「はつこい」17

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。


シンに夕食を誘われてとりあえず付いて行くが、翔太の心は重かった。そんな翔太に
シンは・・・?


こちらは 「はつこい」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 の続きです。

 ここで一発、主人公二人以外の登場人物まとめ!
 坂口新・・・あだ名シン、バイトの長老、大学3年でさぼりがち。ひげ面で長髪の個性的な男。
          翔太が兄のように慕っている。 
 香山秋人・・バイト仲間、大学2年、金髪で派手な服がトレードマークの関西人。軽い性格。
 本城慧・・・バイト仲間、大学4年、医者の息子で医大生。フェミニスト、女たらし。お金に困
          ってないのでこのバイトを遊び場にしている。
 神楽太郎・・バイト仲間、大学2年、おかま、本城が好き。
 柏木永遠・・バイト仲間、大学1年、背が低いが爽やか好青年。車の免許合宿でしばらくの間
          バイトを休んでいた。
 店長・・・・バイトの店長、25歳、学生時代空手をしていて、変に体育会系。女性にトラウマあり
         !?爽やか翔太を目の敵にしている。
 大和武・・・翔太の大学仲間。サラサラヘアーで女の子みたいにきれいな男子。東京から出て
         きていて、東京に彼女がいるらしい!?



興味のある方は以下からどうぞ↓  


























* * *



「俺、未成年なんだけど?」

「ま、ちょっとぐらいいーじゃん」


シンは翔太を馴染みの居酒屋に連れて行き、当たり前のようにビールを注いだ。


「じゃ、ちょっとだけ・・・」

「お?珍しい。真面目なしょーちゃんがね」

「・・・・・」


だめだと分かりながらもこの日は飲みたい気分だった。


からかっても返ってこない翔太を見てシンはふっと苦笑いし、翔太のグラスに自分の

を当てて勝手に乾杯すると、ぐいっと一気に飲み干す。


ぐいぐいぐい


「いい飲みっぷりだね。シンさん」

「お前もいけよ。スッキリすんぞ」

「・・・ん」


ごくごくごく


「いいねぇ〜〜。お前飲める口だな」


あっという間にグラス全部を飲み干すと、もう一杯と翔太はお代わりをした。

ちょっと不安げにシンは翔太を見つめた。


「ほら、つまみも食べな。悪酔いすっぞ」

「うん・・・」


そしてお互い良いほろ酔い具合になったとき、シンはふーっとため息交じりに言った。


「恋愛なんてさ・・・上手くいかなことだらけだよな」

「え・・・・」


シンはそう言うとグラスを揺らしながら中の泡を眺めている。何かを思い浮かべてい

るような遠い目のシンを翔太は見つめた。


「・・・シンさんもそうなの?」

「はは、俺が上手くいくように見える?本城じゃないんだし」

「うう・・んわかんない。でも、器用にできない方がシンさんらしくていい」

「それどーいう意味??」


あはは〜〜〜っ


シンさんはいいかげんそうに見せるけど、真面目だと知ってる。大学をさぼりながら

もちゃんと就職は決めてるし、家族想いだったりする。でも恋愛はどうなんだろう?

それほど器用じゃないような気がした。


シンはひとしきり笑うと、今度は優しい目で翔太を見つめる。


「なんかさ、翔太を見てるとやばいぐらいに何年か前の俺と重なるんだよな・・」

「え??」


翔太はシンの意味深な発言に驚いたように顔を上げた。


「いやさ、俺は翔太ほど真っ直ぐじゃないけどな」

「は?」

「好きな子になぁ・・・」

「!!」


シンにニヤニヤして見られると、翔太はハッとしたように真っ赤になった。


「今さら照れるな。ダダ漏れだから」

「/////〜〜〜〜〜〜〜!」


翔太は酔いもあってどんどん体が熱くなるのを感じた。それを隠すようにがばっと机

に顔を伏せる。シンは翔太を優しい目で見つめると、それ以上突っ込むこともなく、

ビールを飲み干してひとり言のように呟く。


「・・・周りには上手く変化球を投げれる奴がいるんだよな」

「・・・・・?」

「恋愛もそうなのかなって・・・・直球だけでは勝てない」

「・・・・・」


”勝てない”


翔太は酔っている頭で考えていた。恋愛は勝ち負けなのだろうか・・・と。


「んで・・・シンさんは勝負したの?」

「え・・・・」


シンは翔太を驚いたように見つめると、今度は寂しげな表情でふっと微笑んだ。


「俺は・・・いーかげんだから、マウンドにも立たない。試合放棄だな・・・いつも」

「・・・・・」


シンさんがどんな恋愛をしているのか知らない。でもその言葉と裏腹にいい加減な恋は

していないように思った。俺はそれ以上聞けなかった。


”『恋愛なんてさ・・・上手くいかなことだらけだよ』”


この言葉はシンさんの本音だと思ったから。


「シンさん・・・」

「ん?」

「シンさんの初恋は?」

「へ?」


翔太は机にうつ伏せながらシンの方に視線を向けて言った。思わず噴き出したシン

だが、翔太のそんな姿を見ると、顔を緩ませた。


「お前、まるで置いてかれた犬みたいだな。妙にかわいいぞ」

「・・・男にかわいいって言われてもな・・・ちょっと酔ったかも」


シンはふっと笑うと遠い目をして優しい口調で話し出した。


「中学ンとき。隣の席の女の子だったな。学級委員でさ、髪が長くてさらさらで・・・彼女

 の横顔をいつもちらちら見てたっけ・・・」


翔太は爽子を思い浮かべた。北幌に居る時、一緒のクラスにはなれなかったけど、

廊下や花壇で、彼女を見つけるといつも、胸がドキドキしていた。それは淡い初恋だ

ったのだと思う。そんな気持ちは初めてだった。俺はその時から君に恋をしていたんだ。


「初恋は実らないっていうけど・・・ほんとかな」

「はは・・・そういうね。確かに俺は実らなかったからな。でも人生なんて最後まで分かん

 ねーから」

「同じ想いってよく考えたらすごいことだね。奇跡に近いじゃん」

「・・・そうかもな。でも世の中、恋だの愛だのを簡単に語る奴もいるから。そういう奴か

 らするとすごくないんじゃないの」

「・・・・・」


俺は分かった。彼女に気持ちを伝えられないのは簡単な想いではないからだ。そして

彼女にちゃんと俺を見て欲しい。向き合ってもらいたい。それから・・・伝えたい。


「翔太は翔太らしくていーんだよ。」

「・・・・・・」


皆、いろいろな想いを抱えながら生きている。彼女を知って初めての自分に出会う。

もやもやして動けない自分も、嫉妬でめちゃくちゃになった自分も、彼女の前で上手

くできない恥ずかしい自分も・・・・自分なんだと。


翔太はすっきりした顔でシンを見ると、いつもの笑顔で言った。


「シンさん・・・サンキュ」

「へ?何が?」

「今日、飲みに誘ってくれて」

「・・・未成年に飲ませたこと内緒な」

「ははっ」


今まで同い年の友達が殆どだった中で、バイトを始めて沢山の兄的存在ができた。

その中でもシンさんは友達とも違う、先輩とも違う。本当の兄のような存在だった。

何も言わなくてもさり気なく心を軽くしてくれる。


(・・・・とりあえずちゃんと聞こう)


翔太は気持ちを切り替えることにした。もやもや考えるより聞かないと始まらない

のだから・・・・。


翔太は少し軽くなった心で家路に向かった。



*******



そしてそのチャンスはいきなりやってくる。

次の日、翔太はバイト先でシフト表を見て目を丸くした。思わず店長に漏らす。


「え・・・今日、3人?」

「おお、今日は休日だからな」


どくんっ


シフト表には、黒沼、柏木、風早の文字があった。翔太は昨日の光景が脳裏に浮かび、

ぎゅっとタイムカードを持つ手に力を込めた。そして決心するように顔を上げる。


(・・・よしっさらっと聞こう)


翔太はいつも通り、元気よく現場に向かった。


「おはよっ」

「おっす」

「お、おはようございますっ!」


翔太が行くとすでに永遠も爽子も仕事に入っていた。二人は和やかに話している。

ただのバイト仲間でご飯を食べに行ったのだと分かっているが気になるものは

しょうがない。しばらくして、書籍整理で向こうに行った彼女を確認しながら、

カウンターにいる永遠にそれとなく聞いた。


「この間、彼女とどっか行ってたの?俺、たまたまDVD返却に来ててさ、見かけたから」

「へ〜〜〜見てたんだ」

「うん」

「飯食い行ってた」

「そ〜〜なんだ」


翔太は手を動かしながらそれとなく返事する。永遠はそんな翔太をじっと見つめた。


「気になる?」

「・・・え?」


二人の目がばっちり合い、翔太の手が止まった。


「べ・・・べつに」


永遠は翔太の言葉と裏腹な態度にぷっと笑うと、にんまりして言った。


「彼女さ・・・ハンバーグ好きなんだね。知ってた?」

「いや・・・」

「すごく目を輝かせてかわいかったなぁ」

「・・・・・」


”なんでこの日に永遠と一緒のシフトなんだろう・・・”


・・・と正直思った。しかし、それはまだ最悪な日の始まりに過ぎなかった。








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あとがき↓

こんな風にのんびり続く・・・。やっぱ片思い時期よりラブラブ時期の方が筆が進む。30話
ぐらいでまとめたいなぁ・・・。