「Half moon」(61)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

久々に6人が全員集まっての光平送別会が始まった。来るとは思わなかった風早が参加し、
それぞれ複雑な心情を抱えながら一緒に時を過ごす。

こちらはHalf moon          10 11 12 13 14 15 16 17  18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39   40 41  42 43  44 45 46 47 48 49  50 51  52 53  54 55 56 57 58 59  60 の続きです。
それではどうぞ↓

























太陽は皆が揃ったところでコホンッと咳払いをすると、乾杯の音頭を買って出た。


「・・・というわけで、光平くんの2回目の船出を祝してか〜んぱ〜い!!」

「かんぱ〜〜いっ」


チ〜〜ンッ


それぞれがぎこちない雰囲気のままグラスを重ねる。一人元気な太陽は、何も喋らない

沙穂や昌、蓮、風早の姿にさすがに違和感を感じたのか、首を傾げながら言った。


「何か、変なんだよなぁ〜〜」

「そう?」


太陽の問いに昌は何もないように答えた。昌は複雑な思いを抱えながらもこんな状態の

まま光平を送り出すのが嫌だった。結局は自分が頑張るしかないのだ。昌は精一杯の

笑顔を作っていつもの調子で言った。


「そう言えば、風早久々だね!?」


昌の言葉に太陽以外はピクリと反応する。


「そうだね。なんか忙しくて・・・」

「なんか痩せた?」

「そっかな?」


そんな昌の気持ちを察したように蓮も普通に会話を始める。


「仕事激務だもんな、翔太」

「・・・・まぁ」

「・・・・・」


蓮が普通に話すことに風早は少し動揺した表情で返事をする。蓮は横目で風早を見る。

”これ以上入ってくるな”というバリアのようなものを感じ、状況は何も変わっていないの

だと思った。もう以前のように通じ合ってはいない。


”俺、風早翔太よろしくなっ!”


入社式の時、自然に自分の中に入ってきた笑顔。頑なになっていた自分を簡単に壊して

いった。そしてその真っ直ぐな男にはかけがえのないものがあるのが分かった。その純粋

さに憧れた。これだけ人を真っ直ぐに愛せたら・・・と。

それと同時に危機感も感じた。”彼女を失ったらどうなるんだろう・・?”という思い。


「爽子ちゃんは〜?元気?」

「!」


蓮は太陽のその言葉で現実に戻るようにハッとした。一瞬全員が固まったように静まり

かえる。


「すっみません〜〜〜っ私、酎ハイおかわり!!」


昌は太陽の言葉を遮るように店員を呼んだ。


(キタ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!)


バク、バク、バクッ


昌は皆の顔を見ることもできず心臓の音を必死に鎮める。


「なんだよ〜〜〜昌!」

「とっところでさ、今日は光平の会なんだし、光平の今後の抱負とか聞こうよっ!!」

「あ〜〜〜そうだな。んで光平どうなの?」


(やっべ〜〜〜っ単純な奴でよかったよ・・・太陽GJ!もう、心臓に悪いわっ)


状況を知っている昌は一人ハラハラしていた。この会が早く終わってくれることを望む

ばかりだ。その時、光平の言葉に太陽以外の全員が再び固まった。


「ん・・・そうだな。恋愛頑張っかな」

「!」「!」「!」「!」


少し酔った雰囲気の光平は浮かれた調子で言った。太陽はマジ〜〜〜!!と叫んで

興奮したように聞き返す。太陽以外の4人はそんな光平を何も言わずに見ていた。その

時、蓮は鋭い視線を光平に送る風早を見て思った。


”知ってる”・・・と。


もしかして、知っててこの場に来た?


蓮は風早の心を必死で探ろうとした。


「光平好きな子いたんだ!!」

「まぁ・・・・いいじゃん。それより太陽は??」

「オレ?俺も恋愛ガンバッかなぁ〜〜〜!」


あっはは〜〜〜〜っ


「・・・・」


昌は先ほどからテーブルの下で拳を握りしめた。手がぶるぶる震える。風早は光平の気

持ちに気づいているのだろうか。沙穂はそれでいいのかもしれない。でも風早は?爽子

ちゃんは?そして、私は・・・?沙穂に対しても許せない思いは残っている。風早を苦しめ

ているというのに。あれからも何も言ってないはずだ。昌はぎゅっと目を瞑ると決心したよう

に顔を上げた。


ばんっ!!


「!」


昌は思いっきり机を叩いて、立ち上がった。一瞬、し〜〜〜んとすると皆一斉に昌を見る。


「――ごめんっ私帰るわ」

「えっ?昌?」


光平はいきなりの昌の行動に目が点になっている。昌はそんな光平をキッと睨んだ。


「――人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえ!!」


昌はそう言うと、バタバタと店を出て行った。

そんな昌の様子を光平は呆気に取られて見ていた。そして沙穂は複雑な表情を浮かべる。


「・・・なんだ?アイツ」

「ほんとだよ〜折角の送別会なのに・・・」


光平が不思議そうに呟くと太陽も訳が分からず目を点にして言った。そんな様子をじっ

と見ていた蓮が思わずぷっと吹き出すと、風早もぼーっと昌の行動を見ていたが、蓮の

様子を見て少し口角を上げた。


「おっ・・・翔太笑った」

「あ・・・・」

「久々だな」


風早は蓮の優しい目を見て、ふっと苦笑いをした。そしてしばらく俯いた後、光平に視

線を向けた。


「―田口」


風早に呼ばれて、戸口を見ていた光平ははっとしたように振り返った。真っ直ぐな視線。


「え?」


風早は光平の顔を暫く見つめた。瞬きもできないような張り詰めた雰囲気の中、お互い

視線を逸らさず見ている。周りの喧騒も耳に入らないほどだった。


「いや・・・北海道でまた頑張れよ」


光平の気持ちを探るように見ていた風早が目線を下にして言った。虚ろな瞳が全ての哀

しみが映し出されていた。蓮はいたたまれない気持ちで後ろにもたれると天井を見上げる。


「・・・・頑張っていいんだ」

「・・・・・・」


光平のその言葉に蓮は身を乗り出した。そして睨むように光平に言った。


「−おいっ!ここはそんな場じゃねーだろ」


蓮に言われて光平はバツが悪そうに俯くと、グラスのビールをぐいっと飲み干した。

明らかに悪い雰囲気に太陽はおろおろしている。


「一体ど〜〜したの??みんなさっ?なぁ〜風早??」

「・・・・・」


昌のいなくなった今、誰もこのムードを変えることはできなかった。


それからも重い空気のまま、飲み会が終了した。自分が入ることによって変わった空気。

風早はやはりこの飲み会に参加すべきではなかったと後悔した。それぞれが席を立ち、

清算している時、暗い表情の風早に蓮は声を掛けた。


「翔太・・・どうして今日来たんだ?」


風早は蓮をちらっと見た後、光平に視線を移し言った。


「・・・・このままじゃ中途半端な気がして。でも、結局何がしたかったのか・・・」


そう言うと、風早は哀しい目をして笑った。


「まだ、向き合えないのか?」

「・・・・・。悪いな。いろいろと」

「俺のことはどーでもいんだよ。」

「・・・・」


蓮の真剣な目に風早は複雑な表情を浮かべた。ぎこちない雰囲気をお互い感じる。蓮は

その雰囲気を打ち破るように風早の手を掴んだ。


「え?」


いきなりの蓮の行動に風早は呆気に取られる。蓮は今しかないとばかりに風早に迫った。


これ以上引き伸ばせばますますこじれるのは目に見えていた。しかし、このことを話す

ということは自分の全部をさらけ出すということ。蓮は心の傷と向き合うように風早を

じっと見つめた。


「俺さ・・・「―風早!」」


その時、背後からの声に二人は振り向いた。そこに立っていた人物を二人は呆然と見つめる。

蓮は言おうとしていた言葉を飲み込んだ。

そこには沙穂が複雑そうな表情で立っていた。


「・・・・・」


風早は躊躇したような表情をした後、沙穂を真っ直ぐ見た。


「じゃなっ・・・蓮」

「・・・ああ」


沙穂と並んで歩く風早の後姿を蓮は心配そうに見送った。そして夜空を見上げる。空に

は満天の星が輝いていた。星の数ほどいる人の中でなぜ人は同じ人を愛するのだろう。

なぜ想いは複雑に絡み合っていくのだろう・・・。


蓮はせつなそうな目で夜空を見ていた。


「蓮・・・」

「!」


薄暗い中、光平が蓮を待っていた。











あとがき↓

光平が北海道に帰るまで仙台編続きます。蓮主人公になってる最近・・・。(汗)爽子ちゃんは
どうしてるのでしょうね??修羅場大好き管理人。ヒヤヒヤする方はスルーでお願いしますね。
それではまた遊びに来てください〜〜〜♪

※ 昨日のコメレスさせてもらってます^^)

Half moon 62