「Once in a blue moon」(62)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 の続きです。
 

☆ 確信を持って蓮の運命の人を語る美穂に心に何か感じたがそのことが分からなかった。
でも焦燥感は拭えず・・・。そして蓮の危機は続く。




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 62 ‥…━━━☆

















”あの時・・・”


何を言おうとしたのか自分でも分からなかった。ただ、自分以外の人間が自分の心を

見れるわけがない・・と言い聞かせるように頭に過ったものを振り切ろうとしている

自分がいた。美穂が例え何を見て、感じていようと・・・。


・。。・゜☆゜・。。・



あまり人通りのない住宅街だが、まばらな人が通り過ぎていく。深刻そうに見えるの

かちらっと顔を拝みながら女性が過ぎていった。遠くには車の行き交うエンジン音。

蓮は現実を感じると、ぎゅっと拳を握りしめて美穂を見た。美穂は会った時からずっ

と蓮から視線を外していない。


「・・美穂が俺の運命の相手をどう思おうと・・・」


そして、次の言葉を蓮は一際小さな声でひとり言のように言った。


「世の中にはどうしようもないこと・・・あるんだよ。恋愛だけじゃなくてさ」


全ての想いを込めるように言ったその言葉も美穂にとっては感情を揺さぶられるだけ

のことだった。闇のように深い蓮の目を美穂はキッと睨んだ。


「・・っして?どうして・・・蓮は逃げてるだけじゃないっ!!そんなのおかしい」

「美穂・・・っ」

「そんなの蓮の幸せじゃないっ・・・私は、私は蓮に幸せになって欲しいの。本当の

 幸せを知って欲しい・・・」


そして、美穂は眼光鋭くニッと笑うと、蓮を通り越して遠くを見つめて言った。


「ね?あなたもそう思うでしょ?」


ガサッ


暗闇にもう一つの人影がびくっと動いた。


「・・っ麻美?」


蓮は動いた人影を見て叫んだ。暗がりでも分かるほど、麻美の表情からは血の気が引

いていた。蓮は内心焦った。


(いつからいたのだろう?どこから・・・聞いていたのか?)


ホテルの近くでこうなるのではないかという危機感を持っていたのに、強く行動にで

きなかった自分を蓮は悔やんだ。そして、美穂はこの場面を望んでいたかのように満

足気に笑みを浮かべる。


「聞いてたんでしょ?さっきから居るの気づいてたわよ」

「・・・ご、めんなさいっ・・・」

「美穂・・・瀬戸麻美さん、俺の彼女だよ」


美穂は蓮にそう紹介されても動じることなく、麻美ににっこりと笑いかける。負い目

がある麻美は怯えたように美穂を見つめる。蓮は麻美に美穂とここで会った経緯を話

した。それでも麻美の顔色は戻るはずはなかった。美穂の視線が麻美に突き刺さる。


「・・だから言ったのに。私の言う事を聞いてくれなかったのね」

「!」

「美穂・・・?」


その言葉から美穂が麻美を知らないとは思えなかった。全部あの時に見抜かれていた

のかと思うと、麻美の全身にぞくっと戦慄が走った。


「・・・美穂、麻美に何を言ったんだ?」


蓮が低い凄味のある声で聞くが、美穂は戦く様子もなく不思議そうに首を傾げた。


「蓮、怒ってるの?私は怒られることなんかしていないのに」

「だから、何て言ったんだよ」


美穂は有無言わさない蓮の目を瞬きせずに見つめると、ふんわり微笑んで言った。そ

れは先ほどの優しい笑みではない。


「邪魔しないでね・・・って」

「!」


蓮は一瞬顔を歪ませると、麻美の方を振り返った。


「麻美、気にすんな。いろいろ・・・分かってんだろ?」


美穂の病気のことを分かってるだろ?と麻美に優しい目を向けた。麻美は完全に固ま

ってしまい、顔色が悪くなっていく。それは当然だった。美穂に会ったのは偶然では

あるが、美穂を探しに行ったのは事実だ。卑怯なことをしたのだ。麻美は庇おうとし

てくれている蓮の顔を見られなかった。そして表面的に繕うこともできないほど身体

が震えていた。


「昨年さ、麻美と偶然会ったんだよな。もし、その時のことを引きずってんなら俺が

 悪いんだ。不安にさせた俺が・・」


蓮が自分を庇おうとすればするほど美穂を刺激するように思い、麻美は感覚的に焦燥感

に駆られる。でも美穂は感情を荒立てることはなく鋭い視線を蓮に向けて冷静に言った。


「・・蓮、この人を守るの?」


麻美は複雑な想いに駆られながらも言葉が出ない。自分の中の何かが壊れている感覚

だけを感じていた。


「・・・守るよ。俺の彼女なんだから」


蓮が平然と言ってのける。麻美はその言葉をもらって嬉しいという感覚さえない。

美穂の鋭い視線にただ怯えていた。そしてあの時言われた言葉が頭を過る。


”『蓮と運命の人の邪魔をしないで・・・っ!』”


”私と蓮のことを何も知らないくせに?”・・と思いながらも麻美の中で確実に何かが

壊れていく。


(私はなぜ金縛りのように動けないのだろう・・・蓮の彼女なのに)


「・・・ふぅ〜ん。でも不安にさせた原因は全部私が言った通りでしょう」

「!」


その柔らかそうに見えて鋭い視線に麻美はびくっと体を強張らせた。


「蓮の幸せを願うなら邪魔しちゃだめよ」

「やめろよ・・・美穂っ」


蓮には珍しく感情露わに声を荒らげた。その様子を麻美は哀しみの目で見つめる。


「麻美、帰ろう「ーね?分かるわよね?」」


蓮が麻美の肩を抱き、帰る方向に体を向けても美穂は動じず続けた。


「私、バカだったの。運命の人には勝てないのに、どうやったら蓮が側にいてくれる

 かばかり考えてた」

「美穂、やめろって」

「ね、あなたも蓮が好きなら分かるはず・・・」


立っている感覚さえもないほど、怯えた様子の麻美に美穂はついに決定的な一言を口

にした。そう・・・麻美がずっと畏れていた言葉。




「・・爽子ちゃん以外、みんな一緒なのよ」






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あとがき↓

「爽子ちゃん以外一緒」このセリフ入れたかった(笑)ただ入れたかっただけと言った
ら怒られそう・・・(汗)でもあくまで爽子は私にとって聖域のようなところがあるの
で”特別感”は拭えないのです。だから爽子を知った人は惹かれてしまうのでは?と妄想
がそういう方向へいくんでしょうね。
さて、運命論は何を持って運命とするかはその人の思い込みとかもあるだろうけど、
きっかけは確かにあるはずですね。そのきっかけもその人の偏見とかあるでしょうが。
段々この話軸の部分になってきているので頑張ります。