「はつこい」9

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。


早く誤解を解きたいがなかなか爽子と話せずやきもきする翔太だが・・・?


こちらは 「はつこい」     の続きです。


興味のある方は以下からどうぞ↓  

























第四章<それぞれの恋心>



”恋”は今までにない感情を運んでくる。自分の思い通りにいかないのが恋と分かっ

てはいるけど、感情ばかりが突っ走る。


初めてのことだらけだ・・・。

いつもどうすればいいか分からなくなる。彼女の顔を見ると・・・・。


あれから翔太は爽子と話す機会をずっと待っていたがうまくタイミングが合わずに爽子

は休憩に行ってしまった。


「あ"〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

「な、なんだよっ翔太。こえ〜〜な」

「いえ、なんでもありません・・・」


爽子が休憩の間、店長がカウンター業務を行っている。思わず店長の存在を忘れてい

ることに気づいた。


(・・・何してんだか)


ため息をついている翔太を気にする様子もなく店長が業務をしながら言った。


「ところで、今日18時半に変更なったから」

「あ・・・・歓迎会で・・したね」

「何ボケてんだ?忘れてたのか?」


この夜は爽子の歓迎会兼恒例の飲み会ということを忘れていた。もちろん未成年は酒

なしだけど・・・。ということは??彼女と話せるかもしれない。


「??何、目ぇ輝かせてんだ。お、翔太分かってんだろうな?」

「え・・・??何を?」


店長は翔太の肩を掴むと、どんどん顔を近づけ睨んでくる。思わず店長の顔を凝視する。


「不純異性交遊禁止!」

「・・・・・・」


(・・・忘れてたわ。この人のこと)


空手をやっていたという店長の気迫は十分だった。肩を掴む強さからも分かる。


「で、でも普通に歓迎会なんだし、どこまで??」

「見てたら分かんだよっ!!下心があるかないか!!」

「!」


(・・・下心)


翔太は何も言えずに黙り込んだ。


下心・・・・。


彼女に下心がないといったら嘘になる。でもそんなもので片付けられたくないという

か・・・そう言われることが、なんか嫌だった。


「店長〜〜〜〜!!」

「ん?アキ?まだ歓迎会には早いぞ」


階段の方からアキの声が響いた。その後ろから爽子と千鶴、あやねが一緒にやって来る。


「ちょっと寄っただけなんやけど、今日の歓迎会、さわこちゃんの友達も一緒にあかん?」

「え??」

「だってさわこちゃん女の子一人やで、やっぱかわいそーやん」

「しかしな、部外者は・・・・」


するとアキはにやっとして店長に耳打ちした。


コソコソコソ


店長は顔を歪ませると、コホンッと咳払いをして千鶴たちの方を向いた。


「う・・・ん、まぁいいか。く、くれぐれもこのバイトは不純異性交遊禁止なんでな。

 そこんとこヨロシク」

「へ・・・?」


あやねが不思議そうな顔をすると、アキがウィンクして”ほっといて”とコソッと言った。


「とにかく、良かった〜〜〜爽子一人だったら不安だったんだよな。やのちん」

「そうね、あんまり慣れてないしね。それじゃよろしくお願いします」

「君らみたいにかわいい子やったらみんなおごってくれんで〜〜〜」


あはは〜〜〜っ


「・・・・・・」


翔太は呆気にとられてそのやり取りを見ていた。そして店長が向こうの方に行くのを

見届けた後、アキに言った。


「あのっアキさん。店長あれだけ恋愛に厳しいのになんで?」

「ふふふ〜〜〜〜っ俺は店長の弱みを握ってんのや」

「弱み??」

「ま、飲み会でこっそり教えたるわ。でも内緒やで」

「はぁ・・・?」


(相変わらずここの人たちはよく分からん・・・)


そんなこんなで千鶴達も歓迎会に加わることになった。翔太は爽子をちらっと見る。

嬉しそうにしている爽子の姿を見るとこれで良かったとも思う。


(・・・さらに話せそうもないけどな)


「かっぜはや〜〜〜!久々にゆっくり話せるじゃんっ。龍とも最近会ってないんでしょ?」

「そうなんだよ。なんだかんだ言って時間作れなくって。今度ラーメン食いに行くって

 言っておいて」

「おうっ!」


千鶴とのやりとりを爽子は眉を顰めて見ている。後ろからあやねが言った。


「ねぇ爽子。アレどー見ても女嫌いとかじゃないと思うよ」

「で・・・でも」

「あっれ〜〜〜〜!翔太女嫌いちゃうかったんか??」

「え!!・・・あっそうだっ!!アキさん、それ何の誤解なんですか!!」


やっと巡ってきた誤解を解くチャンスとばかりに翔太は爽子をちらっと見るとアキに

声を大にして言った。爽子はきょときょとっと目を泳がせながら二人を見ている。


「だって、さわこちゃんの前で完全におかしかったや〜〜〜〜ん!あの時」

「え・・・っとそれは・・・」


翔太と爽子の目が合う。そして翔太はさっと照れた顔を隠すように目を逸らした。


「あ・・・・そっか!!お前まさか??」

「!!」


アキが閃いたように指を鳴らして叫ぶと、辺りがし〜〜んとなった。翔太は口が開い

たまま、予測される次の言葉に動作が止まった。


あやね、千鶴、爽子が見守る中、日本一デリカシーがない男の言動に翔太は焦った

ようにアキの口を塞いだ。


「アキさん、俺たち仕事だから。ほら店長見てるし」

「むぐっ・・・なんやねん、いきなり。その笑み、爽やかすぎて男には通じへんで」

「まぁまぁ。ほら黒沼もあっちの業務お願いしていい?」

「は、はいっ。すみません。それじゃあやねちゃん、ちづちゃん後でね」

「うん、わかった〜〜〜楽しみにしてる」


翔太は爽子が向こうの方へ行き、千鶴たちが去っていくのを見て、ほっと胸をなで下

ろした。


「なに?マジで本気なん?」

「ちょ・・・違います。皆の前でやめてくださいよ」

「あ・・・そっか・・わりぃ」


アキは真面目な顔をして言う翔太に少し怖気づいたようにぼそっと謝った。そして、

また暴走しすぎたと反省する。暴走、反省、暴走、反省の繰り返しのアキはやはり、

翔太の繊細な内面には気づかないままきっとまた暴走するのである。


そんな翔太の姿をあやねは遠くからじっと見ていた。そして小悪魔の微笑みを浮か

べていたことを翔太は知らない。







「はつこい」 10 へつづく














あとがき↓

この話、20話ぐらいで終わりたいなぁ。終われるかなぁ。きっとだめだな。30話ぐらい

かな。いつもながらだらだらすみません。