「Half moon」(77)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

爽子に呼び出された沙穂は複雑な気持ちを抱えながら待ち合わせ場所に向かった。
ついに二人が向き合う時が来た!!沙穂と爽子の心情(心の声)が入り混じってます。

こちらはHalf moon          10 11 12 13 14 15 16 17  18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39   40 41  42 43  44 45 46 47 48 49  50 51  52 53  54 55 56 57 58 59  60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 の続きです。
それではどうぞ↓
























静かな喫茶店の中で、ある一角だけ張りつめた雰囲気が漂っていた。

目の前の沙穂はさっきから俯いたまま顔を上げない。


爽子は大きく肩で息をすると気持ちを落ち着かせるように胸に手を当てた。


もともと上手く人と話せる方ではない。ここに来るまでも上手く話せるだろうか・・・と色々

模索しながらたどり着いた。でも折角会えたのだ。もう、これ以上後ろを向くのは嫌だった。

重々しい空気の中、初めに口火を切ったのは爽子だった。


「あの・・・まさか北海道にいると思ってなくて・・・びっくりしました。」

「・・・・・」


沙穂は無言のまま俯いていた。爽子はそんな沙穂を見つめると、大きく深呼吸して勇気を

振り絞るようにギュッと拳に力を込めた。


「私・・・秋山さんに嫉妬してたんです」

「!」


沙穂は爽子の言葉に顔をばっと上げた。


「風早くんが自分以外の人を見るなんて・・・嫌だったんです。風早くんのことなんて全然考えて

 なくて、自分のことだけ・・・。本当に最低です」

「・・・・・」


沙穂は爽子の言うことの真意を探るようにじっと見つめていた。


「ただ、この感情に向き合いたくなかっただけなんだと・・・分かったんです。だから、秋山さんに

 あの時・・・夏に仙台にいた時に電話をもらったのに、何も答えられなくて・・・今、ちゃんと

 伝えたくて。」

「私・・・風早くんが好きです。」

「・・・・・」

「だから、秋山さんと・・・風早くんが一緒に居るのは・・・やっぱり嫌です」


爽子は目を逸らさず沙穂を見つめた。沙穂はその目を見て、一瞬怯んだ。その時感じた

不思議な感覚を認めるにはまだ時間が必要だった。しかし認めざる得ないほど、爽子の目

は純粋で透き通っているようにきれいだった。


(・・・何言ってんの?この子。今更・・・・)


沙穂は爽子の意図するところが読めず、イラっとした表情で言った。


「・・・だから?」

「だから・・・あの、その気持ちだけ言いたくて」

「手を引けって言いたいの?」

「あ・・・いえ、そういうことではなく、自分勝手なことです。秋山さんにちゃんと伝えないと

 前に進めないような気がしたので」


沙穂は爽子の真っ直ぐな瞳からさっと目を逸らすと冷めた目で言った。


「何があったのか・・・事実を知りたくないの?・・・あの夜のこと」


爽子は沙穂の言葉を受け止めると静かに視線を下した。


「・・・気にならないって言ったら嘘になるけれど・・・私は聞く権利がないと言うか・・・。

 とにかくちゃんと会って話したいの」

「・・・・会うんだ」

「会いたい・・・。会ってもらえるか・・・分からないけど」


沙穂は真剣な表情の爽子を見て、ぎゅっと拳を握りしめた。


風早の気持ちはあの夜でさえ揺らぐことはなかった。寝言で何度も彼女の名前を呼ばれた

時、自分のやっていることが虚しくなった。自分が入る余地などこれっぽっちもないことを実感

した。でも・・・それでも一緒に居たかった。


「・・・それ、本気で言ってんの?」


沙穂はふるふると震えながら爽子を睨んで言った。


「・・・え?」

「マジで、風早が会ってくれないとか思うの?」

「・・・・・」


これだけ愛されてるのに・・・私だったら・・・・っ!


沙穂は段々と高ぶっていく感情を止められないでいた。想いを堪えるように言葉を発した。

爽子はしばらく考え込んだ後、視線をゆっくりと下に向けた。


「・・・私・・・こんなこと初めてで、風早くんに隠し事をしたのも初めてで・・・風早くんを

 傷つけてしまった。・・・。だから今は風早くんの話を聞きたい・・・それだけなんです。」

「・・・別れるって言ったのに」

「あ・・・。」


(一体・・・何なの?)


沙穂は爽子という人物を掴めずにさらに困惑していた。さっきから噛みあわないものを感

じる。一人で怒って一人で苦しんでいるように思えてきた。だが、目の前の爽子はからか

っているわけではないようだ。沙穂は眉を顰めた。


「あのさ・・・風早を傷つけたって言うけど、本当に分かってんの?」

「え・・・」

「私・・・あんな風早、初めて見た」

「・・・・・」


沙穂は爽子をキッと睨むと、感情を露わにして言った。爽子は沙穂の言葉に大きく動揺する。


「分かってないよ!!風早をいっぱい傷つけたこと。だから私・・・私・・・・守ってあげたく

 なった。私だったら・・・・って・・・くっ・・・うぅ」


そうだ・・・あの夜、弱くなった風早をただ守ってあげたいと思った。彼女に裏切られたのに

傷つけられたのに・・・それなのに呼び続ける彼女の名前。


「あんなに風早を傷つけておいて・・・っ彼に会う権利あるの?」

「!!」


爽子は沙穂の言うことに何の言葉も返せないまま、茫然と座っていた。そして、はらはら

と涙が頬をつたい始めた。


「光平と・・・会ってたじゃん・・・あの時」

「え・・・?」


爽子は沙穂の口から予想もしなかった言葉が出たことに驚きを隠せなかった。


「風早は裏切られたって思ってるよ。黙って光平に会ってたんだから・・・」

「えっっ!!・・・ちがっ・・・!」


黙って会う・・・?裏切る・・・?


「裏切る・・・とは?」

「はぁ?黒沼さんが光平と浮気したってことでしょ?」

「・・・・・・」


しぃ〜〜〜〜〜〜ん


爽子はかなりの間の後”えっ〜〜〜〜〜!!”と叫んで大きく体制を崩した。


あ・・・・・。


爽子はその時、ハっとしたようにあの時の風早を思い出した。

偶然知ってしまった蓮さんや秋山さんの身の上。そしてその後病院から帰って風早くんの

アパートに帰った時、今まで見たことのなかった彼がいた。哀しい目をした風早くん・・・。


”「・・・今日、何してたの?」

 「えっあのっ・・・その・・・・・」

 「あいつと・・・・」”


あいつ・・・?   そうだ。あの時、風早くんはそう言った。


「あのっ・・・風早くんはそう思ってたんですか?」

「え?な、何?」


沙穂は身を乗り出して必死に訴えるように近づく爽子を怪しげに見つめた。


「私・・・田口くんと浮気していたと思われてたんですか??」

「え・・・何それ。じゃ、なんで風早を傷つけたとか思うの?」

「あの・・・隠し事をしてしまったからだと・・・」

「・・・・・」

「あっ!!」

「え??」


自分に近づいたまま、いきなり大声を上げた爽子に沙穂はびくっと肩を揺らした。


そうか・・・・。あやねちゃんはそのことを・・・。

私の鈍感なところが彼を傷つける。くるみちゃんも言っていた。私は・・・私は・・・。


最低だ・・・・。


爽子はまた、はらはらと涙があふれだした。そして、両手で顔を覆うと、あ″〜〜〜〜っ!

と叫び始めた。


「私・・・もう風早くんと会えませ〜〜〜ん!!ああ〜〜〜っ!」


沙穂はしばらくパニくっている爽子を見つめると、冷めた目になって言った。


「じゃ・・・もう会わないで。お願い」

「!」


真剣な沙穂の目と動揺した爽子の目がぶつかり合う。爽子は沙穂と向き合って初めて、沙穂

の真剣な想いを知ることになる。そして風早に対しての自分の想いを改めて、考え始めた。














あとがき↓

爽子×沙穂、一回で終わらなかった。さすがにまとめられない私。さてさて、アニメはやはり
後、2回のようです。どう区切るのか。それと3ndシーズンはさすがにないのか。それなら
付き合ったところがダイジェストで出るのか・・・。「ここから」も絵は良かったです。大好きな
シーンが動いている感動・・・おぉぉ最高です。萌える〜〜〜!所々で、原作で出た風早の
照れた顔などが見れなくて・・・ああ、ここ見たかったってのはありますが、満足ですっ!!
もっと見たかった。全部・・・見たいんだけど。やっぱいろいろ大人の事情があるんでしょうね。
さて、話の続きを書きたいのですが、正直私いっぱいいっぱいです。ごめんなさいっ!忙がし
い時に話を書くと変なのがさらに倍するので、ちょっと休ませてください。(って今までも更新
してないけど)4月に入って落ち着いたら話書きますね。楽しみに待って下さっている方、本当
にすみません。4月半ばには落ち着くと思うのですが。(;´д`)トホホ…しばらくサイト放置お許
しください。PS コメレスしています♪

Half moon 78