「はつこい」25

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。
※ 登場人物紹介は「17話」を見て下さい。


翔太はこの旅行で爽子に想いを伝えたいと思っていた。一方爽子は、モテる風早に

胸の痛みを覚えて戸惑うが・・・・?


こちらは 「はつこい」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 1819 2021 22
23 24  の続きです。


興味のある方は以下からどうぞ↓





























* * *


あれから一行は海に向かって、わいわいがやがやはしゃいでいた。

砂浜では男たちが中心にパラソルを立てている。


「よいしょっと。大和だっけ〜〜〜?お前ほっそいなぁ〜〜。色白いし」


アキに言われて、大和はぱっと身体を隠した。


「ひゃひゃっ女の子みたいやん」

「アキさん、身体のこと言うのは止めようよ」

「・・・ごめん、翔太。大和悪かった」


アキにすぐに謝られて大和は焦ったように首を振った。しかしアキはそのまま大和

から目を逸らさずじっと見つめ続ける。そして眉を顰めて言った。


「・・・大和さ・・前にあったことある?」

「!」


大和はびくっとしたように怯えた表情でアキを見ると、さっと視線を逸らした。


「ー他人の空似でしょ」

「・・・やんな」


神楽に言われて、アキはそれ以上考えずに女の子たちと海に入って行った。大和は

ふーっと息をついて安堵の表情を浮かべると神楽に目で礼を言った。


* * *


海ではしゃいだ後、バーベキューなどをして楽しい時間は過ぎていく。翔太は満足に

爽子と話すことはできないが、楽しそうな爽子の姿を見ているだけで嬉しくなった。


「うわっ〜〜〜火が上がった!」

「やばいやばいっ」

「大丈夫」


バーベキューに乗せている野菜が燃えまくりアキが焦っていると翔太とシンが冷静に

対処する。その姿を見ていてアキがぶすくれた顔で言った。


「なんだかんだ言って、翔太はええとこ持ってくもんなぁ」

「え??」

「女の子の前でカッコええとこ見せようと思ったのに・・そりゃ店長も目の敵にするわな」


翔太はぶつぶつ言っているアキを不思議そうに見ると、火を鎮圧させながら言った。


「別に・・・俺はピンとかに使われて・・あ、知り合いの教師なんだけどキャンプ要員によく

 かり出されてたんだよ」

「でも、翔太はこんなで株が上がっちゃうんだよな」

「・・・え?」


シンに言われた言葉に翔太は思わず動作が止まる。


「ははっそこが俺と違うとこ。誤解されないようにしろよ。一番大事なとこ持ってかれ

 たくないだろ?」

「・・・・・」


シンはそう言ってぽんっと翔太の肩を叩く。


”一番大事なとこ・・・”


シンさんの言っている意味が分かった。今までも突然告白されたり、友達だと思って

いた女の子に恋愛感情を持たれていたことがあった。好きな子ができて初めて分か

った。彼女に他の男が近寄るだけで嫉妬でめちゃくちゃになる。

だから・・・俺も彼女には誤解されたくない。


「風早くん、すごぉ〜〜いっ!」

「!」


女子たちが身体をくねらせてやって来ると、翔太は表情を変えずに言った。


「もうすぐ肉焼けるからどうぞ」

「あっ・・・」


翔太はさらっと交わすとその場を離れた。そして爽子の方に目を向ける。爽子は相変

わらず楽しそうに永遠や神楽、あやね達と話している。翔太はぎゅっと拳に力を込め

ると爽子の方に向かった。


「皆、肉焼けたよ。食べよ」

「おっサンキュー」


ぞろぞろと網の方に移動する。翔太は爽子の側に行くとにっこり笑った。


「黒沼、食べてる?」

「う、うんっ・・・いろいろ皆さんにしてもらって」


爽子はさっきからバーベキューの準備やその他、男子陣にやってもらっているのを、

申し訳なさそうに言った。


「はは、男たちはいいとこ見せたいから」

「で、でもっ・・」

「いーのっ。黒沼は楽しい?」

「うんっ・・・とっても楽しい。こんなの初めてで・・・」

「良かった」


翔太がそう言って笑うと爽子も嬉しそうに笑った。


「やっと見れた・・・」

「え?」

「黒沼の笑顔」

「あ・・・・」


爽子は恥ずかしそうに両手を頬に当てた。翔太はそんな爽子を愛しそうに見つめると、

今度は緊張した顔で言った。


「黒沼・・・あのさ、明日の夜ちょっと話があるんだ」

「・・・え?」

「時間もらえる?」

「う、うんっ・・・もちろん」


翔太と爽子はそのまま見つめ合った。お互い頬が少し赤い。


「ー爽子ちゃん、翔太ー!ほら、焦げるよ」

「あっ・・・・」


爽子は永遠に向こうから呼ばれるとハッとしたように振り向いた。


「行こうか」

「うんっ」


翔太は爽子と話せたことに満足気に微笑んだ。そして爽子もまた同じだった。


(・・・やっと風早くんと喋れた・・・っ)


爽子はさっきの胸の痛みも忘れて自然に笑みがこぼれる。しかしこの後、再び同じ痛

みを味わうことになる。


爽子達の後ろから書籍部門の女子の一人が翔太を熱い目で見つめていたのである。


* * *


「わははは〜〜〜〜っ」


夜は酒が入ってやはり宴会となる。皆ハイテンションで踊れ歌えの大騒ぎになってい

る。全員が男子部屋に集合して飲んでいた。


「どう〜〜〜〜して、本城様は来なかったのよぉ〜〜〜!アキ」

「知らへんよ〜〜〜そんなこと。女なんちゃう?本城さんのことやから」

「いや〜〜〜っアキのイジワル!」


神楽が身体をくねらせて怒る。すっかり周知されている神楽の性癖を今や誰もが普通

に受け入れていた。大和はその様子をじっと見つめる。


「・・・風早、神楽さんどう思う?」

「え?どうって?」


翔太の隣で座っていた大和がぼそっと聞いた。


「男なのに・・・って思わない?」

「別に思わないけど?神楽さんは正直に生きてるだけだろ?」


大和は翔太から自然に出る言葉に表情を緩めた。そして唇をぎゅっと噛むと緊張気味

に言葉を発する。


「じゃ・・・もし・・・「ー翔太」」

「え?」


その時シンが翔太を呼び、くいくいっと戸口の方に目配せした。そこには書籍部門の

女の子がもじもじしながら立っている。


「あの子がお前に話があるってさ」

「・・・・」


翔太は小さなため息をつくと、大和に ”ちょっと行ってくんな”と言って立ち上がった。

大和は翔太の姿を目で追うと、視線を落とした。そしてハッとする。テーブル向こうの

爽子も翔太を見ていることに気づいたからだ。大和はすくっと立ち上がって爽子の方

のテーブルに行った。


「そっちで飲んでいい?」

「おお〜〜〜風早の友達だっけ?どーぞ!」


千鶴がフレンドリーに場所を開ける。隣のあやねがそれとなく聞いた。


「風早どこ行ったの?」

「ん〜多分告白」

「「え??」」


爽子も大きく目を見開く。あやねは思い出すように視線を上げながら言った。


「もしかしてあの子じゃない?肩までの髪のおとなしそうな子?」

「え?誰??」

「いや、今日やたらと風早の側に居てた気がしたから」

「うん、呼び出されてた」

「・・・・・」


黙り込んだ爽子を大和はちらっと見ると、飲み物を口にしながら何気なく話す。


「なんかさ・・・風早も気になってたみたいだし、付き合うかもね」

「「え!?」」


あやねと千鶴が同時に声を上げた。爽子は顔も上げられない。


どくんどくんどくん・・・


爽子は今までにないぐらいに心臓が大きく高鳴ると、手にはじわっと汗が滲んだ。


ちくんっ


どうしたんだろう・・・私。また胸が痛い。


風早くんに特別な人ができるんだ。それは当たり前のことなのに、なぜ今まで考えたこ

とがなかったのだろう・・・・。そしてどうしてこんなに苦しいんだろう。


「爽子?大丈夫」

「あ・・・う、うん」


あやねと千鶴が気にしてくれているのが分かっているのに、爽子は上手く表情が作れ

ず痛む胸を押さえていた。


大和はそんな爽子を睨むように見つめ続けた。















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あとがき↓

なんでうまくまとめられないのかなぁ〜だらだら続きますがよければ読んでください!
一気に最後まで行きたい!