「はつこい」22

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。
※ 登場人物紹介は「17話」を見て下さい。


永遠と翔太と爽子の三角関係は見えないところで縺れていることに3人は気づいてい
なかった。爽子が自分の気持ちに”自覚”するのはいつなのか・・・?


こちらは 「はつこい」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 1819 20 21 の続きです。


興味のある方は以下からどうぞ↓


























あやねはその後、爽子が気になり大学の帰りに呼び出した。

茶店でコーヒーを飲みながらそれとなく聞く。


「・・・で、あれからどうした?」

「え・・っと」


さすがに永遠の告白を自覚したであろう爽子の内面がまたあさっての方向に行かない

かあやねは心配していた。


「柏木くんにね・・・謝ろうと思ったのだけれど・・・っ」

「?」


爽子は下を向いて堪えるように唇を噛んでいる。


「なかなかちゃんと向き合えなくて・・・っ」

「え?」


(爽子にしては珍しいな・・・)


とあやねは思った。人に対して誠実な爽子はこんなことがあったらちゃんと向き合う

ような気がしていたからだ。


「向き合おうとすればするほど、なんて答えたらいいか分からなくなって・・・どんどん

 ぎこちなくなっちゃって」

「相手も?」

「う・・ううん、よく分からないの。最近バイトであまり会えなくて・・・。柏木くん、

 大学が始まって忙しいみたいで・・・」


いかにも困惑しているような爽子をあやねはきょとんっと見つめると、ふーっと息を

吐いて優しい笑みを浮かべた。


「爽子はどうなの?柏木くんのことをどう思うの?」

「す、好きだよっ。いい人なの・・・とっても」

「・・・それは恋愛感情?」

「・・・・それは・・分からないの」


爽子は視線をゆっくり下ろすと複雑そうな表情で言った。


「初めてそんな感情を持ってもらって・・・すごく嬉しくて・・・でも ”彼女” になる

 とかは全く考えられなくって・・・」

「ふぅ〜〜〜ん。それで悪いとか思ってる?」

「え??」


図星!という感じで驚いた顔をしている爽子を見て、あやねはくすっと笑った。


「恋愛は両想いになる以外の人は傷つけることになるのは仕方ないんだよ。友達じゃ

 ないんだし」

「・・・・・」

「でもま、今度旅行あるじゃん。あ〜私とちづも本当に行っていいの?」

「も、もちろんっアキさんが是非って。他のバイトの方たちも・・・」

「楽しみ。ピンは仕事だから羽伸ばそうっと」


と言ってあやねは舌をぺろっと出した。


「とにかく、爽子は自分の気持ちを大切にしたらいいんだよ。きっと分かる時が来る

 と思うよ」


”自分の気持ちが分かる時・・・” 柏木くんへの気持ちが?


爽子は眉を顰めて考え込んだ。あれからいろいろ考えるが答えは出ない。


「ところで風早は元気?」

「え?」


どくんっ


「何?」

「う、ううんっ・・元気だよ」


風早くんは変わらず私に優しく接してくれるのに、私は最近どんどんぎこちなくなっ

ているような気がする。どうしてだろう。風早くんに真っ直ぐ見られると視線を外し

てしまう。きっと感じが悪い・・・。


あやねはじっと爽子を見ると、頬杖ついてにっこりと笑った。


「ふぅ〜〜〜ん。なにはともあれ、旅行が楽しみだね♪」

「うんっ。あやねちゃん達も一緒で嬉しい」


爽子もにっこりと笑った。二人はその後店を出て手を振って別れた。あやねは爽子の

背中を見送りながら呟いた。


「風早・・・決戦は旅行だね」


夏休みは目前だった。



*********


恋を自覚してからどれだけ経ったのだろうか・・・。ライバルも気になるけど、俺はあれ

からも何も出来ていない。というかなぜか彼女に距離を置かれているような気がして

どんどん不安が広がった。


「・・・考えても仕方ない」


時々思う。両想いってどんなだろって。想いが通じ合うってどんな気持ちだろう・・・。


「はは・・・夢みたいだな」


翔太は大学の帰り道そんなことを考えながら歩いていた。今日は大きな本屋に寄るた

めにいつもと違うところに向かう。そしてその道すがら聞き覚えのある声が耳に入った。


「・・・だよ。言いたいことがあったら言えよ」

「・・・・・」

「!」


(・・・・本城さんとシンさん??)


気づくと、本城の実家である医院の近くだった。

二人とも真剣な顔で向き合っている。シンも本城もバイトでは見せたことのないよう

な顔をしていた。


「じゃ・・・言うよ。川田のこと本気なのか?」

「・・・ははっ。なんでそれをシンが聞くわけ?」

「・・・・・・」

「お前さ、ズルくね?彼女には何も言わないくせしてさ、俺にはストップかけるんだ」

「ストップじゃね〜よ・・・お前が本気に見えないからだよ。彼女を弄んでるようにしか

 見えないから言ってんだよ」

「だからさ〜なんでお前にそんなこと言われないといけないわけ?彼氏でもねーのに」


(・・・これ、どう見ても恋愛の縺れ・・だよな?やばっ)


翔太はシンと飲んだ時のシンの言葉を思い出した。


”『恋愛なんてさ・・・上手くいかなことだらけだよ』”


シンに好きな人がいることはあの時に何となく感じた。でもそれに本城が絡んでいる

ことに翔太は驚きを隠せなかった。見てはいけないものを見てしまったようで、翔太は

大きな木の裏に隠れながら焦っていた。


(早く行かなきゃ・・・っ)


「・・・彼女を傷つけたら許さない」

「・・・・・」


とくんっ


シンの真剣な目に翔太は驚いた。そしてそ〜っとその場を離れる。


”「俺は・・・いーかげんだから、マウンドにも立たない。試合放棄だな・・・いつも」”


「シンさん・・・試合放棄じゃないじゃん」


翔太はそう言って小さく笑った。


人はどうして恋をするのだろう。そして思い通りにいかないのになぜ恋をし続けるのだろう。

世の中に諦められることはたくさんあるのに、なぜ諦められないのだろう・・・。


俺は彼女に好きな人がいたらどうなるんだろう・・・。諦められるのだろうか。

誰かの側で微笑む彼女を見ていられるのだろうか・・・。

もしかしたら永遠の横で微笑む彼女を。



翔太は切ない目をして夜空に浮かぶ月を見ていた。









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あとがき↓

おおぅ・・・まだ毎日更新記録存続中!まだ行けそうな予感!最後まで行けるかなぁ〜?
今日はハロウィンなので何かショートな話を書こうと思ったけど時間切れ・・・。