「Once in a blue moon」(7)
※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。
★「Half moon」は 目次 から。こちらは「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 の続きです。
☆ 転勤してきてからずっと気になって蓮を見ている女子社員がいた。いつもは会社の
人間には目を向けなかったのになぜか蓮のことは気になり・・・?オリキャラ目線になります。
・‥…━━━☆ Once in a blue moon 7 ‥…━━━☆
<瀬戸麻美>
「ねぇ今度建築部に転勤してきた川嶋蓮くんってカッコよくない??」
「思ってた〜〜!独身らしいじゃん」
「狙っちゃおうかな〜〜〜」
「でも仙台が実家じゃ面倒じゃない?」
「そんなの全く問題じゃないし〜〜〜」
瀬戸麻美は同僚のガールズトークを側で聞きながら、社員食堂で一人で食事をして
いた。特に人と関わろうとしない麻美は皆の中で少し浮いている存在だった。見た目
は美人なので最初は関わろうとする同僚もいたが、段々と付き合いにくさから離れて
いった。また、美人過ぎて男性も近づきにくいようだった。
一人でいることは麻美にとって苦ではなく、むしろ人に合わせる方が疲れるのだ。上
辺だけの付き合いではなく、本当に信頼できる友人が一人いればよかった。それを
仕事上で特別作ろうと思っていなかったので、この会社に入社して5年、特に仲の良
い友人はできなかった。そして男性も仕事上の同僚としか見ないので会社内で恋愛
に発展することもなかった。
しかし、この数日自分自身に変化を感じていた。
ドクンッッ
蓮の話が出ると、自分の中の何かが反応していた。麻美は蓮の隣の部署だった。
経理関係の仕事をしている麻美は蓮の部署に書類を届けることもしばしばあった。
蓮を見た時、普通にビジュアルはいいが、それ以上でもそれ以下でもなかった。
それはいつも通り仕事の同僚であるからだ。そんな自分に変化が現れたのはいつ
からだろう・・・。麻美はあの日のことを思い返してみる。
* * *
その日のランチはたまたま外で食事をしようと穴場の店に食べに行った。もともと食べる
のが好きで、一人で美味しい店を巡っていた。その穴場の店は特にお気に入りで、古ぼ
けているが、本物の和食を出す店だ。どちらかと言うと女性は好まない店だった。
『あ・・・・』
店の戸を開けると、すぐに目に飛び込んできたのは一週間前に仙台から転勤してきた
川嶋蓮だった。どういうわけかこの店の中にいた。
(どうやってこの店を見つけたんだろう・・・)
麻美は会社からは近いが誰にも見つけられていなかった隠れ家のような店を見つけら
れたことに残念な気持ちは隠せなかった。でもそれは仕方がないことだ。そして自分
と同じ会社だということは向こうは知らないはずだ。
麻美は気にせず、斜め後ろの席に座っていつもの定食を注文する。
いつも通り一人でランチを堪能する。特に蓮を気にすることもなかった。しかしたま
たま視線を上げると、蓮が目に入った。
(・・・・!)
思わず視線を凝視させた。
川嶋蓮は携帯を見ながらとても優しい笑みを浮かべていたのだ。
普段なら気にも留めない同僚の行動に麻美は釘づけになった。なぜかその笑顔から
目が離せなくなったのだ。
(・・・笑うんだ)
「!」
「!」
(わっっ!!)
蓮に視線を気付かれ、麻美は素早く視線を食事に戻した。
どくん、どくん、どくん
不思議だった。今のは何だったのだろう・・・。妙に自分の心臓が騒がしかった。
* * *
あれから蓮の笑顔を見ることは一度もない。それも女子社員達につれないというか全
くと言っていほど媚を売らない。麻美は蓮に彼女がいることを確信していた。硬派と
言ってもあそこまで好意を持って接する女たちを邪険にはできない。それか女嫌いか。
「それとも・・・私と一緒か」
麻美は飲み物の中の氷をストローで突きながら呟いた。
同僚としか見てないのでそれ以上、それ以下でもないという。でも彼女がいるという
線が一番濃厚だろう。そして思考をストップさせる。
(何・・・考えてんだろう・・・・)
いつの間にか彼のことを考えていた。
そして心のどこかで願っている。
あの笑顔がもう一度見たい・・・と。
「Once in a blue moon」 8 へ
あとがき↓
ここから麻美の視点が中心になります。彼女は蓮の救世主になれるのか!?ハッピーに
してあげたいですね・・。さて、14巻買いました。中のコラムでカルピン先生がラストに向か
っていると書いてあってドキッとしたけど、担当さんに話の筋を言うと「まだまだじゃないで
すか」と言われたということでほっとしました。終わったらもう、私の気力もこのブログも終
わっちゃいますからね・・・。せめて来年は続いて欲しいものです。