「naturally」 2

この話は「君までもうすぐ」のその先を書いた話です。あの夜、未遂に終わった二人
が最後の関係までいくのがテーマです。(いくのか!?)ヾ(´ε`*)ゝ エヘヘ

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こちらは「naturally」  の続きです。


※ 「君までもうすぐ」を読まなくても全然大丈夫です。


☆ 爽子は会うたびに下心が広がっていく自分に戸惑っていた。そんなある日二人は
  久々のデートに出掛けるが・・・?
  






















最近ずっと変だった。

大好きなのに一緒にいると苦しくなる。必死で隠している下心。

自分でも分からないこの感情がどんどん広がっていく。

いつか分かる時が来るのだろうか?

この感情の正体が・・・。







「naturally」 (2)









どくん、どくんっ


どうしてこんなに自然にできなくなったのだろう?前はもっと自然にできていたよう

な気がした。手を繋がれたところから熱が籠ってくる。


(・・・どうしよう。ドキドキが伝わりそう・・)


翔太は俯き加減の爽子の顔をちらっと見ると、沈黙を避けるように言葉を発した。


「早く行かなきゃ、映画始まっちゃうな」

「う、うんっ」

「急ごっ」


その時ブルブル〜〜ッと翔太の携帯が鳴った。爽子は思わず身体がびくっとなる。

鳴り続けたまま、翔太は出ようとしない。


「翔太くん、携帯・・・」

「いいんだよ。無視して」

「でも・・・」


しかし、それからも鳴り続ける携帯。あまりのしつこさに翔太はばっとカバンに手を

突っ込むと、表示を見て辟易した顔で渋々電話に出た。


「だからっ・・何だよ」

『何してんだ〜〜〜〜俺様の電話というのに何してた〜〜〜〜ぁ!!』

「あのさ・・・俺も暇じゃないんだかんねっ」

『黒沼いるか?』

「え・・・何?」


風早が爽子をちらっと見ると爽子はきょとんと目を泳がせた。


ピッ


「どうしたの・・・?翔太くん」


電話を切った後、何もなかったようにする翔太に爽子は不安そうに聞いた。


「いいんだよ。アイツいつも俺らの邪魔すんだから」

「え?」

「アイツだよ。ピンッ」

「え?荒井先生?どうしたの?」

「またなんか体調悪いとかでさ・・・・矢野を呼べっつ〜〜の」


すると、再び翔太の携帯のバイブが鳴る。翔太はイラっとした表情でボタンを押した。


「−ったくっ!!だから何?」

『お前、まさかスルーしようとしただろ?横に黒沼いるだろ〜〜〜黒沼ぁ〜〜〜ごほっ』

「ああ"〜〜〜〜っだから?」

『お前そんな態度していいのか?あんなことこんなこと・・・ごほっ全部黒沼に言ってい〜んだな』

「〜〜〜△○×■!!」


翔太はがくっと肩を落とした。この男には弄られ続ける運命なのだ。翔太はちらっと

爽子を見ると、ため息交じりに言った。


「ごめんな・・・マジで」

「ううん、先生のお役に立てるのなら嬉しいよっ」

「でも、映画・・・」

「先生の方が大切だよ」


正直にそう思っているだろう爽子の言葉に翔太は少し苦笑いをした。


爽子は心のどこかで安堵感を感じていた。いつの間にか緊張感でいっぱいいっぱいに

なっていた。自分の下心が見られそうで、最近翔太といると固くなってしまう。

そんな爽子の最近の変化に翔太も気づいていた。


「・・・今、もしかしてホッとした?」

「え??」


どきっ


爽子は、心を見透かされたような翔太の言葉に思わず目を見開く。翔太の真っ直ぐな目

にさらに爽子は戸惑いを隠せない。


「な・・なんで?」

「・・・そんな顔してたから」

「・・・・・」

「ねぇ、爽子。思ってること正直に言って」


真剣な翔太な目に爽子はますます瞳を揺らす。


(ど・・どうしたらいいのだろう。正直に言ったらきっとびっくりされる・・・)


翔太は爽子の肩を力強く掴むと、近い距離で一時も視線を逸らさない。そして翔太の

瞳も不安に揺れていた。


「俺のこと・・・嫌になった?」

「・・・・」


(・・・・え?)


あまりの予想外の言葉に爽子は言葉が出てこず、頭の中でその言葉を反芻していた。

その時、勢いよくドアが開く。


がちゃっ


「こらぁ〜〜〜〜〜ごほっ!玄関先でなにやってる!!」

「「!!」」


二人はびくっとしたように開いたドアから聞こえるピンの声に反応した。翔太は伸ばし

た手をさっと引っ込めると、戸惑い気味に爽子から視線を逸らした。




* * * *



(・・・ちゃんと話さなきゃっ)


タイミングを逃してしまった爽子は複雑な気持ちのままピンの世話をしていた。


「ごほっ・・・ごほっ・・・どうだ、黒沼。俺大丈夫か?」

「う・・ん、ちょっと熱が高いですね。風邪だと思います」

「そうか・・・でも黒沼が来たからもう安心だ」

「〜〜〜〜〜!」


その後ろからぎろっと睨む視線。


「なんだよ、翔太。うらやましかったら、ごほっお前も熱出したらいいだろ」

「なっ・・・!」


ピンの言葉にカっとなった翔太はぷいっと顔を横に向けぶつぶつ言った。


「そんなの・・・・してもらったことあるし。それより矢野は??一応彼女だろがっ」

「あ〜あいつ、つめて〜〜んだよ。ごほっバイト休めないからって」

「当たり前だよ。たかが風邪ぐらいで。それよりこの部屋なんとかしろよ。こっちが

 病気なるわ」

「あっ、お部屋も片付けておきます。こういうことは得意なので・・・」

「おぉ・・・(除霊か)」

「〜〜〜〜〜!!」


翔太はそう言って、せっせと嬉しそうに片付ける爽子の手伝いをするしかなかった。

こんな風にデートの邪魔をされたこと数知れず・・・。


そのうち、が〜〜〜が〜〜〜〜とピンは眠ってしまった。

その姿を見て、翔太は大きくため息をついた。つついても何しても起きない。


「ほんと・・・お気楽だよな。」

「よかった・・・。これで良くなるといいね」


爽子がそう言って翔太を見ると、翔太の熱い視線が自分に向けられていることに気づいた。


とくんっ


「あ、あのっ翔太くん」

「ん?」

「さ、さっきのお話なんだけどっ」

「あ・・・うん」


翔太は真面目な顔になって爽子に身体を向き直した。


「誤解なのでっ。翔太くんを嫌になることなんて・・・絶対ないよ」

「爽子・・・」


翔太はぱぁっと明るい顔になり、一気に脱力したように前に臥せた。


「良かったぁ〜〜〜〜っ。俺、なんかしたのかと思った」

「あっごめん・・・不安にさせてしまって・・」

「ははっ。嫌われてなかったらなんでもいいよ」

「・・・・」


どくんっ


お日様のような笑顔にまた心臓が煩くなる。爽子は一緒に居たいのに一緒にいると、

前みたいに自然にできなくなった自分に苦しんでいた。


いつからこんな風になったのだろうか・・・?

自分でも分からないこの気持ちを彼に分かってもらえるのだろうか・・・?

素直に言ったら彼に嫌われないだろうか・・・?


(・・・恥ずかしいっ)


複雑そうな表情で視線が定まらない爽子を、翔太は覗き込んで言った。


「でも、何かあった?」

「・・・・」


とくんっ


爽子は翔太に見つめられ、視線を外せなくなった。


翔太くんを不安にさせている。このままではもうだめ・・・ちゃんと自分の気持ちを伝え

なくては。いつでも翔太くんは100%で応えてくれるのだから。

自分も・・・・。


(・・・大丈夫っ)


爽子はぎゅっと下唇を噛むと決心したように翔太に向き合った。


「あ・・・のね・・」


どくん、どくん


部屋に二人の空間。爽子の緊迫した表情を翔太は真剣に見つめた。








「naturally」  へ続く









あとがき↓

ピンはいるけどね( ̄ー ̄)ニヤリ・・・これ楽しい。爽子の下心ってかわいいですよね。大学生
になってやっとステップアップする爽子ちゃん。翔太はかわいくて仕方ないっすよ。本誌で
あるわけないので二次で思いっきり書いておく( ^ω^)本当に中学生のような恋だな・・・。