しみやな。いろいろ・・・むふふっ」

「??」

「はっよ〜〜す」

「おぅ〜〜〜〜〜〜〜シンさん、神楽!おっす」

「お、おはようございます」

「おはよ〜〜〜」


駅近くになり、爽子を囲んで男たちが楽しそうに歩いてくる姿を駅で待っていたあやね

千鶴、翔太は見ていた。


「すっかり、爽子もバイトに慣れたようね」

「ほんと〜〜〜可愛がられてんだ。な?風早!」

「うん・・・黒沼は何でも一生懸命だし、みんなちゃんと分かってる・・・!?」


翔太は爽子を見つめながら言った言葉にハッと気づいて二人に目を注ぐと、あやねと

千鶴はにやにやして翔太を見ていた。


「な、なんだよっ」

「いや、べっつに〜〜」

「翔太おっす」

「おっ永遠、おはよ〜」


後ろから永遠がやってきた。あやねも千鶴も挨拶を交わす。そして翔太たちと一緒に

爽子達の姿を捉えた。永遠は爽子達に視線を注ぎながらぼそっと言った。


「・・・旅行楽しみだな」

「うん」

「いろいろ・・・な」


永遠はちらっと翔太を見る。


「・・・・うん」


あやねは二人の様子を見ながらにやっとする。


(この旅行・・・めっちゃ楽しそうっ!)


思わずほくそ笑んだあやねであった。



* * *


鈍行に揺られて2時間ぐらいのところに目的地がある。田園風景が続いていた。ロマ

ンスシートになっていた座席には爽子達3人、横のシートには大和、シン、翔太、永遠。

その斜め後ろには神楽、アキ、女子たちが座っていた。


「ねぇ〜〜アキ、本城さんは?」

「なんか急に来れないって言うんやで。全員参加って言っといたのに」

「本城さんが来ないなんてつまんな〜〜〜い!」

「俺がいるじゃんよ〜〜〜〜っほらっトランプでもせーへん?」


あはは〜〜〜っ


がたんごとん、と電車の揺れを感じる中、楽しそうな声が響く。翔太はシンと話なが

ら先日見た光景を思い出す。本城と言い争っていたシンの真剣な顔。こうやって明

るく話すシンも何かを抱えている。皆いろいろな想いを抱えて毎日を生きている。


そして俺はいつも彼女を意識している。自然に見てしまうんだ。


がたん、ごとん


彼女の笑顔に優しい気持ちになれる。

この日をずっと楽しみにしていた。高校の時は考えられなかったこと。一緒に旅行に

行くなんて・・・。それだけでも嬉しいのに心の中はずっともやもやしている。知り合い

になれて普通に話せる。でも俺はもっと違うものを求めてる。


好きって気持ちはなんてやっかいなんだろう・・・って思う。


翔太が思いに耽けていると、永遠がいきなりすくっと立ち上がった。


(・・・・え?)


「爽子ちゃん、そっち行っていい?」

「え!?」


皆一斉に、永遠の方を見る。


「あっ・・・う、うんっ」

「ありがとっ」


永遠はにっこりと笑い、翔太をちらっと見ると爽子の方の座席に移った。


「・・・・・」


きっと俺が頭で考えてる間に永遠はそのまま行動する。恋は勝ち負けなんかじゃない。

とそう思いながらも心のどっかで焦ってる。ジリジリした感情。


ぐいぐいっ


「ねぇ、あの子?」

「え?」


大和が翔太の服の裾をぐいっと引っ張って目配せする。翔太は大和の意図することを

察して爽子をちらっと見ると、ぽっと頬を染めた。


「う・・うんっ」

「・・・ふぅ〜〜〜ん。かわいいじゃん」

「え・・・う、うん////」


翔太は爽子を”かわいい”と言われたことに一瞬嬉しくなったが複雑な思いも否めない。


「やっぱ・・・かわいいよな」

「うん。ふつーにかわいんじゃない?」

「・・・・」


大和は翔太の横顔を探るように見つめた。そして表情を曇らせた。


(・・・はっ!)


その時斜め後ろから視線を感じて、大和は焦ったように現実に戻る。


(・・・神楽さん?)


神楽と視線が合った大和は恥ずかしそうに俯いた。大和は旅行前の神楽との出来事を

思い浮かべる。


* * *


仕事を終えた後、神楽が着替えながら言った。


『あんた、翔太が好きなんでしょ?』

『えっ!?』

『隠さなくてもいいわよ、私には。アンタまだ脱皮できないようね』

『・・・・・』

『分かるけどね。皆と違うというのは勇気がいることだから。でも自分に正直に生き

 られないってつらいことよ。いつまで自分を偽るつもり?』

『ぼ・・・僕はっ・・・風早に嫌われたくないっ!』


大和は堪えていた本音を苦しそうに吐き出した。神楽はそんな大和を優しく見つめる

と遠い目をして言った。


『・・うん、分かるわよ。私もそうだったから。好きな人はだいたいストレートよね。でもさ

 相手がそうだからって気持ちは変えられるの?そんな想いなの?』

『・・・・・』


”人を好きになるのに理由なんてない。言い訳する必要もないのよ”


* * *


(・・・神楽さん。だからと言って僕は・・っ)


大和はさっと神楽の視線を逸らした。


それぞれの想いが交差する中、二泊三日の旅行がスタートした。電車に揺られながら

想いも揺れる。それぞれの想いはどこに行くのか?思い通りにならない気持ちを抱え

ながら、電車は目的地へと向かっていた。





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あとがき↓

私、マッキー好きなんです。今のアルバムに”軒下のモンスター”という歌があり、
すごくこの歌が好きなんで大和というキャラを作ってみました。人は目に見えてい
るものだけで判断してしまうことが多いから難しいですね。特に若いとそう思います。
でも人生は白と黒だけじゃないし、知ることによって世界が広がります。そして人か
ら見てかわいそうと思っても本人はそうでなかったり、幸せの価値観は違うのだと
年を重ねて分かっていく部分もあって・・・そういう意味では年を取るのは悪いこと
ではないな・・・と思う今日この頃です。あぁ、連続記録終わった(;´д`)トホホ…