「はつこい」12

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。


歓迎会の帰り、爽子を送ることになった翔太はやっと二人きりになれたのだが・・・?


こちらは 「はつこい」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 の続きです。


興味のある方は以下からどうぞ↓  


























歩き出してどれぐらいたったのだろう。

話したいことは山ほどあるのに言葉が出てこない。


「・・・・・」

「・・・・・」


翔太は後ろを振り向けないまま、いつもの河原の道を歩いていた。背中に彼女を感じ

ながらただ前を歩いていた。星空の下、まるで二人の世界のように続く道。


最初に口火を切ったのは爽子だった。


「あ・・・あのっ」

「・・・!」


翔太が後ろを向くと、かなりの距離を開けて爽子が立ち止まっていた。爽子は俯いて

何かに遠慮しているように黙り込んだ。


「そ・・そのっ」

「黒沼?」


様子がおかしい爽子を見て、翔太はやっと爽子に向き合った。


「あのっ・・・ごめんなさいっ」

「え??何が?」

「お、送ってもらって・・・迷惑掛けて・・・」


爽子のいかにも申し訳なさそうな姿に翔太は理解ができずに聞き直した。


「・・・何でそんなこと言うの?何の迷惑も掛けてないよ」

「で、でもっ無理しているのでは・・・っ」

「・・・・」


あ・・・・。


忘れてた。彼女と二人になったことに舞い上がって大切なことを忘れてた。

彼女はまだ誤解しているんだった。一緒にいることで俺が無理をしていると思ってる。

翔太は戸惑った表情の爽子を見つめると、ぎゅっと口を一文字にして言った。


「黒沼。顔上げて」


爽子は翔太の言葉にそのまま従い、そろ〜っと顔を上げた。


「アキさん誤解してたんだ。俺、普通に女の子好きだし」

「・・・・・」


翔太は爽子が大きな瞳を揺らしているのを見てハッとしたように言葉を補った。


「あっ女の子だったら誰でも好きなわけじゃなくてさっ・・・」


ますます爽子の目が大きくなっている。


(・・・なんて言えばいいんだっ・・・)


どくん、どくん、どくん


お互いの視線を離せないまま、二人は土手のところで立ち止まっていた。月明かりが

二人の顔をほのかに照らす。


「・・・俺、黒沼のこと知ってた」

「え?」

「北幌にいたこと・・・。ごめん、照れくさくて言えなかった」


そう言って翔太は爽子に優しく微笑んだ。月明かりに照らされた翔太の笑顔を見て、

爽子はドクドクと心臓の音が早くなっていくのを感じた。


「わ・・私も、風早くんのこと知ってたよ」

「え・・・?」


翔太は目をぴくんっとさせた。


知ってもらってたら嬉しい・・・と思ってた。でもクラスも違う、つながりもない自分の

存在に気づくなんて思ってもみなかった。


「・・・ありがとう」


翔太は嬉しさがこみ上げてくると思わずそう呟いた。爽子はその言葉に目を大きく見

開くと、バッと俯いて言った。


「わ・・私こそ、ありがとうなの・・・。まさか私のことを知ってくれているなんて思っても

 みなかった」


爽子は気づいたら頬に涙が伝っていた。


「あっ・・・ごめんなさいっ」

「!」


涙を見せないように、爽子は必死で涙を拭う。翔太はその姿をぼーっと見ていた。

ちらっと見える、爽子の涙が月明かりに照らされて光っていた。


なんだろう・・・この気持ち。

どくん、どくん・・・と早まる胸の鼓動。たまらないほど彼女が愛しくなる。


翔太はそっと爽子の頬に触れると、涙を拭った。


「か・・・ぜはやくんっ////ご、ごめんなさいっわ・・・わたし」

「何も、言わなくていいよ」


そして翔太は思いのままに爽子を包み込んだ。


「!!」

「・・・しばらくこのままで」


翔太は無心で爽子を抱きしめた。爽子は戸惑いながらも、し〜んとした夜の二人きり

の世界にただ身を委ねた。まるで異次元にいるような感覚だった。

しばらくして、翔太はそっと爽子の身体を離した。


「か・・・ぜはやくん?」

「・・・ごめん」


翔太は爽子を見れずにくるっと前を向くと、”帰ろっか・・・”と背中を向けたまま歩き出した。

二人は無言のまま帰り道を歩いていた。


どくん、どくん、どくん


今もお互いの体温が身体に残る。二人は速くて大きな胸の鼓動を感じながら歩いていた。

それが翔太と同じ感情であることを爽子はまだ気づいていなかった。自分自身の気持ちも

ましてや翔太の気持ちなど・・・今はただ、どきどきする不思議な感情を感じるだけだった。


まるで夢の中を歩いているように・・・・。



* * *



「あ"〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」


あれから、家に帰った翔太は我に返った。


一体何をしてしまったのだろう・・・・と。

気が付いたら抱きしめてた。でも、その時下心とかそんなものがあったわけじゃない。

ただ、泣いている彼女を見るとたまらなくなった。この感情は何だろう・・・?


”守りたい”・・・って思った。


(でも、まずいよな。絶対嫌われた・・・)


「う”〜〜〜〜っあ"〜〜〜〜〜〜〜っ」


その日、ベッドの上で悶え苦しんでいる翔太の声が風早家では響き渡っていたそうな。






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あとがき↓

台風大丈夫ですか〜〜〜?天災には勝てませんね・・・。神のみぞ知るでしょうか。皆様、
お気をつけくださいね!!