「naturally」 11〜最終話

この話は「君までもうすぐ」のその先を書いた話です。あの夜、未遂に終わった二人
が最後の関係までいくのがテーマです。(いくのか!?)ヾ(´ε`*)ゝ エヘヘ

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こちらは「naturally」           10  の続きです。


※ 「君までもうすぐ」を読まなくても全然大丈夫です。


☆ 「すき」の先にある感情は嫉妬だったり、劣等感だったり・・・いろいろなことを経験して

   二人は新しい扉を開けていく。
  























「naturally」


辞書で知らべてみると、「自然に」の他に

「気取らないで」「飾らないで」という言葉があった。

私は自分を飾っていたのだと思う。そして焦っていた。

どんどん自然にできなくなっていった。

彼の”特別”になりたくて。

でも答えはその中にあった。


私が私らしくいること。飾らないで彼と向き合うこと。

それが ”naturally”

そんな私でいたい。

大好きな人が側にいる限り


これからもずっと・・・・。









「naturally」(11)〜The last story

























翔太は緊張気味に爽子を部屋に入れると、お茶の準備を始めた。大学に入ってから

一人暮らしを始めた翔太の家で会うことは滅多になく、外でデートすることが多かった。

爽子は新鮮そうに目をきらきらさせて翔太の部屋を見渡した。


「そっか、久々だもんな」

「う、うんっ」


翔太は、コーヒーを入れて机に置くと、ふーっとため息をついた。そして机を挟んで

爽子と向き合った。


とくんっ


翔太の真剣な表情に思わず息を飲む。その目には迷いがなかった。翔太は今まで封じ

込めていた想いを言葉にする。


「・・・俺が、どうしてあまりここに爽子を呼ばないか分かる?」

「・・・え?」


きょとっと目を大きくして困惑している爽子を見て、翔太はふっと笑う。


「ははっ・・・分かってたらこんな風になんなかったよな」


そして顔を手で覆うと、せつなそうな表情で爽子を見た。


「爽子さ・・・覚えてる?あの日、俺が言ったこと」

「・・・え?」


”あの日・・・”


それは高校卒業前に遠出デートをして、思わぬハプニングで一緒にホテルに泊まった

日のことだった。・・・翔太くんが言った言葉。


”『俺・・・男だから。その先に進みたくなるんだ。黒沼をもっと知りたくて』”


「俺がずっとその先に行きたくて・・・・自分が怖かったんだ」

「こ・・・わい?」


翔太は自分に向き合うように素直な気持ちを伝えた。


「うん。爽子が俺を受け入れてくれるまで待とうって思ってたのに・・・だって、俺の下心

 と爽子のは違うと思ってたから」

「・・・・」

「大学に入って会えない時間が増える中、爽子はどんどんきれいなって・・・久々に会ったり

 すると、すぐに触れたくなって・・・・。」

「・・・・・」


翔太くんが私と同じことを言った。心臓の音がどんどん大きくなる。

爽子はぎゅっと胸を押さえた。


どくん、どくん


「俺も不安だったよ。俺の知らない世界で、知らない奴に笑いかけていたりすると、嫉妬

 でいっぱいになったりした・・・」

「・・嫉妬?」

「うん。もともと俺、独占欲強いし」


翔太はそう言うと、少し照れたように顔を隠した。


爽子はその姿をぼーっとした顔で見つめながら、昼間の光景を思い浮かべて、ハっとした。


そっか・・・あの感情は・・・。


黙り込んで茫然としてる爽子を心配そうに翔太は覗き込んだ。


「爽子?」

「ーわわっ!!」


気づくと翔太の顔が近くにあり、爽子は思わず体制を崩した。近づくと身構える爽子に

翔太はぶすっとして冗談まがいに言う。


「うわっ傷つくなぁ・・・」

「わわっ違うのっ・・・そのっ」


じとっと上目づかいで翔太を見つめると、翔太は赤い顔をして爽子を見つめ返す。


「わ、私も・・嫉妬してたのっ!!/////」

「・・・・・え?」


爽子が初めて感じた人に対して嫌な感情は”嫉妬”というものだった。恥ずかしいと

思っていた感情。でも・・・それも


(・・・翔太くんと同じ)


涙が伝う爽子の頬に翔太は優しく触れた。そしてずっと変わらない、一途で真っ直ぐ

な目が見つめる。


トクンッッ


心臓の音が聞こえそうだった。そしてきゅんっと胸が痛んだ。苦しいぐらい・・・。


「俺、二人っきりになると、止める自信がないから」


ドッドッドッ


「・・・爽子。はっきり言って」


翔太くんの目はとても熱かった。まるであの日のように・・・。今なら分かる。彼が何を

求めているのか。いつの間に彼の目は大人になっていたのだろう。色香さえ放つ。


「爽子の下心は・・・俺と同じ?その先って・・・」


どくんっっ


それは”男”の目だった。


「俺は、爽子を抱きたい・・・そういうことだよ」


ドッドッドッッ


心臓が壊れそうなほど激しく暴れていた。爽子は揺らぐことない気持ちを噛みしめる

ように翔太を見つめた。


「だ・・・大好きなのっ」


思いのまま気持ちを言葉にした。いつもうまく伝えられない。言いたいことの半分も

言えない。でもそんな私を全部受けて止めてくれる翔太くんだから。きっと、その先

もきっと・・・・。


「翔太くんと・・・同じ・・だよっ///」

「・・・爽子」


翔太は嬉しそうに微笑むと、優しく爽子を抱きしめた。


いつも思うの。翔太くんはまるで壊れ物を扱うように優しく私に触れる。大きな骨ば

っている手なのにとても繊細だ。


「・・・・嬉しい。夢みたい」


爽子は抱きしめられながら、素直に感じるまま自分を受け止めた。この温もりをずっと

待っていたこと。そしてもっと知りたい・・・と言う気持ち。


「俺も爽子が大好き。言葉なんかで言い表せないくらい・・・」


とくん、とくん。


この人が愛しい。なんだろう・・・この感情。彼を守りたい。たまらないほどそう思った。

いつも守られてばかりいるのに、不思議だ。


爽子はぎゅっと翔太の背中に回した手に力を込めた。翔太も力を込める。


「ふさわしくないとか・・・そんなの、俺の方が思ってる。いつも前向きで一生懸命

 で、純粋な爽子に憧れてる。だから、俺も頑張ろうって思える」

「翔太くん・・・」


翔太はその後、優しく微笑んで少し照れたように言った。


「・・・もうっ我慢しなくていいんだよね?」

「/////」


私が何かを言おうとする前に、もう唇を塞がれていた。身体の芯がじんじんしてくる。

色々自分の中で考えるより、言葉にしないと分からない。そして、身体の感じるまま

受け止めればいいのだと思った。


そして翔太くんは優しくて包み込むような瞳で言った。


「大切にする」


その言葉がすごく優しかった。愛しい・・・愛しい。この気持ちがすべてなのだと。


”「いつか・・・・黒沼の全部もらうよ。覚悟しといてね///」”


あの日、言われた言葉。


好きだから感じ合いたい。それが自然な行為なのだとやっと私は気づくことができた。

この感情は決して恥ずかしいものではないことを翔太くんは教えてくれた。これから

も不安になって、迷ってそして翔太くんを困らせるのかもしれない。でも、こうやって

心と身体が感じるまま、そのままの自分と向き合えばいいんだ。


それが「naturally」・・・なのだから。


その夜、”初めて”のことをいっぱいした。怖くなかったと言ったら嘘になるけれど、

すごく幸せで、翔太くんの初めてをたくさん見れた。男らしいのに優しくて繊細な

手が私に触れる。そのたびに心臓が破裂しそうだった。でも嬉しくて、愛しくて、

もっともっと知りたくなったの。初めての翔太くんが・・・。


ベッドの中で何度となく翔太くんが囁いてくれた言葉 ”好きだよ・・・”そのたびに

身体の力がふっと緩んだ。そして私も必死で伝えたの・・・大切な気持ち。


「翔太くん・・・好きっ・・・大好き!」


甘くて、幸せな時間をいつまでもいつまでも味わいたかった。夢ならば醒めないで・・

と願いながら・・・。



* * *



「ヘタレ下心のみ太くんは今もヘタレだろ」

「はぁ?」


あれからすっかり元気を取り戻したピンは、あやねとのデート途中いきなり呟く。


「こりゃ、俺様の出番かな」

「ちょっと、アンタ余計なことしないでよねっ!」


そして、あやねはふっと魅惑の笑みを浮かべた。


「アンタなんか出る幕無しよ・・・今頃。ふふっ」

「??」


あやねは青い空を穏やかな顔で眺める。二人の幸せを願いながら・・・。



木々の葉っぱも落ちかけ、季節が移り変わろうとしていたころ、二人の新しい関係

が始まろうとしていた。


また一つ、二人の「初めて」が増えたね・・・。






<おわり>

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あとがき↓

漫画なら最後はおでこをくっつけた二人の絵。というところでしょうか。すみません、一話
伸びでしまって。全部入りきれなかった。翔太からあの女子のことを出そうかと思ったけど
翔太がわざわざ話題にしないように思ったので止めました。絶対この人って好きな人以外
受け入れられない人ですよね。R18描写ができないところがもどかしい・・。それでは最後
まで読んでくださってありがとうございました。