「Half moon」(23)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
飲み会の帰り、蓮と風早は飲み明かすことになり夜道を歩いていた。
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 の続きです。
それではどうぞ↓
















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「ごめんな」

「何が?」


飲み会の帰り道、蓮の横で風早が自転車を押して、夜道を歩いていた。


「この間さ・・・二人の邪魔しちゃって」

「あはは〜〜いつの話だよ。もう大分たってるけど」


風早は蓮の言葉に大笑いした。明日は休みということもあり、風早の部屋で飲み

明かそうということになった。蓮は風早のアパートに行くのは初めてだった。



帰る夜道、夜空にはたくさんの星と月が輝いていた。北海道ではもっときれいに

星たちが見える。彼女と別れてから日々をなんとかこなしているけど、彼女を思い

出しては愛しい気持ちが溢れだし、その度に胸の奥をえぐり取られるような痛みに

襲われる。風早も爽子と同じ気持ちで毎日を送っていた。


「・・・・・・」


蓮は月を見上げる風早を見て言った。


「やっぱ・・・翔太ってすごいな」

「え?」


風早は我に返ったように視線を蓮に向けた。


「素直に自分の気持ちをぶつけられる翔太はすごいよ」

「そっ・・かな?逆に子どもじゃねーの。ははっ」


蓮は社交辞令など言う男じゃなかった。そんな蓮が珍しいことを言うので、風早

は照れた顔をして言った。


「いや、彼女をきっと不安にさせない。真っ直ぐだもんな。それに、すっげー

 大切にしてるって分かったよ」

「・・・うん。すっげー好きなんだ。」


蓮は月明かりに照らされた風早の横顔を見ていた。その顔は余裕のある男の顔でも

恥ずかしそうな顔でもなく・・・ただ単に彼女に恋焦がれている少年の顔だった。


「彼女がどうなっても・・・自信ある?」


蓮は俯きながら風早の自転車の車輪を見て言った。


「え?どうなっても?」

「ん・・・例えばさ・・・事故で五体満足じゃなくなったり、植物人間になったり・・・」

「・・・・・」


風早は思いがけない蓮の質問に言葉を失った。そんな風早を見てはっとしたように蓮は言った。


「ごめん。答えなくていいよ。こんなネガティブな質問」

「いやっ、いいんだけど蓮って「〜たら」「〜れば」なんかを考えるタイプじゃない

 って思ってたから意外っつーか。」


風早は改めて思った。気が合うからといっても付き合いは短い。知らないことがあって当たり

前のはずだ。風早は口をぎゅっと結び目を瞑って考えた。


「・・・そうだな。どうなるかな?正直その時にならないと分からないかも。でも・・・・

 今、彼女がいなくなることの方が怖いかな。どんな状態でも生きていて欲しいって思う」


風早は、ははっと照れ隠しに笑って顔を見られないように俯いた。


「・・・・そうだな。・・・・・ありがとう。翔太」

「??何が?」

「いや、こっちのこと。もうすぐ?翔太の家?」

「ああ・・・ここ曲がったとこ」


翔太は不思議そうに蓮を見て、蓮は少し微笑んで夜空の月を見上げた。



****************



時々、蓮の家で飲むことがあるが、いつも蓮の方が酒に強いので風早が先に眠って

しまっていた。この日も夜中のサッカーを見ながら風早は眠りについてしまった。


「また翔太の負け」


もう夏前といっても、夜中は少し冷える。蓮は1LDKの風早の家を見回し、毛布を

探した。ベッドを見つけて、そこに毛布を取りに行く。そして、サイドテーブルに

ある写真立てを手に取った。

そこには爽子と翔太の二人の写真。


「っく・・・マジで翔太ベタボレだな・・・」


思わず蓮は笑いが込み上げてきた。そして、ふっと寂しげな表情をして呟いた。


「すげーよ・・・やっぱ・・・」


****************


爽子と風早は一ヶ月に一回会おうと約束した。その一ヶ月は長かったが、お互い

忙しいのが不幸中の幸いだった。


「後、何日かな・・・・」


爽子は寝る前にカレンダーにペケを書いた。今度も仙台に行く約束をしていた。

彼のことを考えると身体が熱くなる。


「やだ・・・・私ったら///」


両手をほっぺに当てて、爽子はベットにうずくまった。

風早に愛されたあの日から、どんどん欲張りになったと爽子は感じていた。


「今、何してるのかな・・・」


風早の生活が見えない毎日は余計なことも考えてしまう。高校の時から男女関わらず

人気者だった。きっと仙台でも沢山の人に囲まれているのだろう。きっと彼を好きな

女の子も現れるに違いない。

そんなことを考えていると、爽子は段々暗くなってきた。


「ああ〜〜〜〜〜〜〜っ」


爽子は自分の嫌な妄想を打ち消すように、無理にぎゅっと目を瞑った後、

携帯の待ち受けを嬉しそうに眺めた。



一方、爽子より何倍も嫉妬心の強い、風早氏は・・・・。


「後、何日かな・・・・」


風早はカレンダーにペケを書いた。その後、座っているベッドを見つめる。

2週間前、ここに爽子が居たなんて・・・・。こんな顔で眠っていたなんて。

風早は愛おしそうに携帯の待ち受けを眺めた。

もう、爽子の甘い香りはここにはしない。


「ああ・・・・抱きしめたい」


そう言って、枕を抱きしめる風早。


「ああ・・・・アホだ!」


さすがに自分で自分が恥ずかしくなって、ぽりぽりと頭を掻いた。

もう、今日はいつもの電話が終わっている。でも声が聞きたい。どんどん気持ち

が膨らんでいく。風早は携帯の待ち受けをとろ〜んとした顔で見ながら、眠ろう

とベッドに横になったその時・・・・


Pululu〜♪


「え??」


画面表示は”爽子”


ピッ


「は、はい!」


風早は思わず声が上ずった。なにせ会いたくて、思わず枕を抱きしめた自分だ。


『ご、ごめんなさい!!もう電話したのに・・・』

「どうしたの?何かあった?」

『ううん・・・・違うの』

「え?」

『寝る前に・・・やっぱり風早くんの声が聞きたくなって・・・』


恥ずかしそうにそれでもちゃんと伝えてくれる爽子に風早は思わず茫然としたまま

携帯を握りしめていた。


『風早くん・・・ごめんなさいっもう寝るとこだよねっ!切るね』

「あっ切らないで!すっごく嬉しい!」

『え・・・・・』

「嬉しい。俺も爽子の声が聞きたかった」

『ホ、ホント?』

「本当だよ。いつも爽子の声や爽子を感じていたい」

『風早くん・・・』


爽子は風早の声に自分の中のもやもやした気持ちが澄んでいくように感じた。


「ねぇ、爽子。外見て。今日はハーフムーンだよ。これ俺の気持ち」

『風早くんの気持ち・・・?』


爽子はそう言って、窓の外の月を眺めた。


「うん。半分だけ。爽子がいないと。ずっとハーフムーンなんだ。一緒にいられて

 やっとフルムーンになれるんだよ」

『うん・・・・私も』

「だから・・・俺頑張るから。」

『え?』


風早には爽子を想えば想うほど、強くなる気持ちがあった。


「早く一緒にいられるように頑張るから。」

『・・・・・うん。私も』


そんな爽子にぷっと笑いを押し殺した。男が頑張ればいいのに、そこは爽子だ。


爽子は風早が言いたいことが分かった。それは遠い未来の話。

未来の保証なんか今の二人には何もない。遠く離れていてもただ、お互いを信じるだけ。


爽子は風早の言った、ハーフムーンをもう一度見上げて、愛おしそうに微笑んだ。


”一緒にいられてフルムーンなんだ・・・”








あとがき↓

毎日暑いですね〜〜っ。でもやはり私は夏が好きなのでパワーが出ます。忙しいはずの夏が
なぜか順調に更新出来ている感じ。暑過ぎて外に出られないのがいいのかも(笑)ところで
アニメDVD全巻揃いました。カルピン先生書きおろしDVDBOXがもらえるんですって。これは
部屋に置いておけるので欲しいかな。またGETしたら写真でもUPしますね。それではまた
遊びに来て下さい。

Half moon 24