「naturally」 おまけ番外編


話の中で、大学の友人だという女子と翔太の間に何があったか・・・??

リクを頂き、その女子をクローズアップしました。オリキャラです。

興味ある方は以下からどうぞ↓



























鮎川千紗

私は女の見せ方を知っている。

くるんとした巻き髪や男受けしそうな服、守ってあげたくなる仕草。女はちょっとした

メイクでも変わる。ダサい子を見るたびに思う。どうしてそんな簡単なことをしないん

だろう・・・と。

男の目が変わった時の優越感はなんとも言えない。一回味わうと止められない。男

たちの目は私を輝かせてくれる。でも、もちろん女子たちとも上手くやる。同姓と上手

くやらないとややこしいことになるのを知っているから。

だから、”同じだよ”ということを自然にアピールしながら心のどこかで思ってる。

自分は違うんだと。幸せを誰よりも掴む。

そんな私は少し欲張りかもしれない。でも、一度しかない人生。欲張りで何が悪いん

だろう。きれいごとを言う人間は意気地がないだけだ。欲しいものを手に入れる。

私はそんな自分の生き方に誇りを持っていた。



「千紗〜〜〜〜今日の服可愛いね、どこで買ったの?」

「これ?近くのディスカウントショップで安いんだよ〜〜」

「いつも買い物上手だよねぇ〜千紗は」


ちょっと優越感。女子の間で持ち上げられるのも好き。そして普通をアピール。本当

はもっといいものだったりする。


「また、それで男を釣る気か〜〜?今日、合コンでしょ?」

「そんなじゃないよ〜〜」

「千紗なんてさ、かわいい上に性格もいいなんてズルいよ〜〜っ」

「もしかして、千紗ちゃん好きな奴いんの?」

「ふふっ内緒」

「え〜〜〜!千紗ちゃんに好きな奴いるとショックだなぁ〜〜」


ゼミ仲間でつるむのはだいたい7,8人。男女半々といったところだ。その中でも今の

自分の立ち位置は結構気に入っていた。男からも女からも羨望の目で見られ、楽し

い大学生活。そのゼミの中に彼はいた。


風早翔太


爽やかでかっこいい。彼の存在はゼミ仲間の中でも一際目立っていた。私は友達と

して付き合いながらもさり気なく”女” をアピールしていた。けど、彼はあからさまに

態度に出す人ではなかったが、自分に関心がないのはすぐに分かった。確かに今ま

で自分に興味を示す男ばかりじゃなかった。そういう男は気にしなかった。のに・・・・。

なぜか彼は気になった。そして彼には高校から付き合っている彼女がいると知った。

その事実に私は逆にほっとした。なぜなら、彼女がいるから自分に関心を持たないと

分かったから。”彼を手に入れたい”と思うまでに時間はかからなかった。


あの日、彼女が大学に来ていた。その時カフェにいた私は、そのことを友人達の噂で

知った。今、出て行ったという彼を追いかけた。なぜなら彼女が見たかったから。


彼女の後姿しか見えない。こんなことをすることはプライド的に許せなかったが、どう

しても彼女が見たかった。たまたま二人が行った方面は私の家の方だった。そして、

出てきた二人。やっとはっきり彼女が見れた。


なんだ・・・たいしたことないじゃん。


私はその時きっと笑っていた。二人のキスシーンなんてどうでも良かった。風早より

も彼女ばかり見ていた。


『あ〜〜〜ちょうど良かった。風早にゼミのことで伝えないといけなかったんだ。

 今、ちょっといい?』


少し身体をくねらせて、柔らかく笑う。彼女を見た時から自分の中で自信が満ちてい

くのを感じていた。そして走って逃げる彼女。心の中で”やった!”と思った。

私は追いかけようとする彼を止めた。服をぎゅっと掴む。


『風早っ!・・・ちょっと待って』


風早はものすごく焦ったような顔をしていた。当然だろう。彼女は怒ってるんだから。

すぐには無理だろう。でもゆっくりと慰めればいい。最初に彼に彼女がいると聞いた

時からこうなることが予想できていた。私は興奮を必死で押さえて言った。


『ごめんっ・・・なんか誤解させた?』

『いや・・・別に・・えっ?鮎川?』


彼女の姿が見えなくなっても、後を追おうとしている彼を涙を溜めた目で上目使いに

見つめる。


『わ・・わたし、風早に彼女がいるのを知ってたけど・・・ずっと想いを止められなくて

 すごく苦しかった』

『・・・・え?』

『私にとって風早は・・・・ぐすっ・・・ただのゼミ仲間じゃないよ』

『・・・鮎川』


目の前の彼は困っていた。私は泣きながら指の隙間から彼の動向を見つめる。今ま

でこれで落ちなかった男はいない。欲しいものは全部手に入れる。悪いけど、彼女に

はそういう運命だと思ってもらうしかない。だってたった一度きりの人生なのだから。


それなのに・・・。


『ごめん』

『!』


ばっと顔を上げると、躊躇した様子もなく真っ直ぐ私を見ている風早がいた。


『俺、なんか気を持たせるようなことしたんだったら・・・ごめん』


え・・・・?


『俺、彼女以外の気持ちには応えられない』


”「じゃ、」”と言って彼は彼女を探しに行った。


え・・・・?


私はまるで夢を見ているようだった。いくら彼女がいなくなって焦っているからって私

の言葉にこんな風に簡単に返す?もっと構うのが普通じゃないの?それも私だよ。


その場に佇みながら、私は声にならない声で叫んでいた。


いろいろ上手くやってきたつもりだ。楽しい大学生活。男たちの目はいつも私に注が

れている。皆私を羨ましいと思っているはず。そしてかっこいい彼氏がいたら完璧だ

と思っていた。


気づくと、周りはしっかりと堅実に恋をしている。もてはやされることより、たった一人

の大切な人が側にいる。


私が求めていたものは何なのだろう・・・・。


風早が好きだったわけじゃない。ステータスが欲しかっただけ。あれからも風早とは

普通に接している。彼女と仲直りしたらしい。風早は私とのことを誰にも言わない。

それはもちろん都合が良かったけど、彼にとって足るに足らないことだったと思うと

なぜだか空しくなった。ある日、たまたま二人になった時、彼がぼそっと言った。


「・・・今さらだけど・・・あん時、ごめんな。ちゃんと答えられずに。俺、余裕なくて

 かっこ悪りーとこ見せたよな」

「・・・・」


その時の彼の表情は初めて見るものだった。彼女と私は違う。それが悔しいほど感

じられる。たかが恋。別にそんなものが欲しいんじゃない。そしてまだベールを被る。


「いいって、私もそんなでもなかったから。もう忘れてっ」


かわいい私を演出する。本音を言うつもりはない。


「良かった・・・鮎川ちょっと最近、元気なかったから」

「!!」


なんで、どきっとしたのだろう。その時の感情はよく分からない。今まで感じたこと

のない感情だった。


私はその時初めて、彼女が羨ましいと思った。









<END>

web拍手 by FC2







あとがき↓

ちょっとくるみちゃんっぽいけど全然違う。くるみはちゃんは本気で風早が好きだった
んだもんね。野望の強い人って恋より大切なものがあるかもしれませんね。そういう
意味ではこの子はきっと大成しますよ。最初は名もない通りすがりのキャラだったの
ですが、リクを頂いて妄想しました。風早はビジュアルよく爽やかだけにステータス
目当てに彼氏にしたい人って出てきますよね。中身は真実一路の爽子バカなのにね!
リクを下さったC様、読んで下さった方、ありがとうございました。オリキャラにはやたら
と燃えるsawaloveでした。