「naturally」 1


こちらは大分前に書いた話、「君までもうすぐ」の一応続編です・・・・と言ってもあれは
あるデートの一日を書いたもので、特別続きってほどでもないんですが、あの時未遂
に終わった二人はどうなっているのか!?・・というものです。

最後の関係までいくのがテーマですヾ(´ε`*)ゝ エヘヘ

「君までもうすぐ」は目次からどうぞ → 目次

※ 「君までもうすぐ」を読まなくても全然大丈夫です。


☆ 大学生になった翔太と爽子。もう高校生ではない二人は段々と大人に近づいていく。
  爽子は今まで感じなかった感情を強く感じるようになるが・・・?爽子目線です。
  






















高校の時に初めて”恋 ”をした。その人はお日様のような笑顔で

いつもきらきらしていた。

そんな彼と同じ想いだと知った時、何回も夢だと思った。


でも一緒にいる時間が増えていくにつれて、夢じゃなくて、夢のような

現実だと分かった。

そして、彼の特別でいていいのだと思った。

それが”付き合う”ことだと知った。


とても幸せな毎日。でも一緒にいればいるほど、彼に近づきたくなるの。


どんどん欲張りになっていく私。


あの日・・・本当はもっと近づきたかったのかな?

触れ合うことが嬉しかった。嬉しいのに、怖かった・・・今も彼の感触が残っている。

でもあれ以上近づいていたのなら、きっと私の心臓は破裂していた。


大好きな気持ちはいっぱいなのに、何なんだろう・・・この感情。


あれから、私たちの距離は近くなったり遠くなったり・・・。

それは私が感じるだけなのかな?時々彼がとても遠く感じる。


どんどん膨れ上がる下心。


私はこの先、どうなっていくのだろう?


いつか、一緒にいることが自然になれる日が来るのだろうか・・・?







「naturally」 (1)









ワーワァ〜〜ッ


「!」


大きな声が聞こえて、爽子は声の方に視線を向けた。


「あ・・・・・」


そこは翔太の大学だった。高校から付き合い始めた風早翔太とは別の大学に進んだ。

同じ道内の大学だったため、週末には必ず会えたが、高校の時のようにすぐには会え

ない生活に二人は想いを募らせていた。


今日はその会える日。今回はお互いの用事で10日ぶりのデートだ。以前から二人と

も見たかった映画を見に行く予定だった。映画館には翔太の大学が近いので爽子が

出向くことになったのだ。


爽子はグランドに近づいて、凝視すると大きく目を見開いた。

大学のグランドでは野球部が練習をしていて、その中で一人の私服の学生がバッター

ボックスに立っていた。そしてその人物は紛れもなく、爽子の恋人、風早翔太だった。


翔太は高校時代はもう野球をやっていなかった。翔太が野球をやっているのを見られ

たのは高校の体育祭ぐらいだった。


爽子はその姿にどくんっと心臓が高鳴った。


(うわっ・・・どうしたんだろう?翔太くん・・・・)


爽子はグランドの金網越しに翔太の姿を夢中で眺めていた。


カッキ〜〜〜ンッ


その時再び大きな歓声が上がった。翔太の打った白球が大きく青い空を舞ったのだ。

皆一斉に空を見上げる。それはまさしく文句ないホームランだった。


ワァワァ〜〜〜〜〜〜〜ッ


「すご〜〜〜〜っ!風早!」

「くそっやられた!」

「まじでやってね〜の??」


キャーキャーキャー


その歓声の中には黄色い声というのも聞こえる。


「すげ〜〜カッコよくない〜〜〜風っち」

「野球やってたんだって〜〜!」

「スポーツできるってやっぱ得点高いよね〜〜〜」

「イケメンだしね〜〜っ!」


その黄色い歓声の何人かが爽子の近くで囁いていた。


「でも、風っちさ〜彼女いるんでしょ?」

「あ〜高校ん時からって言ってたっけ?でも大学違うんだし、すぐ別れんじゃないの?」

「そ〜だよね。風っちバイトも忙しそうだしね」


その彼女です・・・・。なんて思って爽子は聞いていた。


(やっぱり翔太くんはモテモテだな・・・・)


その時、風早が金網越しの爽子に気づいた。


「あ・・・!」

「!」


翔太がこちらを見るとドキッと爽子の心臓が飛び跳ねた。


「爽子!」


翔太が爽やかに笑って手を振ると、一斉に黄色い声を出していた女の子たちが爽子を

見た。爽子は焦ったように、固い顔をしてに〜〜っと無理に笑った。女の子達はびくっと

して、驚いた様子で両方を見ていた。


翔太が爽子のいる金網のところにやってきた。


「はぁはぁ・・・ごめんっもう来てたんだね。すぐそっち行くね!」

「う、うんっあっ・・・正門に回るね」

「あ〜そうだね、それじゃそこに!」


そう言って、翔太は皆に明るく別れを告げ、笑顔で皆の元を離れていった。二人のや

り取りを見て女の子たちがこそこそ言っているのが分かる。しかし爽子は慣れっこだ

った。高校時代からそんな光景は山ほど見てきた。そんな時、気にしないと思いなが

らも心のどこかで思ってしまう。


”私は翔太くんにふさわしいのだろうか・・・”と。


大学生になってますます、輝いている翔太くん。私は輝いているのかな・・・?


「―子、爽子?」

「は・・・はいっ!」

「どうしたのぼーっとして。」

「あっ・・ううん」

「お待たせ、行こっか」

「うん」


今まで運動していた翔太の汗がきらっと太陽に反射する。その爽やかさに爽子はぼっと

顔を赤らめた。翔太は嬉しそうに前を歩き出した。ぼーっとしていた爽子は焦ったように

小走りで翔太に追いついて、隣を歩く。


大学生になって変わったこと・・・それはお互いの名前を自然に呼び合えるようになった

こと。今までは意識して頑張っているような気がしていたけど、いつからだろう・・・それ

が自然になった。少し彼に近づいたような気がして名前を呼ばれる度に嬉しくなる。


「爽子、結構待った?」

「ううん・・全然っ!・・というかラッキーでした。思いがけなく、野球をしている翔太くん

 を見れたのでっ」


爽子が両手を組み、目を輝かせると、翔太は恥ずかしそうに髪をくしゃっとして言った。


「いやっ////あれね。爽子を待つ間、グランドで野球部の練習を見てたら、友達に

 引っ張られてさ・・・・」

「そうだったんだ・・・」

「その友達さ、プロ目指してんだよ。すげ〜よな」

「・・・翔太くんもすごいよっ。夢に向かって頑張ってるもん・・・」

「それを言えば爽子もじゃん。」

「私は、勉強が好きなだけで・・・・」

「それがすごいよ。俺なんか勉強してたらすぐに外に行きたくなるしなぁ〜」


翔太の夢は体育の先生になることだった。スポーツトレーナーの資格も取りたいと

夢に向かって努力する姿はいつもきらきらしていた。一方爽子は、薬草が好きで

薬学部に入学して半年が過ぎた。


「知らなかったことを知るのは・・・・楽しいよ」


爽子の言葉に翔太は何も言わずにじっと爽子を見つめた。


「ん?翔太くん?」

「ううん・・・爽子にやっぱり憧れるなって」

「えっ!?」


驚いたまま茫然としている爽子に翔太は優しく微笑んで言った。


「手、繋いでいい?」

「う・・うん」


ぎゅっ


「・・・・・」


いつからこうやって繋ぐようになったのか。お互いの指を絡ませる。指から感じる

二人の体温。会えなかった時間を補うように二人は近づいていく。


どくんどくん・・・


爽子は横を歩く翔太をちらっと見上げた。


一緒にいる時間が幸せで仕方ないのに、もっと何かを求めている。近づけば近づく

ほど触れたくなる。それは日に日に強くなり、彼に触れられなかった日はなんだか

物足りなさを感じる。


何だろう・・・この感情は?


爽子は最近の自分の中の変化に戸惑いを隠せなかった。





「naturally」  へ続く



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あとがき↓

ごめんなさい・・・いきなり脱線です。急にこういうのも書きたくなる。脱線大好きです。
連載の先を楽しみにしてくださっている方すみません(´д`) この話は翔太をイケメンに
書きたい〜〜!という目的で書きたくなりました。なので爽子目線で進めます。翔太
目線になるとイケメン度が落ちるため(´,_ゝ`)プッ そして、本誌のように近づきたいけ
ど近づけない関係みたいのが書きたくなったのです。よければこちらも見て下さいね!
そんなに長くならないと思いますけど・・・。