「Half moon」(43)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

いつもの仙台の飲み仲間の回です。風爽出てきません。昌の心情爆発の回。
興味ない方スル―で!
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39 40 41  42 の続きです。
それではどうぞ↓




















***********



「今日は3人!?」


恒例の飲み会に出席したのは昌と蓮と沙穂の3人だった。


「この間、会ったばかりだもんね。」

「太陽はお盆でかき入れ時だしね」

「風早は当然ダメだしね」


昌がそう言うと、沙穂は表情を少し曇らせた。沙穂はなるべく考えないようにしていた。

二人が一緒に居ること。風早の家で一緒に過ごしていること。


「光平も忙しんだ・・・」

「休みないみたいだよ」


(・・・昨日会ったけどな)


昌が残念そうに呟くと、蓮が心でそう呟きながら言った。


「蓮は最近、出席率いいね。」

「・・・そうか?あ〜翔太にも遊んでもらえねーしな」


と言って、にやっと笑った。


風早の話題が出て、昌は沙穂の様子を気にした。


”私・・・諦めないといけないのかな?”


沙穂が以前、言った言葉だ。あれから沙穂の相談は受けていない。でも諦めたとは思えない。

でも、風早と彼女が一緒にいる今、何を感じてるんだろう・・・。あの二人を見ると、やっぱり

沙穂に望みはないよ。って思うけど・・・言えない。

そして、昌は何より、気になることがあった。


「・・・蓮、あのさ・・・」


沙穂がトイレで立った時、二人きりになった昌は、言いにくそうに蓮に話を切り出した。

ビールをぐいぐい飲んでいた蓮は昌の話に耳を傾けた。


「この間のさ・・・・」

「昌らしくないな。はっきり言えよ」


蓮に言われて、バツが悪そうな昌は意を決したように口元をぎゅっとして言った。


「七夕祭りの時さ・・・光平、変じゃなかった!?」

「・・・・・・・」


何も言わない蓮にしびれを切らした昌が、ばんっと自分の膝を叩いた。


「うう〜〜〜〜もうはっきり聞くわ!!光平さ・・・・爽子ちゃんのこと好きだと思う??」


俯いてぎゅっと目を瞑っている昌を蓮はしばらく見た後、ぼそっと呟いた。


「・・・・うん」

「!」


昌はばっと顔を上げた。そして、見る見る・・・表情が崩れていった。


「・・・悪いな。嘘言えねーもんで」

「・・・・・うん。分かってる」

「でも、直接本人に聞いたわけじゃないし・・・。俺はそう思っただけだしな」

「・・・・そんな、蓮がそう言うんだもん。そうに決まってるじゃん」


蓮はそれ以上何も言わなかった。後は本人の問題だというのを知っているから。

そして、二人の会話をトイレから帰って来ていた沙穂は壁の向こうで聞いていた。


「・・・・・光平が彼女を!?」


沙穂は思いがけない会話に身動き一つせず、耳を傾けた。


「でもっ、でもっ、何で!?彼氏がいるんだよ。絶対上手くいきっこないのに・・・」

「・・・・・・・」


蓮は昌の哀しい表情を見て、肩をぽんっと優しく叩いた。


「・・・・みんな上手くいきたいと思って恋愛してるだろうけど、そんな簡単なもんじゃ

 ねーだろ。人の心はさ」

「・・・・蓮」


普段、恋愛の話なんてしない蓮の言葉が昌の心に浸透していく。込み上げてくる涙を、昌は

必死で堪えた。


「・・・・・・・」


蓮の言葉を壁の奥で聞いていた沙穂も俯いたまま、言葉を噛みしめた。




「・・・遅くなっちゃった。友達から電話かかってきて」

「大丈夫だよ!さっ飲もっ!!」

「う、うん」


何事もなかったように席に着いた沙穂は、そっと昌に視線を送った。少し目が赤い。

沙穂は長い付き合いの昌の気持ちに気付けなかった。そして、光平の想いに。自分だけでは

なかった。皆、色々な想いを抱え込んで日々生きていたのだと。そして、蓮もまた・・・・。


沙穂は、複雑な思いを巡らしながら二人を静かに眺めていた。


* * * *



「−ほらっ階段上がって!」

「うん・・・・うへっ」


蓮に送られて、昌は家に戻った。心配で沙穂は一人暮らしの昌の部屋に泊ることにした。

水を飲んで、ようやく落ち着いた昌は沙穂に手伝ってもらい、ベッドに横たわった。


「・・・・ムチャ飲みし過ぎ!」


沙穂は、昌を寝かせて布団を優しく掛けた。


「・・・・・ごめんね。沙穂」

「いいよ〜私は。ゆっくり寝なよ」


沙穂はおやすみ・・・と言って、自分も部屋のタンスから布団を取り出した。昌の家は

何回か泊っているので勝手知ったるというところだ。


ぱちっ


電気を消して、沙穂も横になると、ぐすっぐすっ・・・と鼻水を啜る音がした。


「・・・昌?どうしたの」

「ううっ・・・沙穂ぉ〜〜〜〜っ」

「??」

「私・・・ずっと言わなかったけど、光平が好きなの・・・」

「!」


いきない想いをぶつけるように語りだした昌に、沙穂は布団から飛び起きた。


「昌・・・・・」

「ずっと・・・友達にしか見てもらえないけど・・・」

「・・・・・・」


ずっと一緒にいたけど気付いてあげれなかった。いつも男友達と自然に接する昌だから分から

なかった。そんな昌を羨ましいと思っていた。男女分けずに付き合えるなんて沙穂には出来な

かったからだ。でも、そんな昌は昌なりの悩みがあったのだ。

沙穂は今日の居酒屋での一場面を思い出した。


”光平って爽子ちゃんのこと好きだと思う?”


「でも・・・確実じゃないんだし・・・」

「え?」

「あっ・・・ごめん。今日店で、昌と蓮が話してるの聞いちゃって・・・・」

「あっそうなんだ・・・・。うん、でも確実だと思う。蓮がそう言うから」

「・・・・・・」


それだけでお互いが納得できてしまう。それだけ蓮の見る目は確かだった。


「私だって、もしかしたらって思ってたけど、違う!きっと違うって・・・・ずっと自分に言い聞か

 せてた。でも・・・七夕祭りの時・・・」

「七夕祭り?」

「光平・・・・爽子ちゃんばかり見てた・・・・ぅくっ」


昌は涙だらけになった顔を覆って嗚咽を始めた。


「あんな光平・・・見た事ない!うわぁ〜〜〜〜んっ!」


一方沙穂は風早ばかり見ていた。光平の様子はまるで頭になかった。風早の表情一つ一つ、目を

瞑ると思いだせる。照れた顔、くったくのない笑顔。ムキになった顔、そして・・・彼女の隣で嬉しそう

に微笑む顔。全部ずっと見てる。そっか・・・・昌は光平をずっと見てたんだ。私と・・・同じだ。


「だって・・・だって風早の彼女なんだよっ!!光平が・・・悲しむに決まってるのに・・・・っくひっく」

「・・・・・。昌・・・私だって苦しいよ」

「!」


昌ははっとして沙穂を見た。沙穂は俯いたまま正座して、膝に置かれた両手にぽとっと一滴の

涙がこぼれ落ちた。


「好きで、好きでたまらないのに・・・・なんで私を見てくれないのって!!うぅっ・・・」

「沙穂・・・・・」


昌は、涙でぐちゃぐちゃになった顔を両手でぱんぱんっと叩いてごしごしと目を擦った。

そして、そっと沙穂を抱きしめた。


「・・・なんでこんなに恋愛って上手くいかないんだろうね。どうして人の想いってこんなに交差

 するんだろうね。でも諦められなくて・・・・・。今の私たちじゃ告白してすっきりなんてでき

 ないしね」


昌はそう言って、苦笑いをした。


「くそ〜〜〜〜〜光平のばかぁ〜〜〜〜っ!!」

「昌・・・・。」


いきなり叫び出した昌を呆気にとられて見ていた沙穂も、前を向いて叫び出した。


「風早のばかっ〜〜〜〜!!」


あははは〜〜〜〜〜っ


その日、女二人は思いっきり泣き、思いっきり笑ったのでした。

行き場のない想いを抱えながら・・・・。








あとがき↓

昌は見かけはあやねっぽく、結構オシャレ系。仕事もアパレルなんで。中味はちづって
感じで書いてます。恋愛で自分の嫌な部分を見ることになります。さて、次回からお話
がどんどん進んで暗い方向へ!!やですね〜〜〜〜。でも結構書いてて楽しい!?ナゼ?
それではまたお暇でしたら遊びに来て下さい。

Half moon 44