「はつこい」24

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。
※ 登場人物紹介は「17話」を見て下さい。


バイト先での一大イベント、夏の旅行が始まった。それぞれの想いはどこに向かうの

だろうか・・・?この旅行で結末を迎えるのか?


こちらは 「はつこい」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 1819 2021 22
23 の続きです。


興味のある方は以下からどうぞ↓


























がたん、ごとん


「で、柏木くんだっけ?」

「永遠でいいよ」

「じゃ、とわくん、爽子はバイトでどう?」


隣のシートでは永遠と爽子達の中に自然に入っている。あやねは永遠に聞いた。


「真面目だよ〜〜。すごくきっちりしてるし、仕事も早いし。爽子ちゃんが来てから

 細かいところがきれいになったしね」

「だろだろ〜〜〜っ爽子はいつもみんなが嫌がる仕事をするんだよな。テスト対策

 のノートもいつも私に作ってくれてたし」

「それはちづ限定でしょ!」


あはは〜〜〜っ


翔太は楽しそうな隣のシートを気にしながらもなんとか平然を装っていた。


(・・・ってか、自然に会話を聞いてるってムッツリじゃんっ)


そんな自分が嫌で翔太はふ〜っと肩で息をすると窓の方に顔を向けた。


ぷっ


「え?」


吹き出す声が聞こえて翔太は思わず前を向く。するとシンが笑いを堪えていた。


「何?シンさん」

「いや・・・相変わらずダダ漏れだなって思って」

「/////」

「それが翔太のい〜〜とこだから。変わらないでよ」

「シンさん・・・」


そう言って笑うシンさんは少し寂しそうに思った。シンさんが失くしたものとでも

言いたいのだろうか?


「届くといいな」

「・・・うん」


二人はにっこりと笑った。そして翔太はちらっとシンを見ると、戸惑いながらずっと

気になっていることを口にした。


「あのさ・・・先週なんだけど」

「?」

「本城さんの家の近くで・・・っ」


すると、シンはふっと笑った。


「見てたんだ・・・」

「ごめんっ・・・見るつもりなかったんだけど、たまたま通りかかって」

「うん、分かってるから・・・。恥ずかし〜とこ見られたな」

「そんなことないよっ」


シンは翔太の純粋な目を見て苦笑いをするとそれ以上何も言わずに本の続きを読み

始めた。あの時のシンの目を思い出す。簡単には話せない想いなのだと思った。そ

の人にしか分からない想いがある。そして自分にも・・・。


「ん?なんかあった?」

「いや、何も」


トレイから帰ってきた大和に、翔太はにっこりと笑った。


がたん、ごとん


”翔太は翔太らしくいればいーんだよ”


(うん・・・シンさん)


翔太はこの旅行で決めていることがあった。


彼女に気持ちを伝えよう・・・と。

たとえフラれたとしても知ってもらいたい。自分の気持ちを。


翔太は穏やかな顔で窓の外の景色を見ていた。


「・・・・・」


あやねは熱い目で爽子を見る永遠と翔太を交互に見つめた。爽子が告白を理解した

ことをまだ永遠は知らないだろう。でもまたきっと押してくる。少し話しただけでも永遠

の押しの強さを感じていた。


(さて、どうなるか・・・勝負はやっぱこの旅行だね。だけど・・・)


爽子が翔太を気にしていることにあやねは気づいていた。なので早く恋心に気づくとい

いと思っていたが、永遠が出現した。いい人と思っている爽子が”振る”なんて行為が

できるのだろうか・・・?


あやねは心配そうに爽子を見つめた。



* * *



「うっわ〜〜〜いい部屋じゃんっ海が見えるし」


一行は目的地にたどり着くと、アキが予約していた民宿に入った。

部屋は大部屋で女子、男子と分かれるだけで個室ではなかった。


「・・・これじゃ合宿じゃんね」

「ま、やのちんそれも楽しいって。なんせ海〜〜海〜〜〜海が私を待ってる」

「あ〜〜〜〜焼ける。完全防備で行こう」


爽子は合宿のような雰囲気にどきどきしていた。書籍部門の女の子達も優しそうな人

ばかりだ。爽子は嬉しそうに微笑んだ。


その後すぐに民宿ロビーに集合だった。女子たちが水着にパーカーを羽織りうきうき

と嬉しそうにやってくる姿を見て、男性陣もテンションが上がる。


「さわこちゃんっかわいいやんっ。あやねちゃんもちづちゃんもいいねぇ〜〜〜」


アキは他の女子にも愛想を振りまき、根っからのお祭り男は大はしゃぎだ。翔太と

永遠は照れ臭そうに視線を泳がす。とりあえずみんなでぞろぞろと海へ向かった。

民宿から海はすぐ側にある。翔太の隣を歩いてたあやねはぽつりと言った。


「かわいいでしょ爽子の水着」

「え?/////」

「一緒に選んだんだよ」

「ふ、ふ〜ん」


手で顔を覆って照れる翔太をさらに攻めていく。


「あんたさ・・・高校ん時、くるみに告白ってされたの?」

「え??なんだよ・・・いきなり」

「いや、どうして誰とも付き合わなかったのかなって。モテてたのに」

「・・・別に。好きな子がいなかっただけだよ」

「ふぅ〜〜ん。今はいるの?」

「・・・いるよ」


はっきり言う姿にあやねは驚いた。そして思いついたように興奮気味に身を乗り出す。


「私が知ってる子だったら、取り持ってあげようか?」


ところがそんなあやねを翔太は真っ直ぐ見て言った。


「・・・・そんなことしなくていい」

「!」

「好きな子にはちゃんと自分から言いたいから」

「・・・・」


翔太の真剣な目を見てあやねは少し怖気づいた。そして”めんどくさ〜〜”と呟きな

がらも翔太がモテる原因が分かるような気がした。きっと好きな子を大切にする。そ

んな気がしたからだ。それは爽子に少し似ているように思った。


(爽子・・・頑張れ)


あやねは二人を見守る母親のように優しく微笑んだ。


あやねが翔太の側からいなくなると待ち構えていたように後ろから書籍部門の女子

達がもじもじと翔太に近づく。


「か、風早くん、私由美、書籍部門に一年前からいるの」

「あっども・・・」

「私も。名前知ってる?」


翔太は爽子を気にしながらも女子達に埋もれていく。爽子はその様子を遠くから羨望

の眼差しで見つめた。


(風早くんはやっぱりモテるなぁ・・・)


ちくんっ


(あれ??)


爽子は胸の奥に鈍い音を感じた。高校の時から人に囲まれている翔太に憧れていた。

自分も翔太のようになりたいと願った。今もそう思っている。しかしあの時と何かが違う。

爽子は初めて感じた胸の痛みに戸惑っていた。


(・・・痛いっ)


そして胸をぎゅっと押さえると、振り切るように皆と海へ向かった。そんな爽子の様子を

永遠はじっと見つめていた。





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あとがき↓

やばい・・・いつもながらもう少し伸びそうな予感!30話ぐらいを目指していたのだが
終わらないかもっ(汗)