「Half moon」(41)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

複雑な思いを抱えながら、急いで風早のアパートに帰った爽子だが!?
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39 40 の続きです。
それではどうぞ↓




















「――爽子!!」


爽子が風早のアパートのインターホンを押そうとしたまさにその時、ドアがばっと開いた。


「おかえり!」

「ひゃあ〜〜びっくりした!」


驚いて固まっている爽子に風早はにっこりと微笑んだ。

爽子は今日のことを”偶然事故に遭遇したので遅れます。”とメールを入れておいた。それ

でも風早よりは早く帰れるつもりでいたので、あわあわした表情になった。


「ご、ごめんね、遅くなっちゃった!・・・早かったんだね。風早くん」

「そんなの、いいよっ!さっ入って」


風早が嬉しそうに爽子を中に招き入れて、テーブルのところに連れていった。


「うわっ・・・・」


爽子がぱぁっと目を輝かして見たテーブルの上には風早が作った夕食が並べられていた。


「風早くんが作ってくれたの??」


胸の前で両手を合わせてキラキラして見ている爽子に風早は照れたように言った。


「うん。たいした物作れなくてごめん。」

「そんなことないよ・・・すごいよ!!それも仕事の後に・・・・」

「仕事さっさと終わらせたからさ」

「・・・・ごめんね・・今日」


落ち込んだ様子の爽子を見て、風早は優しく微笑んだ後、爽子の頭を優しくなでた。


「・・・爽子が帰って来てくれたらそれでいい」


自分を見つめる優しい風早の目からはたくさんの愛情を感じられる。いつもこの人は私に

安心を与えてくれる。


「風早くん・・・」

「おっと、泣き虫さん、食べようよっ!冷めちゃうから」


風早はうるっときそうな爽子の手を取って、テーブルの前に座らせた。


「う、うん!・・・ご飯よそうね!あっ」


ご飯をよそおうと思って爽子は手に持っていた袋を思い出した。


「ん?」

「あ、あのね、これ・・・・」


爽子が袋から夫婦茶碗を恥ずかしそうに出すと、風早は目をまん丸くした。


「かわいかったから・・つい・・・ごめんね、ちょっと大胆だったかな」


何も言わない風早に不安になり、風早に視線を移すと、俯いたまま手で顔を覆っていた。


(あっ・・・これは・・・//////)


それは風早の照れている仕草だった。


「・・・嬉しい!あ、ありがと/////」


そう言って、にこにこしながら爽子と色違いのお茶碗で嬉しそうにご飯を食べる風早。


(う、嬉しいな・・・・)


二人は視線が合い、お互い恥ずかしそうに頬を赤くして俯いた。

そして幸せそうに微笑んだ。


* * *


「それで、今日はどうしたの?」

「・・・え」


風早にそう聞かれ、爽子は固まってしまった。爽子の性格から秘密事や嘘をつくのは一番

苦手な事だった。


(うっ・・・どうしよう!!でも・・・)


その時、沙穂の哀しそうな目や蓮の男泣きを思い出して、爽子はぎゅっと拳を握りしめた。


「あっ、その交通事故に遭った人に病院に付き添って・・・」

「ええ??マジ?折角の休日だったのにな・・・それでどんな人だったの?大丈夫だった?」

「・・・・え」

「?」

「あっえと・・・女の人で、でも大丈夫だったよ!!風早くん、美味しいよ!!すごいね!」

「?・・・ん・・まぁ」


風早は変な様子の爽子を不思議そうに見つめた。それからもその話をするたびに取り繕うよ

うに表情が固くなっている。少し疑問を感じた風早だが、それ以上聞かなかった。それよりも

気になることがあったからだ。


「・・・それで、田口は・・元気だった?」


風早はちらっと爽子を見て、何気ない雰囲気で聞いた。


「あっう、うん・・げ、元気だったよ」

「・・・・・」


明らかに変な様子の爽子に風早の箸は止まってしまった。


(えっ・・いや・・・・気にしすぎだし・・・でも・・・・・)


「あ、あの、田口くんの部署の方たちもいい人で・・・・それから」

「――爽子!」

「は、はい?」


いきなり名前を呼ばれて、びくっとした爽子は大きく目を見開いて風早を見つめた。


「ぎゅっとしていい?」

「え?・・・・!」


食事の途中にいきなり抱きしめられた爽子は目が点になって固まった。

そして、感じる風早の温もり。


「・・・しばらくこのままで」


彼の声は少し寂しそうに感じた。爽子はそぉっと風早の背中に手を伸ばす。そしてぎゅっと

風早を抱きしめ返した。

こうやっていつも風早くんは幸せをくれる。愛しい人。だから一分一秒、大切にしたい。

そして当たり前の幸せではないのだと・・・・・・。爽子の目から一滴の涙が落ちた。


「・・・爽子?」

「ご・・ごめんなさい。幸せで。こんなに幸せでいいのかって・・・」


逢えない寂しさとか孤独感とか全てがそこに風早くんがいるからの幸せなのだと。


風早はいつも一生懸命気持ちを言葉にしようとしてくれている爽子を愛おしく見つめた後、

またぎゅっと抱きしめた。


「俺だって・・・・いつか爽子が消えていかないかって・・・俺の前から。今の幸せが不安で」


すると、大きな目をきょとんとさせて爽子は風早を見上げた。


「そんなことあるわけないよ!!・・・この先、何があっても風早くんの側を離れること

 なんてないよ!何があっても・・・」


風早はしばらく切なそうな目で爽子を見つめた後、少し安心したように微笑んだ。


「・・・・ん。分かった」


そう言って、またぎゅっと爽子を抱きしめた。そして、爽子の唇に顔を近づけて行くと・・・・。


「あっ・・・風早くん!ごはん冷めちゃうから・・・//////」

「あっ・・・う、うん。ごめんっ/////」


二人は恥ずかしそうに笑い合った。もう、風早の目に不安は消えていた。この幸せは永遠

に続くものだと、風早はこの時、疑わなかった。



********



「−爽子、お待たせ」


いつもなら先に入浴を済ませた爽子は、必ず風早を待っていてくれるのだが、この日は

ベッドの上で先に眠りについていた。


「・・・え!?」


風早は目の前の光景に思わず固まった。


「・・・寝ちゃったの?」


風早はいかにも落胆した表情で爽子の隣に横たわった。そして長い髪をさらっと触り耳にかけ

て、かわいい寝顔を見つめて言った。


「疲れたんだな・・・・今日」


しばらく、爽子の髪を触っていた風早の手がピタッと止まった。そして、手で口を覆って、あ・・・・!

と思い出したように声を上げた。


「それともまさか・・・・毎日襲い過ぎた!?・・・無言の抵抗とか」


風早の表情は青ざめたり、赤くなったり忙しい。しばらく悶々悩んだ後、また爽子の顔を

じっと見て、ぼそっと囁くように呟いた。


「・・・でもさ、爽子の隣に寝てたらさ、我慢できねーし//////」


すーすー静かな寝息をたてて眠っている爽子を起こしたくない。でもちょっとだけ・・・

風早はぎゅっと爽子を抱きしめて布団をかぶった。それでも起きない爽子。


「ホント熟睡・・・。今日はこれで我慢」


爽子を抱きしめて、そっと優しくおでこにキスを落とした後、眠りについた。


「・・・・・・」


しぃ〜〜〜〜〜〜ん


(うぅ・・・・・やっぱ、これもヤバイわ///////)


爽子の柔らかい感覚に耐えられなくなった風早は、爽子に背中を向けてまた布団を頭まで

かぶった。


(うぅ〜〜〜〜眠れんっ!!)


こうして、風早くんの幸せな我慢の夜は更けていった・・・・。









あとがき↓

ちょっと幸せな感じで。後がきついので・・・・(笑)いろいろ時間設定とか矛盾があると思い
ますが、そこは流してくださいな〜〜!しかし最近、パソコンの調子が悪い。やばいかな。
それではまた続きを見に来てもらえたら嬉しいです。

Half moon 42