「はつこい」18

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。
※ 登場人物紹介は「17話」を見て下さい。


永遠と爽子と同じシフトなった翔太は二人の様子が気になってしかたがないが・・・。


こちらは 「はつこい」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 の続きです。


興味のある方は以下からどうぞ↓


























* * *



「い、いらっしゃいませ・・・」


ある客の時、彼女の様子が少し変だった。何だか少し固くなったような気がした。


(って・・・俺、どんだけ彼女を気にしてんだよ)


翔太はぽりっと頭を掻くと、カウンター奥でDVD整理をしていた。ところが、振り

切るように業務を続けていた俺の耳に突然飛び込んできたのはアイツの声。


「いらっしゃいませ。返却ですか?」


(・・・え?)


今まで他の客の探し物でカウンターを出ていた永遠が帰ってきて、彼女の前にさっと

立ちはだかった。彼女は永遠の後ろに隠れるようにしてほっとした顔をしている。


(・・・・なんだ?)


客を見ると、中年の普通の男だった。しかしその男は永遠を見ると、ちっと舌打ちを

してDVDを返却して帰って行った。永遠はその男を営業スマイルで見送ると、ぱっ

と彼女の方を見て心配そうな顔で言った。


「大丈夫?何もされてない?」

「す・・・すみませんっ・・大丈夫。ありがとうっ・・・」


どくんっ


心臓が大きく揺れた。


永遠を見る彼女の顔は少し紅潮していて、嬉しそうだ。永遠も優しい目で彼女を見つ

める。まるで姫を守る王子のように・・・。


(・・・何この空気?)


永遠は翔太を見てにっこりと笑う。翔太はぽかんっとした表情で永遠を見つめた。


二人の間に何があったのだろう・・・?


この日、彼女と一緒のシフトで嬉しいはずなのに、この場にいるのが苦しくなった。

でも俺はまだスタートラインにも立っていない。だから何も言えない・・・。


翔太はぎゅっと拳を握りしめた。


「翔太、久々に帰りメシ行かない?」

「え?・・・っああ・・・。黒沼は?」

「爽子ちゃんは今日用事あるんだよね?」

「う、うんっ」


むかっ


(・・・なんで彼女のスケジュールまで知ってんの。っていうか・・・!)


「ちょっと・・・」

「ん?」

「・・・・いや」


不快な感情が思いっきり顔に出ている翔太を見て、永遠はぷっと吹き出した。


「・・・なんだよっ」

「いや、ダダ漏れだなと思って」

「へ?」


永遠はにやっと笑うと何事もないように仕事の続きを始める。翔太はこの日、最後ま

でいつもの自然な笑顔が出ずにバイトを終えた。


”爽子ちゃん”


永遠の言葉が頭から離れずに・・・。



*********



「よぉ〜〜〜っ!!永遠、翔太っ!!」

「あ・・・・・」


二人はバイトを終えて食事に出掛けようとした時、向こうから歩いてくる人物を見て

ゲッとした顔をして固まる。


「バイト終わりかぁ〜〜〜?もしかして今から行くん??」


しぃ〜〜〜〜〜〜〜〜ん


飲みに行く仕草をしてやたらとテンションが高い男。そう、茶髪の派手男アキだった。


「俺も行く行く!!女の子も連れてく?」

「あのさ・・・アキさん用事あったんじゃないの?」

「暇やったから遊びに来ただけ。早よ行こっ!!」

「・・・・・」


翔太と永遠は顔を見合わせた。

永遠は俺が彼女を好きだと知ってる。だからこそ今日誘ったような気がした。けじめ

をつける男だ。・・・ということはそれほど彼女が好きだということ?


『翔太』

「え?」


永遠は耳元でこそっと”今度な”と言ってアキと前を歩き出した。


(・・・・俺が気になるって)


そしてその日は何も話せないまま、空気を読めない男に付き合うしかなかった。


「あ・・・そうや。今日は女の子なしでええとこ連れてったろか?」

「「・・・??」」


手をぱちんっとさせて思いついたように目を輝かせているアキを、二人はぽかん

と見つめた。



*********



「さ〜〜〜わこっ!」

「わわっちづちゃんっ」


(どっきりフレンドリ〜〜////)


その時爽子は、あやねと千鶴と食事の待ち合わせをしていた。後ろから千鶴に抱きつ

かれて頬をぽっと染めた。


「今日はイタリアンでどう?」

「まじ〜〜〜??ラーメンでいいのに」

「あんたはね・・・。いつも食べてんでしょうが。爽子、イタリアンどう?」

「わわっ・・・楽しみ」

「きっまり〜〜!!」


この日はたまたま3人の予定が合ったので、食事に行こうと昨日決まった。相変わらず

素敵な店を知ってるあやねを尊敬する。爽子はおいしそうな食事に目を輝かせた。


「うっまそ〜〜〜っ!いっただきますっ♪」

「いただきま〜〜〜す」


そして食事をしながらやはり恋愛話になる。


「それで爽子はあれからどう?」

「?」


爽子はあやねにそう言われてきょとんとした顔を上げた。


「あ〜あんたに”どう?”だけじゃ分かんないよね。バイトはどう?」

「あっ・・・えと楽しいよ。いろいろ皆さんにご迷惑掛けてるけれど・・・」

「ふぅ〜〜〜ん。あの彼は?」

「え?」

「短髪のバイクくん」

「えっと・・・・柏木くん?」


あやねは”そう、それっ!”と言いながら食事を頬張る。千鶴はすっかり食べること

に夢中だ。爽子はなぜか出た永遠の名前に不思議に思いながら最近のことを話した。


「この間、仕事で落ち込んでる私を食事に誘ってくれて・・・とってもいい人なのっ」


あやねは、ぽっと頬を染めながら興奮気味に話す爽子をちらっと見ながら先を促す。


「それで?」

「えっと・・・”付き合って”って言われて・・・・」


しぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ


あやねと千鶴はさらっと言う爽子の爆発発言に、動作が止まるとばっと顔を上げた。


「え・・・・??まじで?」


二人の身を乗り出して驚く姿に、爽子はびくっと身体を強張らせて ”え?え?”と

逆に目を丸くさせる。


「それで・・・なんて?」


さらに乗り出す二人に、爽子は不思議そうにしながらあの時のことをそのまま話す。


「”どこに”・・・って」


しぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ(×2倍)


思わず言葉も出なかったあやねと千鶴だった。








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あとがき↓

相変わらず鈍ちゃんな爽子でごめんなさい。本誌ではすっかり大人になってるのにね。
爽子ちゃんはずっと変わらないでもらいたい。あぁこれは子供に大きくならないでと
言っているのと同じで怖い〜〜〜っ!!そして翔太はヘタレであった。