「naturally〜鮎川千紗その後」
オリキャラ人気投票企画第一弾!!
オリキャラ人気投票第一位、鮎川千紗話です。「natually」以後しばらく経ってから
鮎川千紗の中で何かが変わっていた。どう変わっていったのか??
★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・
恋人同士にとって最もロマンチストな聖夜
「千紗ちゃん。クリスマスさ〜楽しみにしておいてね」
「うん。楽しみ♪」
私は目の前の男ににっこりと男受けスマイルをして見せる。クリスマスに一人なんて
プライドが許さない。人が持っているのに私が持ってないのは嫌だ。私にとって恋愛
はアクセサリーだ。より良いものを身に付けて周りから羨望の眼差しで見られるため
日々努力してきた。だから、自分に関心を持たない男が現れるとすぐに無視した。そ
んな男に構っているだけ時間の無駄だ。何より私の魅力が分からないなんてレベルが
低い男だと心のどこかで思っていたから。そうやって自分に自信を持って生きてきた
のに、なぜ最近こんなに満たされないのだろう。気づくと心が枯渇してる。
(・・・お金もあるし、ビジュアルもいい)
千紗は頬杖突きながら目の前の彼氏を虚ろな目で見つめる。そして周りの羨望の眼差
しに気づいて、気持ちを持ち直す。”これでいいのだ”・・・と。
その時だった、周りの視線の一つに千紗は目が留まった。
(・・・え?)
頬を紅潮させながら、こちらを見ていたのは・・・風早の彼女だった。あの長い黒髪
を忘れるわけはない。私は思わず立ち上がった。
「ごめん〜〜〜っちょっと用事を思い出しちゃった。この後の映画キャンセルしていい?」
「え??」
『用事が済んだらお部屋行くからぁ』
こそっと身体を密着させながら耳元で言うと、彼は満足そうに頷く。男なんて簡単と
心のどこかで思っているけど、あくまで従順そうに振る舞う。そんな心の内がばれる
と周りは狡いと言うかもしれない。でもそれもテクの一つなのだ。より良いアクセサ
リーを身に付けるための。でもそんな自分自身に揺らぎを感じている。
そう、彼に会った後は必ず・・・・。
* * *
『ー鮎川。次の講義どこだっけ?』
『え・・えっと201』
『さんきゅ、一緒に行こっか』
あの告白後、一線を引いていた風早も私に彼氏が出来たと知って、以前のように普通
に接してくれるようになった。大学の仲間の一人。それが不思議なのだが悲しかった。
風早の彼女が羨ましく思った後から、私は初めて風早と上手く接することができなく
なった。男は私のステータスを満たす大切なアクセサリーだったのに。あの笑顔、声
髪、大きな手・・・全部、気になって仕方がなかった。
彼女にはもっと他の表情を見せるのかな・・・とか、艶めいた声でどんな言葉を囁く
のだろう・・・とか、あの柔らかい髪や大きな手に触れたい・・・・とか。今まで、
私が男に求めるものとは明らかに違った。横を歩くだけで幸せな気分になるなんて。
こんな自分を見ることになるなんて・・・・。
* * *
「風早の・・・彼女さんだよね?」
「え?」
彼女はカフェで一人、お茶をしていたようで突然背後から呼ばれた声に驚いたように
振り向く。私はにっこりと笑いかけた。
「私、風早の大学の友人で鮎川千紗って言います。いつか公園で風早といるところを
見かけたことあって・・・」
「あっ!!」
彼女は思い出したように顔を輝かせて頬を赤らめた。派手でなく、それほど垢抜けて
もない風貌をしっかり見ると、自分の方が女力が高いと改めて実感する。
「前・・・座っていい?」
「う、うんっ。どうぞ」
彼女はいかにも嬉しそうにカバンをのけた。なぜ嬉しそうなのかは分かっている。
「さっき見てた?」
「あっ////ご、ごめんなさい。あまりにもお似合いだったので・・・」
そう、羨望の眼差しを感じたから。ビジュアル的にいい上に服のセンスもいい。そ
んな人を選んだのだから。
「風早もカッコいいじゃん」
「う、うんっ・・・そう思います」
当たり前のように肯定する彼女に少しむかついた。イラッとした私はずっと心の中
で思っていたことを吐いた。彼女と話したいと思ったのはそのことを言いたかった
からだ。
「・・・でも、ちょっと意外だったぁ。風早の彼女ってどんな人って思ってたから」
「!」
彼女は一瞬ハッとした顔をして悲しげな表情になった。その時なんだか興奮を感じた。
内から湧き上がるマグマのような興奮。私は笑っていたと思う。でも彼女は暗い顔か
ら一転して笑顔になって言った。
「翔太くんは・・・モノクロだった私の世界に色を付けてくれたの」
「・・・どういうこと?」
「高校の時・・・自分を出せなかった私を翔太くんだけは真っ直ぐ見てくれたの・・・・」
どくんっっ
その時、なぜか胸の奥に鈍い音を感じた。彼女の言ったことが嫌味だったとしたら
きっと言い返していたと思う。”風早は表面的に自分を好きになったのではないと言
いたいの?”・・・と。でも、悔しいほど嬉しそうな顔をするから。
「・・・鮎川さんみたいにかわいくはなれないのだけれど、自分なりに努力しようと
思っています」
そして私を見る羨望の目は他の誰よりも輝いていた。
風早が好きな彼女・・・。私はその時嫉妬より、やはり彼女が羨ましかった。中身を
好きになってもらえた彼女のことが。
* * *
『千紗ちゃん〜〜〜かわいいから何でも許されちゃう。俺も許しちゃうな』
『ほんと千紗は得だよね〜〜〜』
たまに教授から持ち上げられると、優遇されたと周りに騒がれる。そこに私の努力が
あったことは知らない。女力を上げることが努力の上に成り立っていることを知られ
たくないけど、こういう時は寂しい気分になったりはする。
『ー鮎川はいつもちゃんとやってるじゃん。提出物も遅れないしな』
どくんっっ
心臓が大きく脈打った。男はアクセサリーだった。でも簡単に身に付けられないアク
セサリーがあることを知った。そして誰かの言葉にこんなに嬉しいと思う自分自身も。
その声は私の中で大きく響いた。爽やかな笑顔と共に・・・。
* * *
「・・・うん。そだね。風早はちゃんと見る目あるかもね」
「?」
私はそのまま無気力で彼女の前から去って行った。本当は分かっていたのだ。風早が
私を好きにならないこと。どんなにビジュアルや女力のテクを磨いても、彼の心を動
かす中身を持っていないのだから。風早はアクセサリーじゃなかった。だから、渇望
しても手に入らない。彼女にしか・・・。
ピ〜〜ンポンッ
彼のアパートのベルを鳴らすと長い沈黙の後、バタバタと焦ったように彼が出てきた。
「お、遅かったね。もう来ないと思ったよ」
明らかに寝ていた感じだった。でもそこは女の勘。靴箱の隅に隠されたヒールのかかと。
(・・・あぁ、そうか)
結局、私もアクセサリーなのだ。自分がした仕打ちは見事に返ってくる。その時浮かん
だ風早の顔。恋愛は重くなんかなく、簡単に身に付けられるもの。だけど、本当に欲し
いものは軽くなんかない。簡単なんかじゃなかったのだ。
「うぅ・・・ううっ・・・ひっく」
喉の奥が熱くて痛い。彼に裏切られたことより、初めて”失恋”がこんなに悲しいものだ
と知ったことに涙が出てきた。この失恋は一生忘れることはないだろう。涙と一緒に流
れたせつない気持ち。今度は本当の自分をちゃんと見てくれる人を好きになろう・・と
心に誓った。
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シヤラランラ〜〜ン♪ シャンシャン♪
町はクリスマス一色。クリスマスイヴには甘いムードのカップルがいっぱい。この中に
どれだけアクセサリーじゃない恋愛をしている人がいるのだろう。周りの羨望の目は心
の奥底まで満たしてくれているのだろうか?
私はクリスマスの街中を歩きながら、初めて一人でいることを誇りに思った。
<おわり>
あとがき↓
あぁ・・・これはリクエストに応えられてないですね。どうしても「revenge」できま
せんでした。その設定にすると長い物語になりそうで。あまり爽子を絡ませたくなかっ
たのでお許しください。投票してくださった方がどのようなお話を望んでいたのか分か
らなかったのですが、一応一位と言うことで書かせてもらいました。満足できなかった
らごめんなさい。題名何かいいのありますかね〜(´д`)ところで、爽子は中身だけでは
なく外見もかわいいと風早はもちろん思っているでしょうけどね!あえてこの話はこう
させてもらいました。さて、次は第二位ののハルくん行きますね!
オリキャラ話にお付き合いありがとうございました。