「Half moon」番外編 ➐「ここから先の先」


※ 爽風の話ではありません。

こちらは「Half moon」の番外編「ここから先」の続きです。オリキャラ昌×光平の
最終章です。相変わらずじれったい光平にイライラしますよ(笑)・・・あしからず。
最初は昌目線、後半光平目線です。

二人の慣れ染めはこちらから→ 「ここから先」 前編 中編 後編


興味のある方は以下からどうぞ↓


















 「ここから先の先」 光平と昌の最終章










「ねぇ?どうなってんの?」


先日沙穂の家に遊びに行った時聞かれた。いや、聞かれるとは思ってたんだけど・・・。


光平と付き合いだして3年の月日が過ぎた。私も来年は30歳。やっぱ普通に結婚のこと

を意識する。大台に乗る前にって。というか私は光平しか考えられないわけだし、付き合

った頃から準備はできているんだけど・・・。


「あいつ、ほんっとに煮え切らないよね・・・。そーいえば昔から光平ってあんなだったよね」

「う・・・ん」


すっかり奥さんになった沙穂が呆れた表情で言った。結婚してからさらに落ち着いた沙穂は、

風早といろいろあった頃とはまるで違う。幸せなんだなぁ・・・と思う。家のことが重いだけに

支えが必要だとずっと思っていたから、先生に会えて良かったと心から思った。でも、そんな

沙穂を見ていると私も欲が出る。”こんな家庭を光平と築きたい”って・・・。


私じゃ光平の奥さんにはなれないのかな。光平はどんな気持ちで付き合っているんだろう。


昌は付き合いが進んでも一向に”結婚”の”け”の字も出てこない光平に正直焦りを感じていた。



* * *



そして、いつもの飲み会。喜びのニュースがら始まった。


「え??沙穂が妊娠?まじで〜〜〜??」


今回は欠席の沙穂に代わって昌が言うと、太陽が驚きの声を上げた。蓮も光平も仲間のビック

ニュースに喜んでいた。その話題でしばらく盛り上がった後、太陽が何も考えず言った一言で

場の空気が一気に張りつめる。


「ところで、光平と昌は?いつ結婚すんの?」

「!」「!」「!」



しぃ〜〜〜〜〜〜〜〜ん



「ん?どしたの?」


太陽はむしゃむしゃと焼そばを食べながら返答がない二人を不思議そうに見上げた。


(太陽よ・・・それ言うか??)


そこにいた3人は同じことを思った。きっと誰もが同じことを思うだろう。

気まずそうにしている二人の様子を見て蓮が助け船を出す。


「太陽、そーいうことは人それぞれなんだよ」

「あ・・・うん」


蓮に言われて太陽は少ししょんぼりした。いつもの光景だ。


蓮は固まった空気をほぐすように適度な会話を投げかける。光平も昌もそれに答えるうち

に和やかな空気が戻ってきた。

しかしこの太陽のK・Y発言が昌の望んでいた未来を早めることになるとは・・・・その時は

思っていなかった。


* * *



実際光平は何も考えてないわけではなかった。ずっと考えてはいるのだが、簡単なことで

はない。昌を守っていく自信がまだ持てなかったのだ。


太陽が言った時昌の表情が暗くなったことを見逃さなかった。昌が待っていることは知って

いる。今の付き合いが心地いいけど、今のままではだめなことも分かっている。

でも、どうしてもその一歩が踏み出せなかった。


「蓮はさ、結婚とか考えたことある?」

「・・・うん」

「そっか・・・美穂さんと・・だよな」

「若かったからな」


蓮は聞かなかったら絶対自分からそういう話をしないのを知っていた。でも聞くと答えてく

れる。それが分かっていた。俺は蓮に何を求めているのだろう。答えは自分の中にしかな

いのに、どこかで蓮に頼っている。そんな俺を見透かすように蓮が言った。


「あの時だけだよな」

「え?」

「翔太が仙台にいた頃・・・あの時だけは俺にぶつかってきたよな」


蓮がにやっとして言う。言っている意味が分からないわけない。予想外の蓮の言葉に俺は

思わずたじろついた。時々こうやって蓮は俺を刺してくる。そしてそれだけで全てを察して

しまい、何も言えなくなる。どこかでトラウマなのかもしれない。あの時蓮に嫌な感情をぶ

つけたこと。


「・・・あんな光平も悪くないんじゃね?」


・・・そして刺した後は必ずさりげない言葉でフォローするんだ。

分かってる。答えは自分の中にしかない。


「それとは違うんだ」

「?」

「あの時の想いとは違うんだ。昌とは・・・。大切なんだ」


光平は真剣な顔で蓮を見つめた。


黒沼爽子・・・。あの時の想いとは違う。全てを手に入れたくて燃えるようなあの想い。


いつか蓮が言ったよな。昔の歌にあったとかで。


”『恋とは奪い合い続け、愛とは与え続けていくこと』”


俺にとって黒沼さんは恋だったと自覚する。奪いたくて仕方がなかった。でも昌は・・・・。

蓮は俺をちらっと見るとグラスの酒を飲みほした。その横顔は笑っているように見えた。


「どんな光平であろうと、あいつはいいんだよ」

「・・・・・」


どんな答えだろうが、それが俺の答えであればいいんだ。


「・・・さんきゅ、蓮」

「へ?何が?」


蓮に出会ってもうすぐ何年になるだろう。心のどこかでずっと蓮に頼ってきた。いつも迷っ

た時、蓮の答えを聞いていた。そんな時必ず蓮は答えをくれない。決めるのは自分だか

らだ。そろそろ独り立ちしなければならない。もうちゃんと答えが出ているのだから。



*******



ピチピチピチ


「光平!たいへ〜〜んっ!!こんな時間っ!」

「ん〜〜〜?」


蓮と飲んだ後、光平は酔いつぶれたまま昌の部屋になだれ込んだ。よくあることだが、次の

日は仕事なので一回家に帰らないと用意がなく、昌はそのまま光平を寝かせて、朝に帰そう

と思っていた。ところが昌が目覚めると、すっかり日が昇っていた。


「うわぁ〜〜ん、目覚ましセットしてたのに、なんで!??」


ベッドの上で嘆いている昌を光平は寝ぼけた頭でぼーっと眺める。


「・・・結婚したんだっけ?」

「・・・・・はぁ??」


昌は横に寝ている光平を呆れた顔で見つめる。今はそれどころではないのだ。昌は必死で

どうすればいいのか考えていた。


(スーツを取りに帰らないとどうしようもないし、でも取りに帰ったら遅刻だし・・・)


「うぅ・・・どうしよっっ!とにかくっ早くしなきゃ。光平起きて・・・え?」


ベッドを出ようとした昌は後ろからぐいっと光平に引っ張られる。


「ちょ・・・っ光平!」


振り向いた昌に光平は真剣な表情を向ける。昌は戸惑ったように光平を見つめた。


「結婚しよ」

「・・・・・」


しぃ〜〜〜〜〜〜〜ん


「何言って・・・・寝ぼけてんの?」


しかし、光平はぴくりと笑いもしない。その表情はいい加減なことを言っている顔ではない。

大切なことを言う時、ふざけるような男ではないことを何より昌が分かっていた。


「・・・こうやってずっと昌に起こされたい」

「え・・・・」


きっと自信なんていつまでたっても持てない。でも側に昌がいてくれたら、どんな俺でも

受け止めてくれる昌がいたらそれでいいんだ。こんな簡単なことになぜ踏み出せなかった

のだろう。昌が嬉しそうにしていると俺も嬉しい。自然に思うその感情だけで答えは出て

いたのに・・・。


それから放心状態になった昌はどんどん真っ赤になっていった。その日は社会人にあるま

じき行為という結果に至った二人だったが、忘れられない朝となるわけで・・・・。


そして、K・Yの太陽に感謝したことは言うまでない。時に輝く太陽であった。


******



「おめでとう〜〜〜〜!」

「おめっとさ〜〜〜〜んっ」


ワーワー


晴れて、昌30歳になる1週間前のギリ29歳で迎えた結婚式。


「うぅぅ〜〜〜っ」

「ほら、昌、化粧取れるから」


昌は正直、この先何十年待つ覚悟を決めていた光平との結婚がこんなに早く実現するとは

思っていなかったのだ。


「だって〜〜〜〜嬉しいぃんだもん。光平とずっと一緒にいられる〜〜うわぁぁん」


号泣の昌にその横で呆れ気味だが、優しく包み込むような新郎の姿。そんな二人を周囲は

微笑ましく見守った。


「結構付き合って長かったよな。二人」


風早が披露宴で横に座っている蓮に言うと、蓮はにやっと笑って言った。


「やっと安心できるって?」

「・・・・はぁ??」


頭から湯気を出して焦った様子で口をパクパクさせている風早を爽子は不思議そうに見つ

めたとさ。


なにはともあれ、ハッピーエンド。しかしEnd ではなく、昌と光平の物語はこれから始まる。

そこにはしっかりと”愛”が育まれていた。



<END>

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あとがき↓

光平は幼馴染の蓮の存在が大きいのです。でも結婚を決意することで蓮からも一人
立ちするということも含めて書きました。後、ももさまのリクエストのことも考えていて、
一応結婚式を入れましたが、たいしてリクエストに応えられてないですね。ちょこっと
しか入れられなくてすみません。これでやっと二人の物語は終わり。読んでもらって
ありがとうございました。