「Half moon」(67)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
美穂が正常に戻ったことを聞いた蓮は?北海道、同期会後の光平は・・・?最初は蓮と美穂の
場面から。最後には光平目線に移ります。

こちらはHalf moon          10 11 12 13 14 15 16 17  18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39   40 41  42 43  44 45 46 47 48 49  50 51  52 53  54 55 56 57 58 59  60 61 62 63 64 65 66 の続きです。
それではどうぞ↓
























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美穂の記憶が戻っている・・・?



蓮はあれからそのことばかりが頭の中でぐるぐると回っていた。


「あ〜〜っれん!!」


美穂は今まで通り、幼い子どものように笑って病室に来た蓮を迎えた。蓮は少し笑み

を作ると、静かに椅子に座った。


「れんっ今日はお休みでしょ?いっぱい遊んでくれる?」


無邪気な顔をして言う美穂をしばらく見つめた後、蓮は決心したように切り出した。


「あのさ、美穂。体はもう元気だって。だから近々退院になりそうだ」

「・・・・・」


蓮の言葉に美穂は黙りこんでしまった。そして寂しい表情を浮かべた。


「・・・お家に帰ったられんは・・・もう来てくれないの?」

「え・・・?」


蓮は不思議だった。なぜ美穂がそう考えるのか。今までも退院の話が出ると具合が悪くな

ったり、発作が起こったりしていた。全て作為的にやっているのではないと分かっている。

でも、美穂の中で何かを感じているのは確かだ。


「美穂の家は職場から遠いから今までみたいには行けないけど、行くよ」

「うそっ!!」

「美穂」


美穂は感情を露にして取り乱した。蓮は思わず腕を掴む。


「また、前みたいに来なくなるんでしょ」

「違う・・・あの時は・・・・っ」


あの時は、向き合えなかったんだ。どうしても・・・向き合えなかった。


「もう、違うんだ。俺、もう逃げたりしない」

「に・・・にげる??」

「・・・・・」


美穂はじっと蓮を見つめた。その瞳は純粋な子どもの目ではなかった。蓮はその目の

真意を探るかのように深慮深く見つめた。掴んでいた手に思わず力を込める。


”・・・まさか?”


「・・・美穂?何か思い出したのか?」


すると蓮をじっと見ていた美穂の表情が段々曇ってきた。そして、呼吸が乱れてきた。


「はぁはぁはぁっ――」


(・・・やばいっ)


「美穂!落ち着いて」


美穂の顔は蒼白になっていき、どんどんと呼吸が荒くなってきた。美穂は顔を歪ませな

がら、蓮を睨んだ。蓮はがくっと頭を抱えた。今まで何回も見てきた。


「くっ・・・発作だ。―すみませんっ!」


蓮は近くにいた看護師を呼んだ。


「・・・いか・・・ない・・・で」


美穂はそう言うと蓮に手を伸ばし、意識を失ってしまった。蓮は美穂の手を握りながら

苦しそうに美穂を見つめた。


看護師達に処置してもらっている美穂を呆然と見ていた。これほどはっきりとしたのは

初めてだった。追い込めば追い込むほど身体に変調をきたす。今までは身体を直すのが

一番だったので医者から心理的ストレスになるようなことはしないように言われていた。


・・・それじゃ、ずっとこのまま?


事故によるPTSDは克服することがなくこのまま?

医者が言っていた。発作を起こすときは一種の乖離状態だと。心的トラウマから逃れる

ため。それは事故によるもの・・・?


蓮はぐったり意識のない美穂を見つめながら頭の中で必死に思考をかき巡らせる。

違う・・・。事故・・・じゃない?


「・・・もしかして」


蓮は閃いたかように顔を上げた。


ガラッ


その時、勢いよくドアが開けられた。蓮はハッとしたように戸口に目を向けた。


「―美穂がまた発作を!?」

「あ・・・はい」


母が急ぎ足でやってきたのだ。母は心配そうに眠る美穂に駆け寄った。

蓮は頭の中を必死にまとめようとしていた。周りの雑音がまったく耳に入らなかった。


もし、今頭に浮かんだ考えが本当だとするとやるべきことは分かっていた。でも・・・・。


「―さん、蓮さん?」

「あっ・・・はい」

「どうしたの?何か変だけと」

「いえ・・・大丈夫です」


ドクンッ 蓮は気がつくと手に汗を握っていた。手のひらを呆然と見ながら風早と爽子

の姿を思い浮かべた。


(・・・もう・・逃げない)


そして、ぎゅっと目を瞑ると手に力を込めた。


「ああ・・・・まだまだ退院はできないわね・・・」


母は美穂を見ながら残念そうに呟いた。


「いえ・・・」

「蓮さん?」


母は様子がおかしい蓮を不思議そうに見つめた。


「・・・身体に問題がなければ退院させましょう」

「え!?」


蓮の目には迷いがなかった。決心したように真っ直ぐ見る蓮を母は戸惑いながら見つめた。



**********



どさっ


「・・・・はぁ」


光平は荷物を置いて、ベッドに横たわると天井をぼーっと見つめた。


彼女は帰ってこなかった。あの後、そのままいなくなった。俺はなかなか帰ってこない

彼女が心配になり店の外に見に行ったが、彼女の姿はなかった。彼女の性格からこん

なことをするとは到底思えなかった。明らかだった。尋常でない何かが起こったこと。


”何が・・・あった?”


ずっとあれから俺の中の思考はそのことでいっぱいだった。電話をしてもメールをして

も返事も返信もなかった。


”二人の間に何があった?”


光平は何もできない自分にもどかしさを感じると同時に潜在的にある醜い自分の感情を

必死でかき消そうとした。そして脳裏に浮かんだ風早の目。


”「もし、彼女を傷つけることがあったなら・・・・絶対に許さない」”


「・・・なんだよっ傷つけてるのは風早だろ」


光平は行き場のない思いを持て余しながら、シーツに包まって目をぎゅっと閉じた。


それぞれが眠れない夜を過ごしてる。絡み合ったそれぞれの赤い糸は修復できないく

らいに縺れてしまった。思いが強くなればなるほど糸は解けることはなかった。


夜空には悲しくもきれいな満月が浮かんでいた。













あとがき↓

アニメ見ました。うう〜〜〜好きなシーンがやってきたよ。ケントの表情かっこよかった
なぁ。やっぱ「なんなら・・・オレにする?」のシーン大好きです。ケント好きだからね〜!
ちづの結婚式参加シーンも加わってたけど。こっからが面白いんですよね。そしてあの
ハグシーンがやってくるっ!うわっやばいっす。じゅるっ。DVD買います。
さて、次はいよいよ風早心情暴露の回になるかな??また遊びに来てくださいまし〜♪
いつもご訪問・ご感想ありがとうございます。レス、よければ読んでください。

Half moon 68