「Half moon」(76)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

あれから爽子は・・・?爽子の向かう先とは? 爽子ONLYの回です。

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それではどうぞ↓




























*******


木曜日――


爽子はあやねと千鶴と会った翌日の夜、ある待ち合わせ場所に向かってゆっくり歩いていた。

そして、昨夜のことを思い浮かべる。


昨日の帰り道に千鶴と別れてあやねと二人になった時に言われた言葉。


* * *


”『二人になるのを待ってたんだ。ちょっと気になったことあって』

 『・・・・・』


そう言って、あやねは歩きながら真剣な顔をした。爽子は思わず顔が強張った。

あやねの言葉はいつも本当のことだ。そして大切なことを言ってくれる。


 『・・・爽子はね、いつも前向きで、人に対して誠実で純粋で・・・私にないものばかり

  持ってた。真っ直ぐに人を好きになれる・・・。正直・・・ずっと羨ましかった』


爽子はあやねの言うことを身動き一つせずに聞いていた。大きな瞳がゆらゆらと揺れた。


 『風早はね・・・そのままの爽子でいいと思う。きっとあいつベタぼれだろうから。』

 『・・・・・』

 『私も爽子はずっとそのままでいて欲しいって思う。でもね・・・やっぱ言っとくわ。

  もうこんなこと起こって欲しくないしね』


あやねは歩いていた足を止めた。そして爽子と向き合った。爽子もあやねの真剣な目を見

つめる。飲食店が並んでいるこの道にはいろいろな人が行き交い、喧騒に包まれていた。

しかし二人の世界のように爽子には周りの音は耳に入らなかった。


 『あいつさ、自滅タイプだからさ〜もちろん本人が悪いと思うんだけど、爽子の純粋な上の

  鈍感さも追い込まれた原因かなって思ったの』

 『!!』


あやねはふっと笑った。


 『・・・あいつ、風早さ、すっごい独占欲強い奴じゃん』


瞳を揺らして動揺している様子の爽子を見て、あやねは一つため息をついた。


 『爽子は自分が思うよりずっと魅力的なんだよ。以前とは違う。あ〜これは表面的にも

  含めてって話ね。今までだって爽子のことを好きな男もいたでしょ?』

 『えっ・・う、うん』

 『爽子は男からの恋愛感情に疎いのよ・・・つまり、そこが絡んでいる気がしたの。

  きつい言い方になるかもしれないけど、その鈍感さが相手を傷つけることもあるのよ』


どくんっ


爽子はあやねの言葉に大きく目を見開いた。そして胸をぎゅっと掴む。


”鈍感”・・・それは以前くるみちゃんに言われた言葉。私はまた、その鈍感さで風早くんを

 傷つけた??


 『・・・風早が他の女と一晩過ごしたって聞いてどう思った?』

 『・・・・どう・・・・?』

 
秋山さんがそう言った時・・・ショックだった。その時湧いた感情を私は上手く処理できなか

った。今なら分かる。それは、”独占欲”という感情だ。自分以外の人に風早くんが・・・?

と思うだけでたまらなかった。今までも同じような気持ちになったことはあったけど、

その時いつも・・・・


 『悲しかった。でもっ・・・それ以上に恥ずかしかった』

 『・・・何で?』


あやねは鋭い目で爽子を見つめた。


 『私・・・・いつも・・・』


風早くんがいつも私の中の嫌な感情をすぐに拭い去ってくれていた。いつも私の欲しい言葉

で行動で素直に気持ちを届けてくれた。いつも私を幸せにしてくれた。


 『いつも・・・風早くんに救われてた。そして、私の中の嫌な感情と向き合わないで済んでたの・・』

 『嫌な感情?』

 『う・・ん。風早くんを独り占めしたい気持ち。自分だけの風早くんだって・・・恥ずかしい』


どんどん欲張りになる私。


俯いて身体を震わせている爽子にあやねは優しく言った。


 『今回は向き合わないといけなかったってわけか・・・。それって嫌な感情かな?』

 『え・・?』

 『好きだからこそ・・・思う感情でしょ。私はすごく人間らしいと思う。そして、もっとも

 人間らしい奴が風早じゃないの?そう思わない?』

 『・・・・・・』


人間らしい感情・・・?

その感情は好きだから湧いてくるもの。・・・私だけじゃない。同じように風早くんも。いつも

風早くんはその感情を出してくれていた。私はそれが嬉しかった。”好き”だからなのだと思う

から、風早くんの愛情表現のように思えた。

 
 『・・・爽子は思ってないかもしれないけど、知らず知らずの爽子の行動が風早を傷つける

  ことってあるんだよ』

 『!』

 『ごめんね。部外者の私がこんなこと言って。爽子を傷つけて・・・』


爽子はあやねの言葉にぎゅっと目を瞑ってぷるぷると首を横に振った。

 
 『・・・ううんっ!!あやねちゃん・・・ありがとう』

 『・・・うん』

 『私・・・風早くんをこれ以上傷つけたくない』

 『そうね・・・・(爽子が頑張ったところでこれからもあいつは勝手に自滅するだろうけど)

  爽子なら大丈夫だよ。じゃねっ・・・私こっちだから。風早によろしく。また会おうね、爽子』

 『う、うんっ・・・・ありがとう』


あやねはしばらく爽子を温かい目で見つめると、ぽんぽんっと爽子の肩を叩いて去って

行った。爽子は泣きはらした瞳に涙を潤ませながら、あやねの頼もしい背中を見送った。


”ありがとう・・・”




* * *



あれからずっと考えてた。私はとっても大切なことを言ってもらった。

風早くんやちづちゃん、あやねちゃんに会うまで人に謝られてきた。風早くんに”ありがとう”

と言われた日から私の人生は色づき始めた。人の好意にはなかなか慣れなくて、ぎこちな

い態度を取ってしまったり、自分に恋愛感情を持ってくれた男の人に対して全く気付けなか

ったり・・・本当に私は人の好意に気づけず人を傷つけてきたんだな・・・。正直今も分から

ない。どれがどのような好意なのか。でもこれ以上・・・・風早くんに悲しい思いをさせるのは

嫌だ・・・。これ以上大切なものをなくさないように・・・。



爽子は前から歩いてくる人物に気付くと、そっと顔を上げた。その人物も爽子の前まで来

ると俯いていた顔を上げた。


「・・・・ごめんなさい。突然」

「・・・・ううん」

「・・・・・」

「・・・・・」


その人物とは沙穂だった。

今日の昼間、札幌観光をしていた時にかかってきた電話は爽子だった。登録のない見覚え

のない電話番号に沙穂は首を傾げた。無視しようと思ったが、そのまま出てみると、一瞬

その声を疑った。聞き覚えのある声。そう・・・電話で話したことがある声。

爽子からの電話だったのだ。


「よかったら・・・この店で話しませんか?」


沙穂は爽子の行動を伺いながら爽子が案内する店について行った。


沙穂は爽子と会うつもりはなかった。昌に電話で言われた時、なぜ会わないといけないの

かと嫌な気分になった。そのつもりで電話番号を登録しなかった。だからもう会うことなんて

一生ないと思ってた。


沙穂は目の前の爽子をちらっと見た。お互いが複雑な思いを抱えながらの長い夜が始まった。

















あとがき↓
爽子は私の中では普通の女の子だけど普通ではありません。普通の部分を持ちながらも
選ばれた女の子なんじゃないかって。なかなか見たことなかったですね。今までの漫画に。
自分をちゃんと持っているし、正しいことをちゃんと知っている。そして、何より憧れるのが
flumpoolの歌詞にもあった”行き交う他人たちの幸せ自分のことのように願う”ところだ
と思います。なかなかできることじゃないし、自分を知っているからこそ無理しないでそれ
ができるのではないか!とか思ってます。だけど、コメを頂いた中で、なるほど〜と思える
感想がありましたので入れさせてもらいました。爽子も風早のやきもきに気づいてあげなく
ちゃね。この続きはたぶん明日・・・。
ところで、アニメ残すところ後2回なんですか!?うっそ〜〜!シリトドで言っていたような・・・。
やだよう。とにかくアニメ感想は明日のあとがきにでも。それではまた遊びに来てください。
※昨日のコメレスしてあります♪

Half moon 77